ADL維持等加算は、利用者のADL(日常生活動作)の維持・改善という結果(アウトカム)を評価する介護報酬の加算です。加算Ⅰは30単位/月、加算Ⅱは60単位/月。Barthel Index(BI)で評価し、LIFEへデータ提出したうえで、事業所全体の「調整済ADL利得」が基準値(Ⅰ:1以上/Ⅱ:3以上)を超えることが要件です。本記事では、算定要件・ADL利得の計算・LIFE提出頻度・対象外の判断まで、通所介護・特養等の現場担当者向けに2026年時点の制度で整理します。
対象施設:通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護・特定施設・特養等(下記7種別)/情報時点:令和8年7月12日(現行=令和6年度改定。介護報酬の次期改定は令和9年度)
ADL維持等加算 早見表(2026年時点)
| 単位数 | 加算Ⅰ=30単位/月、加算Ⅱ=60単位/月(同時算定不可・どちらかを選択) |
| アウトカム基準 | 調整済ADL利得の平均が Ⅰ:1以上/Ⅱ:3以上(Ⅱは令和6年度改定で「2以上」から引き上げ) |
| 評価方法 | Barthel Index(BI・100点満点)を初月と6か月目に評価 |
| LIFE提出 | 評価対象者ごとに初月と6か月目の2回(翌月10日期限) |
| 評価対象者 | 要介護者のみ・10名以上(要支援者は対象外) |
👉 数値を入れるだけで判定:ADL利得計算ツール(無料)で、初月・6か月目のBIから加算Ⅰ・Ⅱの判定水準を自動シミュレーションできます。
1. ADL維持等加算とは
ADL維持等加算は、利用者の日常生活動作(ADL)をBarthel Index(BI)で定期的に評価し、一定以上のアウトカム(ADL利得)を達成した事業所に算定が認められる加算です。「サービスを提供したか」(プロセス)ではなく、「利用者のADLがどれだけ改善・維持されたか」(アウトカム)で評価される点が最大の特徴で、LIFE(科学的介護情報システム)へのデータ提出と連動しています。
対象サービス(7種別)
- 通所介護/地域密着型通所介護/認知症対応型通所介護
- 特定施設入居者生活介護/地域密着型特定施設入居者生活介護
- 介護老人福祉施設(特養)/地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
補足:ADL維持等加算(Ⅲ)は経過措置終了(令和5年3月31日)を経て廃止されており、現在算定できるのは加算ⅠとⅡの2種類のみです。
2. 制度の沿革——「いつ何が変わったか」を正確に
本加算は改定のたびに要件が動いており、年度の取り違えによる誤解が多い加算です。沿革を正確に整理します。
| 改定 | 主な内容 |
|---|---|
| 平成30年度(2018)創設 | 通所介護のアウトカム評価として新設。当時は加算Ⅰ=3単位・Ⅱ=6単位/月 |
| 令和3年度(2021)改定 | 単位数を10倍に引き上げ(Ⅰ:3→30単位、Ⅱ:6→60単位)。評価をBarthel Indexに統一しLIFE提出と連動。対象サービスを認知症対応型通所介護・特定施設・特養等へ拡大 |
| 令和6年度(2024)改定=現行 | ①加算Ⅱのアウトカム基準を「調整済ADL利得の平均2以上→3以上」に引き上げ ②調整済ADL利得の計算方法(調整係数)を簡素化 ③LIFE提出項目に要介護度・障害/認知症高齢者の日常生活自立度・評価日・初月/6月対象区分を追加。単位数は30/60単位のまま変更なし |
| 令和9年度(2027)改定=次期 | 社会保障審議会介護給付費分科会で審議中。アウトカム評価・LIFE関連は継続論点のため、動向は「介護報酬改定2027 第1ラウンド論点」・介護報酬改定2027ハブで随時更新します |
3. 加算ⅠとⅡの違い(比較表)
| 項目 | ADL維持等加算(Ⅰ) | ADL維持等加算(Ⅱ) |
|---|---|---|
| 単位数 | 30単位/月 | 60単位/月 |
| 調整済ADL利得の基準(平均値) | 1以上 | 3以上(令和6年度改定で引き上げ) |
| 評価対象人数 | 10名以上 | 同左(加算Ⅰの要件に適合すること) |
| LIFE提出 | 必須(全評価対象者) | 同左 |
| 同時算定 | ⅠとⅡの同時算定は不可。前年度の評価実績を踏まえ、達成可能な区分を選択して届出 | |
加算Ⅱの基準変更の適用時期:「2以上→3以上」への変更は、令和5年4月以降を評価対象期間の始期とする場合から適用されています(令和6年度介護報酬改定Q&A Vol.1 問176)。
4. 算定要件の詳細
評価対象者の条件
- 当該事業所を連続して6か月以上利用している者(利用のない月があっても、それ以外の月で通算6か月以上あれば対象。令和3年度Q&A Vol.3 問35)
- 要介護者のみ(要支援者は対象外。要支援から要介護に変わった場合は、要介護となった月が評価開始月。令和3年度Q&A Vol.3 問41)
- 評価対象者の総数が10名以上
- 通所系3サービスでは、5時間以上の通所介護費の算定回数が5時間未満の回数を上回ること(令和3年度Q&A Vol.3 問33)
LIFE提出要件(初月+6か月目の2回)
| 提出タイミング | 提出内容 | 提出期限 |
|---|---|---|
| 評価対象利用開始月(初月) | 基本情報+初月BIスコア(10項目)+評価日・初月/6月区分 | 翌月10日まで |
| 初月の翌月から起算して6か月目(通算7か月目) | 終了時BIスコア(10項目)+要介護度・障害/認知症高齢者の日常生活自立度 | 翌月10日まで |
令和6年度改定で追加された提出項目:ADL値に加え「要介護度」「障害高齢者の日常生活自立度」「認知症高齢者の日常生活自立度」「評価日」「初月対象/6月対象の区分」の提出が必要です(老老発0315第4号)。記入漏れは評価対象からの除外につながります。
利用者への説明・同意
BIによる評価の実施とLIFEへのデータ提出について、あらかじめ利用者に説明し同意を得ます。個人情報の取扱いに関する同意書を整備しておきましょう。
5. ADL利得の計算とBarthel Index評価
計算のしくみ
利用者ごとの調整済ADL利得=(6か月目のBI合計)−(初月のBI合計)+調整係数で算出し、事業所全体で上下の外れ値を除外したうえで平均します。この平均値が加算Ⅰで1以上、加算Ⅱで3以上であることが基準です。調整係数(初月BIの水準等による補正)は令和6年度改定で簡素化されました。
係数表を暗記する必要はありません。当サイトのADL利得計算ツール(無料)に初月・6か月目のBIを入れれば、調整済ADL利得と加算Ⅰ・Ⅱの判定水準を自動計算できます。事業所全体のシミュレーションにご活用ください。
Barthel Index(BI)評価の要点
- 食事・移乗・整容・トイレ動作・入浴・歩行・階段昇降・着替え・排便コントロール・排尿コントロールの10項目・100点満点で採点します(採点基準は老老発0315第4号 別添準拠)
- 評価者は「一定の研修を受けた者等、適切に評価できる者」。事業所内で評価者を決め、採点基準の読み合わせを行うことがバラつき防止の第一歩です
- 「できるADL」ではなく「しているADL」で採点する、評価場面(自宅か事業所か)を統一する、判断に迷った項目は根拠をメモする——の3点でバラつきを防ぎます
- 日々の介護記録と矛盾しないことが重要です(§7参照)
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6. LIFE提出頻度・スケジュール管理
- ADL維持等加算単独なら、BIの提出は「初月」と「6か月目」の利用者ごと2回だけです。「毎月提出」は誤解——ただし科学的介護推進体制加算を併算定する場合は、その様式データを毎月提出します(併算定は可能。データ管理の一元化が効率的)
- 提出期限はいずれも翌月10日。初月データ未提出→その利用者は評価対象外、6か月目未提出→ADL利得を算出できず対象外、となります
- 評価期間の起算を誤るミスが頻発します。4月開始なら、終了評価は翌月(5月)から起算して6か月目の10月。利用者ごとに開始月・終了月を一覧管理してください
- 送信後は「受付完了通知」を必ず確認し、スクリーンショット・PDFで保存(運営指導の主要確認事項。5年間の保存を推奨)。LIFE側のシステム障害時は救済通知が出ることがあるため、状況を記録しておきます
7. 「対象外とする理由」と、よくある失敗
誤って「対象外」と判断すると評価対象者数が10名を割り、加算自体が算定できなくなることがあります。対象外の判定は次の表で慎重に。
| 対象外パターン | 理由・根拠 | 対応 |
|---|---|---|
| 要支援者 | 本加算は要介護1〜5のみが対象 | 対象外確定。要介護移行後は認定月から評価開始(R3 Q&A Vol.3 問41) |
| 利用期間が6か月未満 | 初月から6か月目までの利用継続が要件 | 通算6か月到達後に評価対象へ |
| 通所系で5時間未満利用が多数 | 5時間未満の算定回数が5時間以上を上回る者は対象外(R3 Q&A Vol.3 問33) | 利用時間・提供時間の見直しを検討 |
| 評価終了月にサービス利用なし | 終了月に利用がない場合 | 対象外にしない。それ以前で最後に利用があった月のBI値を代用(R3 Q&A Vol.3 問35) |
| BIデータの入力漏れ | 10項目のうち1項目でも欠けるとADL利得が計算不能 | 評価者・記録担当者の二重チェック |
このほかの頻出失敗は次の3つです。
- 評価期間の設定ミス——「翌月から起算して6か月目」の読み違いで5か月目・8か月目に評価してしまう
- 介護記録との不整合——LIFEでは「食事:自立(10点)」なのに介護記録では「食事介助実施」。運営指導での主要指摘事項で、加算返還リスクに直結します。BI採点と日常記録の整合を徹底してください
- 加算ⅠとⅡの二重届出——同時算定はできません。前年度実績から達成可能な区分を1つ選びます
8. 関連加算との組み合わせ(LIFE系クラスタ)
- 科学的介護推進体制加算——併算定可能。LIFE提出が共通要件のため、データ管理を一元化すると効率的です
- 個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱ——通所介護でADLアウトカムに直結する機能訓練の加算。ADL維持等加算のBI評価と個別機能訓練計画の目標設定を連動させると、記録の整合も取りやすくなります
- LIFE(科学的介護情報システム)全体ガイド——提出の仕組み・様式全体の整理はこちら
- 回復期リハ病棟の実績指数(医療保険)とは別制度です。医療側のアウトカム評価はリハビリ実績指数 計算ツール・回復期リハビリテーション加算ガイドを参照してください
FAQ|よくある質問
Q1. 加算ⅠとⅡの一番の違いは何ですか?
アウトカム基準と単位数です。加算Ⅰは調整済ADL利得の平均1以上で30単位/月、加算Ⅱは3以上で60単位/月(令和6年度改定で2以上から引き上げ)。同時算定はできないため、前年度実績を踏まえてどちらかを選択して届け出ます。
Q2. 単位数が10倍になったのは令和6年度改定ですか?
いいえ、令和3年度(2021年度)改定です。加算Ⅰが3→30単位、加算Ⅱが6→60単位に引き上げられ、同時にBarthel Index評価とLIFE提出に一本化されました。令和6年度改定では単位数は変わらず、加算Ⅱの基準引き上げ(2以上→3以上)・調整係数の簡素化・LIFE提出項目の追加が行われています。
Q3. LIFEへのBIデータ提出は毎月必要ですか?
ADL維持等加算単独では、利用者ごとに「評価対象利用開始月(初月)」と「6か月目」の2回で足ります(いずれも翌月10日期限)。科学的介護推進体制加算を併算定する場合は、その加算の様式データを毎月提出する必要があります。
Q4. 評価対象外になるのはどのような利用者ですか?
要支援者、利用期間6か月未満の者、通所系で5時間未満利用が5時間以上を上回る者などです。ただし「評価終了月にサービス利用がない」場合は対象外ではなく、直近の利用月のBI値を代用します。安易に対象外と判断すると評価対象者が10名を割り、加算自体が算定できなくなるため注意してください。
Q5. ADL利得の計算方法を教えてください。
利用者ごとに「6か月目のBI合計−初月のBI合計+調整係数」で調整済ADL利得を算出し、事業所全体で外れ値を除いて平均します。調整係数は令和6年度改定で簡素化されました。具体的な判定は無料のADL利得計算ツールで、初月・6か月目のBIを入力すれば自動計算できます。
参考文献・出典
- 「リハビリテーション・個別機能訓練、栄養管理及び口腔管理の実施に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(老老発0315第4号)——BI評価・LIFE提出項目
- 令和6年度介護報酬改定に関するQ&A Vol.1 問176(加算Ⅱ基準の適用時期)
- 令和3年度介護報酬改定に関するQ&A Vol.3 問33・問35・問41(5時間要件・利用月の通算・終了月の代用・要支援からの移行)
- 厚生労働省 LIFE(科学的介護情報システム)関連通知
※ 本記事は令和8年7月12日時点の現行制度(令和6年度改定)に基づく解説です。介護報酬の次期改定は令和9年度(2027年度)に予定されており、審議動向は介護報酬改定2027ハブで更新します。算定の最終判断は告示・通知の原文および保険者にご確認ください。