2027年度(令和9年4月施行予定)の介護報酬改定に向けて、社会保障審議会・介護給付費分科会では「第1ラウンド」(サービス別の総論的な議論)が2026年4月から進行中です。本記事では、2026年7月時点で審議されたサービス別の論点(小規模多機能・グループホーム/通所介護・通所リハ・短期入所/訪問系・ケアマネジメント)と、横断的なテーマ(処遇改善・LIFE・生産性向上)、今後のスケジュール、事業所が今からできる準備を整理します。
⚠️ 本記事は「審議中」の論点整理です(2026年7月時点):以下の内容は介護給付費分科会の第1ラウンドで示された課題・論点・意見であり、改定内容として決定したものではありません。単位数・要件は今後の第2ラウンド(2026年秋以降)〜諮問・答申で確定します。最新の審議状況は厚生労働省の分科会資料でご確認ください。
📋 関連ガイド:次期改定の最新動向は「介護報酬改定2027ウォッチ」で随時更新しています。処遇改善・賃上げについては、令和9年度改定を待たず令和8年6月の期中改定で処遇改善加算が拡充(施行済み)されました——詳しくは「介護職員の賃上げ・処遇改善加算ガイド」をご覧ください。LIFE関連加算の実務は「LIFE加算ガイド」、地域包括ケアの体制整理は「地域包括ケアナビ」をご覧ください。
1. 改定までのスケジュール
| 時期 | 段階 | 内容 |
|---|---|---|
| 2026年4月〜夏 | 第1ラウンド(進行中) | サービス別の総論的な議論(現状と課題の整理) |
| 2026年10〜12月頃 | 第2ラウンド | 具体的な項目(報酬・基準)の議論 |
| 2026年12月中旬目途 | とりまとめ | 報酬・基準に関する基本的な考え方の整理 |
| 2027年1月頃 | 諮問・答申 | 改定案の決定(単位数・要件が判明) |
| 2027年4月 | 施行 | 令和9年度介護報酬改定 |
並行して、政府の予算編成過程で改定率が年末に決定される見込みです。処遇改善・物価高騰への対応が焦点となるため、改定率の議論も注視が必要です。
2. 第1ラウンドの開催実績(2026年4月〜7月時点)
| 回 | 開催日 | 対象サービス・議題 |
|---|---|---|
| 第256回 | 令和8年4月27日 | 処遇状況等調査の実施・令和9年度改定に向けた検討の進め方(第1ラウンド開始) |
| 第257回 | 令和8年5月25日 | 小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護・認知症グループホーム |
| 第258回 | 令和8年6月15日 | 通所介護(地域密着型・認知症対応型含む)・療養通所介護・通所リハビリテーション・短期入所生活介護・短期入所療養介護 |
| 第259回 | 令和8年6月29日 | 訪問介護・訪問入浴介護・訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導・居宅介護支援(ケアマネジメント)・福祉用具/住宅改修 |
施設系(特養・老健・介護医療院)はこれから:第1ラウンドの2026年4〜6月では施設サービスはまだ審議されていません。今後の回・第2ラウンドで議論される見込みです。
3. サービス別の論点(審議中)
3-1. 小規模多機能型居宅介護(第257回・5/25)
- 経営状況:収支差率(令和6年度決算・税引前・物価高騰対策補助金含まない)は6.0%(令和5年度5.2%から上昇。全サービス平均は4.7%)と示された一方、利用者・事業所数の伸び悩みや人材確保が課題として議論されています(第257回資料1)。
- 広域利用:事業所が存在しない市町村も多いことから、市町村内の整備推進に加え、都道府県と連携した広域利用(区域外指定)の事前同意等の調整・隣接自治体間の連携が論点に。
- 中山間地域:中山間地域等では「今後事業を廃止する可能性がある・廃止予定」が10.7%確認され、地域差への対応が議論されています。
- 委員からは、基本報酬・人員配置要件(夜間配置等)の見直しや、「サービス名ではなく地域に必要な機能の整備を見極めるべき」といった意見が出ています。
3-2. 看護小規模多機能型居宅介護(第257回・5/25)
- 重度者(要介護3以上)への対応力が高い一方、未整備の市町村が多いことが課題として提示。
- 委員からは、介護・看護職員の確保策、研修要件の緩和による参入障壁の解消、医療連携の評価拡充、広域利用の手続き緩和などの意見が出ています。
3-3. 認知症対応型共同生活介護=グループホーム(第257回・5/25)
- 事業所数・利用者数の動向、収支差率の低水準、夜勤職員の確保難が課題として提示。
- 委員からは、地域の認知症ケア拠点機能の評価、医療連携強化・介護職員の研修支援、ICT活用による業務負担軽減、単独型・併設型を分けた経営分析などの意見が出ています。
3-4. 通所介護・認知症対応型通所介護(第258回・6/15)
- 利用者の要介護度の重度化・認知症利用者の多さが示され、送迎の負担(特に中山間地域)が大きな論点に。
- 委員からは、送迎負担の報酬上の評価、排せつ自立支援の評価(施設系と同様の枠組みの検討)、認知症対応型通所介護の事業所減少の背景分析などの意見が出ています。
3-5. 通所リハビリテーション・療養通所介護(第258回・6/15)
- 心身機能の維持・改善への貢献が示された一方、収支差率は2.0%(令和6年度・税引前・補助金含まない。令和5年度は2.4%)と低く、経営の厳しさが課題に(第258回資料3)。
- 委員からは、基本報酬の在り方、アウトカムとプロセスの評価バランス、リハビリの価値の利用者への浸透などの意見が出ています。
- 療養通所介護は事業所数の減少が続いており、報酬水準や医療的ケアの負担を踏まえた評価の在り方が議論されています。
3-6. 短期入所(生活・療養)(第258回・6/15)
- 長期利用(31日以上)が依然一定割合存在することが示され、長期化の背景(重度者・在宅医療資源の乏しい地域での補完的役割)を踏まえた対応が論点に。
- 委員からは、単純な減算強化ではなく長期化の要因分析を先行すべきといった意見や、人員配置・運営支援策の提案が出ています。
3-7. 訪問系サービス・ケアマネジメント(第259回・6/29)
- 訪問介護・訪問入浴・訪問看護・訪問リハ・居宅療養管理指導・居宅介護支援・福祉用具/住宅改修のサービス別総論が審議されました。訪問系は人材確保と中山間地域等でのサービス確保が共通課題です。
- ケアマネジメント:介護保険部会側でも(2026年6月)、ケアマネジャーの業務負担・処遇・研修負担による人材不足が取り上げられ、ケアマネジャーを処遇改善の枠組みに含める方向や、更新研修の見直しが議論されています。
4. 横断的な論点
| テーマ | 議論の方向(審議中) |
|---|---|
| 処遇改善・人材確保 | 前回に続く最大の焦点。処遇改善加算の充実・基本報酬の在り方が各サービスで繰り返し議論 |
| LIFE・科学的介護 | データ利活用によるケアの質向上。アウトカム評価とプロセス評価のバランスも論点 |
| 生産性向上・介護テクノロジー | 見守り機器・ICT活用による業務負担軽減の評価。送迎・記録業務の効率化 |
| 経営の協働化・地域機能 | サービス種別の縦割りでなく「地域に必要な機能」を整備する視点。広域利用の調整 |
| 在宅の限界点向上 | 重度者の在宅生活を支える基盤(ショートの補完的役割・訪問系の確保) |
💡 処遇改善は「2027年度改定」を待たず先行済み:上表の「処遇改善・人材確保」は令和9年度改定に向けても最大の焦点ですが、処遇改善そのものは令和8年(2026年)6月の期中改定で先行して拡充が施行されています(対象を介護従事者へ拡大、訪問看護・訪問リハ・居宅介護支援を新規対象、生産性向上・協働化の上乗せ区分〈イ・ロ〉を新設、生産性向上等で定期昇給込み最大月1.9万円)。確定情報は「介護職員の賃上げ・処遇改善加算ガイド(令和8年6月期中改定)」で解説しています。
5. 医療との連携(すでに動き出しているもの)
報酬改定の本体議論に先立ち、協力医療機関との連携に関する会議開催要件の緩和や、突発的な人員不足時の減算猶予措置が2026年6月から実施されています。医療・介護連携(協力医療機関、在宅医療との接続)は第2ラウンドでも重要テーマとなる見込みです。
6. 事業所が今からできる準備
- 加算の算定状況の棚卸し:処遇改善加算・LIFE関連加算の算定状況と上位区分への余地を整理(「LIFE加算ガイド」「科学的介護推進体制加算の解説」参照)
- LIFE・データ活用の定着:アウトカム/プロセス評価のどちらに転んでも、データ提出とフィードバック活用のPDCAが土台になります
- 生産性向上の実績づくり:ICT・見守り機器の導入と業務改善の記録は、次期改定での評価要件(委員会・計画)につながる可能性があります
- 人材・シフトの見える化:処遇改善の配分・夜間配置・送迎体制など、議論されている論点は自施設の実態把握が対応の第一歩です
- 情報のウォッチ:秋の第2ラウンドから具体化します。「介護報酬改定2027ウォッチ」でも随時更新します
7. よくある質問(FAQ)
Q1. 2027年度改定の内容はいつ確定しますか?
2026年12月中旬目途に基本的な考え方がとりまとめられ、2027年1月頃の諮問・答申で改定案(単位数・要件)が確定する見込みです。施行は2027年4月です。
Q2. 第2ラウンドはいつから始まりますか?
2026年10〜12月頃に、具体的な報酬・基準の議論(第2ラウンド)が行われる予定です。第1ラウンドはサービス別の総論(現状と課題の整理)です。
Q3. 単位数の増減はもう分かりますか?
分かりません。現時点は論点整理の段階で、単位数・要件は答申まで確定しません。本記事も「審議中の論点」として整理しています。
Q4. 施設系(特養・老健・介護医療院)の議論はいつですか?
2026年4〜6月の第1ラウンドでは未審議です。今後の回で取り上げられる見込みのため、開催案内・資料を注視してください。
参考・一次情報
- 社会保障審議会 介護給付費分科会 第257回資料(令和8年5月25日・小多機/看多機/GH) 厚生労働省
- 同 第258回資料(令和8年6月15日・通所/短期入所) 厚生労働省
- 同 第259回資料(令和8年6月29日・訪問系/居宅介護支援/福祉用具) 厚生労働省
- 社会保障審議会 介護保険部会(制度改正側の議論)
※ 本記事は2026年7月時点の第1ラウンドの審議状況をまとめた解説であり、記載の論点・意見は改定内容として確定したものではありません。収支差率等の数値は分科会資料(税引前・物価高騰対策補助金を含まない)に基づきます。最新・正確な情報は厚生労働省の分科会資料・議事録でご確認ください。