「介護職員の給料は2027年に上がるのか?」——結論として、賃上げは令和9年度(2027年度)の介護報酬改定を待たず、令和8年(2026年)6月の「期中改定」で介護職員等処遇改善加算が拡充され、すでに動き出しています。生産性向上・協働化に取り組む事業所の介護職員では、定期昇給を含め合計で最大月1.9万円(+6.3%)の賃上げにつながる措置です。本記事では、この期中改定で何が変わったか(対象拡大・加算区分の「イ・ロ」細分化・新規対象サービス)、現行の処遇改善加算の仕組み、事業者が今すべき準備、そして令和9年度改定に向けた処遇改善の審議状況を、厚生労働省の一次情報に基づいて整理します。
⚠️ 情報の時点(2026年7月時点):本記事の「令和8年6月施行の期中改定」の内容は確定事項(令和7年12月23日 審議報告・令和8年3月13日 老発0313第6号)です。一方、令和9年度(2027年度)改定に向けた処遇改善の見直しは審議中であり、単位数・要件はまだ決定していません。「2027年度に必ず給料が上がる」といった断定はできません。最新・正確な情報は厚生労働省の告示・通知でご確認ください。
📋 関連ガイド:令和9年度改定の全体像は「介護報酬改定2027の論点まとめ(第1ラウンド)」と「介護報酬改定2027ウォッチ」で随時更新中です。処遇改善と相性の良い加算の実務は「LIFE加算ガイド」「科学的介護推進体制加算の解説」をご覧ください。
1. 【結論】介護職員の賃上げは「令和8年6月」に動いた
「介護 賃上げ 2027」「介護 給料 上がる」で検索される方の多くが気にしているのは、次にいつ・どれだけ処遇が改善されるのかという点だと思います。答えは、令和9年度(2027年度)改定を待たずに、令和8年(2026年)6月からです。
💡 令和8年6月 期中改定のポイント(確定)
- 賃上げ額の目安:介護従事者に幅広く月1.0万円(3.3%)+生産性向上・協働化に取り組む事業所の介護職員に月0.7万円(2.4%)を上乗せ。定期昇給0.2万円を含めると、介護職員について合計で最大月1.9万円(6.3%)の賃上げが実現する措置。
- 対象拡大:加算の対象を「介護職員のみ」から「介護従事者」に拡大。
- 新規対象サービス:これまで対象外だった訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援(いずれも介護予防を含む)を新たに加算の対象に。
- 加算区分の細分化:生産性向上・協働化に取り組む事業者への上乗せとして、加算Ⅰ・Ⅱを「イ・ロ」に分けて6区分化。
- 施行日:令和8年6月(令和6年度改定の一本化が6月施行だったことと平仄)。
| 時期 | できごと | 状態 |
|---|---|---|
| 令和7年12月23日 | 介護給付費分科会が「令和8年度介護報酬改定に関する審議報告」を取りまとめ | 確定 |
| 令和7年12月〜令和8年5月分 | 令和7年度補正予算「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」で賃上げ相当分を支援(期中改定までのつなぎ) | 確定 |
| 令和8年3月13日 | 老発0313第6号「基本的考え方・事務処理手順・様式例」を発出 | 確定 |
| 令和8年6月 | 処遇改善加算の拡充(対象拡大・上乗せ区分・新規対象サービス)を施行 | 確定 |
| 令和9年度(2027年度) | 介護報酬改定(本改定)に向けて処遇改善の在り方を継続検討 | 審議中 |
2. なぜ令和9年度改定を待たず「期中改定」をしたのか
介護報酬は原則3年ごとの改定で、次の本改定は令和9年度(2027年度)です。それを待たずに令和8年6月の期中改定に踏み切った背景には、次の政府方針があります。
- 「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太方針2025・令和7年6月13日閣議決定):「現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう、的確な対応を行う」とされた。
- 「『強い経済』を実現する総合経済対策」(令和7年11月21日閣議決定):「介護職員の賃金は改善してきたものの、他産業とはまだ差があり、人材不足が厳しい状況にあるため……報酬改定の時期を待たず、人材流出を防ぐための緊急的対応として、賃上げ・職場環境改善の支援を行う」とされた。
これを受け、介護給付費分科会は令和7年12月23日に審議報告を取りまとめ、令和9年度改定を待たない期中改定(令和8年6月施行)として、処遇改善加算の拡充を行うことになりました。なお、6月施行までの空白を埋めるため、令和7年度補正予算で「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」を措置し、令和7年12月分から令和8年5月分までの賃上げ相当分を補助金で支援しています。
3. 変更点①|加算の対象拡大と新規対象サービス
3-1. 「介護職員のみ」から「介護従事者」へ
現行の処遇改善加算は、実態として介護職員以外にも配分されていました。骨太方針2025の「幅広い職種の賃上げ」を踏まえ、加算の対象を介護職員以外の介護従事者にも拡大しました(引き続き介護職員の処遇改善が重要であることには留意)。
3-2. 新たに対象となった3系統のサービス
これまで処遇改善加算の対象外だった以下のサービスが、令和8年6月から新たに対象となりました。介護職員が配置されていないサービスの特徴等を踏まえた措置です。
| 新規対象サービス(介護予防を含む) | 算定要件 |
|---|---|
| 訪問看護・介護予防訪問看護 | 現行の加算Ⅳの取得に準ずる要件として、キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ+職場環境等要件を算定要件とする。要件整備に一定期間を要することへの配慮措置あり。 |
| 訪問リハビリテーション・介護予防訪問リハビリテーション | |
| 居宅介護支援・介護予防支援(ケアマネジメント) |
ケアマネジャーの人材確保が背景:介護支援専門員(ケアマネジャー)等の専門職も人材不足が深刻であることから、居宅介護支援・介護予防支援が新たに対象に含まれました。なお、福祉用具貸与・特定福祉用具販売・居宅療養管理指導は引き続き加算の対象外です。
4. 変更点②|生産性向上・協働化の「上乗せ」と加算区分の細分化
持続的な賃上げに向けた環境整備を進めるため、生産性向上や協働化に取り組む事業者に対して、現行の加算Ⅰ・Ⅱの加算率に上乗せする仕組みが新設されました。これにより、令和8年6月以降は加算Ⅰ・Ⅱが「イ」と「ロ」に分かれ、Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳの6区分になっています。
- 「イ」:従来の加算Ⅰ・Ⅱ相当の要件を満たす区分。
- 「ロ」:「イ」の要件に加えて生産性向上・協働化の取組を満たす場合の上乗せ区分(加算率が高い)。
あわせて、申請事務の負担軽減の観点から、生産性向上・協働化に取り組む事業者や新規対象事業者に対する配慮措置も講じられています。
5. 賃上げ額と加算率のイメージ
今回の措置による賃上げ額の考え方は次のとおりです(審議報告・老発0313第6号より)。
💰 賃上げ額の内訳(介護職員の場合の最大)
- 介護従事者に幅広く:月1.0万円(3.3%)
- 生産性向上・協働化に取り組む事業所の介護職員に上乗せ:月0.7万円(2.4%)
- 定期昇給分:月0.2万円
- 合計:介護職員について最大月1.9万円(6.3%)の賃上げが実現する措置
※「最大月1.9万円」は上記を合計した場合の水準で、すべての職員が一律に1.9万円上がるという意味ではありません。実際の賃金改善額は、加算区分・サービス種類・各事業所の配分等によって異なります。
加算率は令和8年6月から引き上げられました。代表的なサービスの加算Ⅰで、5月まで(旧・4区分)と6月以降(新・イ/ロ)を比べると次のとおりです。
| サービス | 〜令和8年5月 加算Ⅰ | 令和8年6月〜 加算Ⅰイ | 令和8年6月〜 加算Ⅰロ(生産性向上等の上乗せ) |
|---|---|---|---|
| 訪問介護 | 24.5% | 27.0% | 28.7% |
| 通所介護 | 9.2% | 11.1% | 12.0% |
| 介護老人福祉施設(特養) | 14.0% | 16.3% | 17.6% |
| 介護老人保健施設(老健) | 7.5% | 9.0% | 9.7% |
| 新規対象:(介護予防)訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援/介護予防支援 …… 令和8年6月〜 2.1% | |||
※加算Ⅱ〜Ⅳの区分や、上表以外のサービス種類の加算率は老発0313第6号(別紙1)に掲載されています。加算率は基本サービス費に各種加算減算(処遇改善加算を除く)を加えた1月当たり総単位数に乗じて算定し、区分支給限度基準額の対象からは除外されます。
6. 現行の「介護職員等処遇改善加算」の仕組み(おさらい)
今回の期中改定は、令和6年度改定で一本化された介護職員等処遇改善加算をベースにした拡充です。基本の仕組みを整理します。
- 一本化(令和6年6月〜):従来の「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3加算が、介護職員等処遇改善加算に一本化されました。
- 区分:キャリアパス要件(Ⅰ〜Ⅴ)と職場環境等要件の組み合わせで加算Ⅰ〜Ⅳ(令和8年6月以降はⅠ・Ⅱがイ/ロに細分化)に分かれ、上位区分ほど加算率が高くなります。
- 賃金改善の実施義務:事業者は、算定した加算額に相当する額を介護職員その他の職員の賃金改善(基本給・手当・賞与等。退職手当を除く)に充てなければなりません。
- ベースアップ基本の原則:令和8年度に前年度より増加した加算額(新規算定・上位区分への移行・加算率引上げによる増加分)は、ベースアップ(賃金表の改訂による基本給等の一律引上げ)により行うことが基本です。賃金体系が整備途上の場合は、その他の手当・一時金等を組み合わせても差し支えありません。
⚠️ 医療の「ベースアップ評価料」とは別制度です:本記事の処遇改善加算は介護保険の制度です。医療機関・訪問看護ステーション等のベースアップ評価料(医療保険)とは根拠も算定も異なります。両方に関わる事業所は混同にご注意ください(医療側の実務は「ベースアップ評価料の実績報告ガイド」参照)。
7. 事業者が今すべき準備
- 加算区分の見直し:令和8年6月以降のイ/ロ区分を踏まえ、生産性向上・協働化の取組でⅠロ・Ⅱロ(上乗せ)を狙えるかを確認。上位区分ほど加算率が高くなります。
- 新規対象事業所の届出:訪問看護・訪問リハ・居宅介護支援の事業所は、加算Ⅳに準ずる要件(キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ+職場環境等要件)を整備し、届出を行うことで新たに算定できます(整備期間への配慮措置あり)。
- 賃金改善計画・実績の整備:増加した加算額はベースアップが基本。賃金規程・賃金表の改訂と、賃金改善の実績記録(実績報告)の準備を進めます。
- 生産性向上の実績づくり:ICT・見守り機器の導入や協働化の取組は、上乗せ区分(ロ)の要件にも、令和9年度改定の議論にもつながります(「科学的介護推進体制加算」「LIFE加算」の算定状況もあわせて棚卸し)。
- 最新情報のウォッチ:令和9年度改定に向けた議論は「介護報酬改定2027ウォッチ」で随時更新します。
🛠 書式・届出・賃金規程の整備でお困りの方へ:処遇改善加算の区分見直し・賃金改善計画・就業規則/賃金規程の改訂など、施設ごとのカスタマイズが必要な書類は有料サポートでも承っています。まずは無料の解説記事・書式雛形をご活用ください。
8. 令和9年度(2027年度)改定に向けた処遇改善の審議状況
⚠️ ここからは「審議中」です(2026年7月時点):以下は決定事項ではありません。
令和8年度の審議報告では、令和9年度(2027年度)改定に向けた課題として、次のような方向性が示されています。
- 令和8年度改定で講じた措置の状況等を把握したうえで、累次の取組による加算Ⅰ・Ⅱの取得の進展を踏まえた対応を検討する。
- 持続的な賃上げに向けた環境整備の必要性や、事業所・施設の事務負担軽減の必要性等の観点から、介護分野の処遇改善に向けた考え方の整理を行う。
- あわせて、介護サービスの適正化・重点化や、保険料・利用者負担も念頭に置いた介護報酬全体の見直しを引き続き検討する。
令和9年度改定の本体は、介護給付費分科会で第1ラウンド(サービス別の論点整理)が進行中で、秋以降の第2ラウンドで具体化していきます。処遇改善を含む各サービスの論点は「介護報酬改定2027の論点まとめ(第1ラウンド)」で整理しています。単位数・要件が決まるのは2027年1月頃の諮問・答申の見込みです。
9. よくある質問(FAQ)
Q1. 介護職員の給料は2027年に上がりますか?
賃上げは令和9年度(2027年度)改定を待たず、令和8年(2026年)6月の期中改定で処遇改善加算が拡充され、すでに措置されています。生産性向上・協働化に取り組む事業所の介護職員では、定期昇給を含め合計で最大月1.9万円(6.3%)の賃上げにつながる内容です。2027年度改定でさらにどうなるかは審議中で、まだ確定していません。
Q2.「最大月1.9万円」は誰でももらえますか?
いいえ。1.9万円は「介護従事者に幅広く月1.0万円(3.3%)+生産性向上・協働化に取り組む事業所の介護職員に月0.7万円(2.4%)の上乗せ+定期昇給0.2万円」を合計した最大水準の目安です。すべての職員が一律に1.9万円上がるわけではなく、加算区分・サービス種類・各事業所の配分等によって実際の額は異なります。
Q3. 令和8年6月から新たに処遇改善加算の対象になったサービスは?
訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援(いずれも介護予防を含む)です。現行の加算Ⅳの取得に準ずる要件(キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ+職場環境等要件)を整備することで算定できます。なお、福祉用具貸与・特定福祉用具販売・居宅療養管理指導は引き続き対象外です。
Q4. 加算区分の「イ」と「ロ」の違いは?
令和8年6月から加算Ⅰ・Ⅱが「イ」と「ロ」に細分化されました。「ロ」は生産性向上・協働化の取組を満たす場合の上乗せ区分で、「イ」より加算率が高く設定されています(例:訪問介護の加算ⅠイはⅠロより低い)。
Q5. 増えた加算額は基本給で配分しないといけませんか?
令和8年度に前年度より増加した加算額は、ベースアップ(賃金表の改訂による基本給等の一律引上げ)により行うことが基本です。ただし賃金体系が整備途上の場合は、必要に応じてその他の手当・一時金等を組み合わせて実施しても差し支えありません。安定的な処遇改善の観点からは基本給による改善が望ましいとされています。
Q6. 令和9年度(2027年度)改定で処遇改善はどうなりますか?
審議中で確定していません。審議報告では、令和8年度措置の状況や加算Ⅰ・Ⅱ取得の進展を踏まえた対応、事務負担軽減などが「課題」として示されています。最新の議論は「介護報酬改定2027ウォッチ」で更新します。
参考・一次情報
- 社会保障審議会 介護給付費分科会「令和8年度介護報酬改定に関する審議報告」(令和7年12月23日) 厚生労働省
- 「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和8年3月13日 老発0313第6号) 厚生労働省
- 介護職員の処遇改善(制度概要・様式) 厚生労働省
- 「経済財政運営と改革の基本方針2025」(令和7年6月13日閣議決定)/「『強い経済』を実現する総合経済対策」(令和7年11月21日閣議決定)
※ 本記事のうち「令和8年6月施行の期中改定」の内容は令和7年12月23日 審議報告・令和8年3月13日 老発0313第6号に基づく確定情報です(2026年7月時点)。令和9年度(2027年度)改定に向けた記載は審議中の課題であり、改定内容として確定したものではありません。加算率・要件の適用にあたっては、必ず最新の告示・通知・様式をご確認ください。