2026年(令和8年)8月は、ベースアップ評価料の報告が最大2本立てになります——①令和7年度分の「賃金改善実績報告書」(前年度の実績)と、②令和8年度算定分の「賃金改善中間報告書」(今年度の取組状況・令和8年度改定で新設された仕組み)です。本記事では、自院がどれを出すべきかの判定、様式100の記載項目、提出方法、そして定例報告と重なる8月の段取りを、施設基準・医事の担当者向けに整理します。
対象施設:ベースアップ評価料を算定する病院・診療所・歯科診療所(訪問看護ステーション・保険薬局は様式が別ですが提出の流れは同様)/情報時点:令和8年7月12日
この記事の3行まとめ
- 2026年8月は「令和7年度分 実績報告書」+「令和8年度分 中間報告書」の2つ。継続算定している医療機関は両方提出
- 令和8年度分は様式100(実績報告書・中間報告書の共通様式。表紙で種類をチェック)。提出は管轄厚生局の専用メールにExcel
- 8月は定例報告・回復期リハ実績指数報告とも重なる報告の集中月。7月中の準備開始を推奨
本記事の範囲:本記事は報告書の転記実務と提出の段取りを整理するものです。賃金配分の設計・就業規則や給与規程の変更・社会保険の取扱いといった労務判断は、顧問社労士等の専門家にご相談ください。金額の例はすべて架空の仮想例です。
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1. 自院はどれを出す?——2026年8月の対象判定
まず、自院が提出すべき報告書を判定します。ポイントは「令和7年度に算定していたか」と「令和8年度に算定しているか」の2軸です。
| 自院の状況 | 2026年8月に提出するもの |
|---|---|
| 令和7年度に算定し、令和8年度も継続算定中(多くの医療機関) | ①令和7年度分 実績報告書 + ②令和8年度分 中間報告書の両方 |
| 令和8年度(2026年6月〜)から新規に算定を開始 | ②令和8年度分 中間報告書のみ |
| 令和7年度に算定していたが、令和8年度は算定していない | ①令和7年度分 実績報告書のみ |
「中間報告書」は令和8年度改定で新設された仕組みです。令和8年度の届出様式(様式95)の誓約書には「毎年8月に、①前年度の賃金改善の取組状況について、様式100『賃金改善実績報告書』により報告すること、②算定を行っている年度における賃金改善の取組状況について、様式100『賃金改善中間報告書』により報告すること」と明記されており、届出した全機関が毎年8月に2種類の報告を行う運用になりました(当年度分は中間報告→翌年8月に実績報告として確定、というサイクルです)。
2. 期限と提出先
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出期限 | 8月末(管轄厚生局の指定日)。令和7年提出分の実績では8月29日〆切(関東信越厚生局)でした。令和8年の正式な期限日は管轄厚生局の案内で必ず確認してください |
| 提出先・方法 | 管轄する地方厚生(支)局都道府県事務所ごとの専用メールアドレスにExcelファイルを提出(厚労省ページに都道府県別メールアドレス一覧あり)。メール本文に施設名・連絡先を記載。やむを得ない場合は書面提出も可 |
| 提出単位 | 保険医療機関ごと。同一法人内の複数医療機関は法人用の別添様式(様式100別添2等)の利用可 |
3. 様式の全体像——どのファイルのどのシートを使うか
厚労省の「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について」ページから、年度分ごとに別のExcelファイルをダウンロードします。ここを取り違えると差し戻しの原因になります。
| 報告 | 使用ファイル・様式 | 備考 |
|---|---|---|
| ①令和7年度分 実績報告書 | 「【令和7年度算定分】賃金改善実績報告書様式」(病院及び有床診療所用/診療所及び歯科診療所用/訪問看護ステーション用の3種)。表紙+(別添)実績報告書のシートに記入 | 自院の種別に合ったファイルを選ぶ。記載例PDFも同ページに掲載 |
| ②令和8年度分 中間報告書 | 「【令和8・9年度算定分】賃金改善実績報告書様式」(医療機関用/訪問看護ST用/保険薬局用)。様式100(表紙)+別添1に記入し、別添1冒頭の「Ⅰ.提出書類の種類」で「賃金改善中間報告書」にチェック | 実績報告書と中間報告書は共通様式。種類のチェックで使い分ける |
4. 様式100(別添1)の記載項目——転記実務の要点
令和8・9年度算定分の様式100別添1は、おおむね次の構成です(実物のシート構成に基づく整理)。
| セクション | 記載する内容 | 実務メモ |
|---|---|---|
| Ⅰ.提出書類の種類 | 中間報告書/実績報告書のチェック | 2026年8月の令和8年度分は「中間報告書」 |
| Ⅱ.医療機関種別 | 病院及び診療所/歯科診療所 | ― |
| Ⅲ.賃金改善実施期間・算定期間 | 令和8年度改定以降に賃金改善を実施した期間と評価料の算定期間 | 6月〜翌5月に算定した収入を当該年度4月〜翌3月の賃金改善に充当した場合は、遡及した期間を記載できる旨の注記あり |
| Ⅳ.収入の実績額 | 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)(Ⅱ)・入院ベースアップ評価料等による収入の実績額、前年度からの繰越額 | 算定していない評価料は「0」と記載。継続的な賃上げの取組に係る評価の点数分を除いた本体点数のみに置き換えて計算する注記に注意 |
| Ⅴ.職種別の賃金事項 | 対象職員全体→看護職員等→40歳未満の勤務医師・歯科医師→事務職員→看護補助者等の区分ごとに、常勤換算数・基本給等総額(月額)・ベア実績額・賃金増率・賞与支給月数 | 基本給等総額は1か月あたりの額。賞与など特定時期のみの手当は含めない |
令和8年度からの重要変更——対象職員の範囲が広がっています:令和8年度の届出様式(様式95)では、対象職員は「自保険医療機関に勤務する職員(ただし、40歳以上の医師及び歯科医師並びに業務委託により勤務する者を除く)」とされています。従来(令和6年度)の「主として医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く)」から範囲が変わり、様式100にも40歳未満の勤務医師・歯科医師、事務職員の記載欄が設けられています。前年度の感覚で職員リストを作ると集計対象がずれるため、最初に対象職員の棚卸しをやり直してください。
5. 中間報告書ならではの注意点
- 8月時点の取組状況を記載します。年度の途中なので、実績は報告時点までの状況で記載します
- 条例の改正が必要である等、医療機関の責によらないやむを得ない理由で8月時点の実績を記載できない場合は、計画値での記載が認められます(様式にチェック欄と理由記載欄あり。公立医療機関などが該当し得ます)。理由の詳細記載は必須です
- 中間報告の内容は、翌年8月の実績報告書で確定させるサイクルです。中間報告時点の集計根拠(賃金台帳・算定回数)を保存しておくと翌年の実績報告が楽になります
6. よくある不備・差し戻りやすいポイント
- ファイル・シートの取り違え:令和7年度分と令和8・9年度分は別ファイル。種別(病院用/診療所用等)も別
- 収入実績の計算方法:継続的賃上げ評価の点数分を含めたまま集計してしまう(本体点数のみに置き換えて計算する注記を見落とし)
- 基本給等総額の期間誤り:年額や賞与込みで記載してしまう(月額・賞与除きが原則)
- 「0」記載の省略:算定していない評価料の欄を空欄のままにする(0と記載する指示あり)
- 対象職員の範囲が旧定義のまま:40歳未満医師・事務職員の扱いが前年度と異なる(§4参照)
- 提出漏れ:報告は届出時の誓約事項です。未提出のまま放置しない(不明点は管轄厚生局へ早めに相談)
7. 無料ダウンロード|賃金改善 月次管理表(Excel)
8月の報告だけを意識すると、年度途中の昇給・人員増減・算定状況を取りこぼします。毎月転記しておけば8月に写すだけになる管理表を用意しました。
📥 書式45:ベースアップ評価料 賃金改善 月次管理表
- シート1「月次管理表」——月別に対象職員数(常勤換算)・基本給等総額・ベア等増額分・評価料の算定回数/収入額・特記事項を記録(4月〜翌3月+年度計)
- シート2「8月提出の段取りチェック」——実績報告書/中間報告書の対象判定+提出前チェック10項目
Excel形式でダウンロード(無料) / 記入例(架空クリニックの記入イメージ)
※記入例は「毎月どの欄に何を書くか」を示す架空例です。金額・回数はサンプルなので、自院の実績に置き換えてご利用ください。
8. 8月は報告の集中月——段取りの全体像
2026年8月は、ベースアップ評価料の2報告に加えて、施設基準の定例報告(8月1日現在・8月末〆切)、回復期リハビリテーション病棟の実績指数報告(別紙様式45)も重なります。担当を分け、7月中に着手するのが現実的です。
- 年間の届出・報告の全体像:「医療機関の届出・報告 年間スケジュール」(管理カレンダー付き)
- 定例報告の自己点検:「施設基準の定例報告2026」(チェックリスト書式42付き)
- ベースアップ評価料まわりの疑義解釈・賃上げ関連の様式98(8月3日期限):「令和8年度改定 疑義解釈まとめ」
FAQ|よくある質問
Q1. 実績報告書と中間報告書は両方必要ですか?
令和7年度に算定し令和8年度も継続算定している医療機関は、2026年8月に「令和7年度分の実績報告書」と「令和8年度分の中間報告書」の両方を提出します。令和8年度から新規に算定を始めた場合は中間報告書のみです。
Q2. 中間報告書には何を書くのですか?
算定を行っている年度(令和8年度)の賃金改善の取組状況を、様式100別添1に沿って報告します(実績報告書と共通の様式で、冒頭の「提出書類の種類」で中間報告書にチェックします)。条例改正が必要である等やむを得ない理由で8月時点の実績を記載できない場合は、理由を明記のうえ計画値での記載が認められています。
Q3. 提出期限はいつですか?
例年8月末(管轄の地方厚生局の指定日)です。令和7年提出分の実績では8月29日が期限でした(関東信越厚生局)。令和8年の正式な期限日・提出方法は、管轄厚生局の案内および厚労省のベースアップ評価料特設ページでご確認ください。
Q4. 提出しないとどうなりますか?
毎年8月の実績報告書・中間報告書の提出は、届出時の誓約書に明記された事項です。未提出のまま算定を続けることは施設基準の前提を欠くことになりかねません。間に合わない事情がある場合は、放置せず管轄の地方厚生局に早めに相談してください。
参考文献・出典
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について」(様式・記載例・説明資料・解説動画・都道府県別専用メールアドレス一覧)
- ベースアップ評価料届出様式(様式95〜100・医療機関用、令和8・9年度算定分)——様式95誓約書・様式100別添1の記載項目は同様式Excel原本より
- 【令和7年度算定分】賃金改善実績報告書様式(病院及び有床診療所用/診療所及び歯科診療所用/訪問看護ステーション用)
- 関東信越厚生局「ベースアップ評価料に係る『賃金改善計画書』及び『賃金改善実績報告書』について」(令和7年提出分:実績報告書8月29日〆切)
※ 本記事は令和8年7月12日時点の様式・公表資料に基づく解説です。正式な期限・様式の最新版は管轄の地方厚生(支)局・厚生労働省ページで必ずご確認ください。賃金設計・労務管理の個別判断は社会保険労務士等の専門家にご相談ください。