科学的介護推進体制加算は、介護施設・事業所がLIFE(科学的介護情報システム)にデータを提出し、PDCAサイクルに基づくケアを実施することで算定できる加算です。令和6年度改定でデータ提出頻度が「6か月に1回」から「3か月に1回」に短縮されるなど、運用ルールが変わりました。本記事では、加算ⅠとⅡの違い・単位数・算定要件・届出手続き・提出漏れ時の対応を一まとめで解説します。

「LIFEへの提出は毎月やっているけれど、科学的介護推進体制加算ⅠとⅡで何が違うのか分からない」「令和6年度改定でどこが変わったか整理したい」という担当者の方に向けた記事です。初めてLIFE加算の算定を検討している施設の方にも、算定要件の全体像が分かるように解説します。

なお、LIFEシステムの全体像・活用方法については「LIFEとは?科学的介護情報システムの概要と活用ガイド」をあわせてご参照ください。

科学的介護推進体制加算とは

科学的介護推進体制加算は、介護事業所がLIFEに利用者の状態に関するデータを提出し、その結果のフィードバックをケアの改善(PDCAサイクル)に活かす体制を整えた場合に算定できる加算です。

LIFEはもともとVISIT(リハビリ)とCHASE(心身状態・栄養等)の2つのシステムが統合されたものです。国が全国規模でデータを収集・分析し、施設ごとにフィードバックを返すことで、介護サービス全体の質向上を目指しています。

対象サービス

科学的介護推進体制加算(Ⅰ)は、以下の幅広いサービス種別が対象です。

  • 介護老人福祉施設(特養)・地域密着型介護老人福祉施設
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 介護医療院
  • 通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護
  • 通所リハビリテーション・訪問リハビリテーション
  • 特定施設入居者生活介護・地域密着型特定施設
  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
  • 小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護

補足:訪問介護・定期巡回・随時対応型訪問介護看護はLIFEの対象外のため、本加算自体が算定できません。

加算ⅠとⅡの違い

科学的介護推進体制加算には「Ⅰ」と「Ⅱ」の2つの区分があります。加算Ⅱは施設系サービス(特養・老健・介護医療院)のみが算定でき、加算Ⅰに追加してLIFEへ診断名・服薬情報を提出することが要件となります。

加算ⅠとⅡは同一の利用者に対して同時算定はできません。上位区分の加算Ⅱを選択した場合は、自動的に加算Ⅰとの重複算定はできない仕組みです。

比較項目 加算Ⅰ 加算Ⅱ
単位数(通所・居宅系) 40単位/月 設定なし(Ⅱは施設系のみ)
単位数(特養・地域密着型特養) 40単位/月 50単位/月
単位数(老健・介護医療院) 40単位/月 60単位/月
対象サービス 通所系・居住系・多機能系・施設系(全サービス) 施設系のみ(特養・老健・介護医療院)
LIFEへの提出データ 基本情報・ADL(BI)・自立度・口腔栄養・認知症 加算Ⅰの提出データ+診断名・服薬情報(追加必須)
同時算定 他のLIFE関連加算と併算定可 加算Ⅰとは同時算定不可(上位区分)

ポイント:老健・介護医療院が特養より単位数が高い(60単位 vs 50単位)のは、医師が配置される医学的管理下での施設であり、より詳細な服薬・既往情報の提出が求められるためです。

算定要件(詳細)

LIFEへの提出データの種類

加算Ⅰ・Ⅱで共通して提出が必要な基本データと、加算Ⅱで追加必要なデータは以下のとおりです。

大項目 主な詳細項目 加算Ⅰ 加算Ⅱ
基本情報 氏名・生年月日・性別・要介護度 等 必須 必須
総論(ADL) Barthel Index(10項目) 必須 必須
総論(自立度) 障害高齢者・認知症高齢者の日常生活自立度 必須 必須
口腔・栄養 身長・体重・低栄養リスク・口腔清掃状態 等 必須 必須
認知症 DBD13・Vitality Index 等 必須 必須
総論(既往歴・診断名) 脳血管疾患・心疾患・糖尿病等の診断名 任意 必須
総論(服薬情報) 薬剤名・剤数・副作用の有無 等 任意 必須(特に老健・介護医療院)
社会背景 同居家族の有無・在宅復帰の可能性 等 任意 必須

注意:特養で加算Ⅱを算定する場合の服薬情報の義務範囲については、老老発0315第4号の原文では施設系加算Ⅱ全般について「診断名・服薬情報を提出すること」と一括記載されています。老健・介護医療院が特に詳細な服薬情報を求められる点は確認されていますが、特養の服薬情報の義務範囲の細かい扱いについては、自治体担当窓口にご確認ください。

別紙様式の種類(令和6年度版)

  • 別紙様式1:科学的介護推進に関する評価(通所・居住サービス用)
  • 別紙様式2:科学的介護推進に関する評価(施設サービス用)
  • 別紙様式3:生活・認知機能尺度(令和6年度改定で追加)

LIFEへの提出頻度と締め切り

令和6年度改定により、データ提出頻度が「少なくとも6か月に1回」から「少なくとも3か月に1回」に短縮されました。具体的な提出タイミングは以下のとおりです(出典:老老発0315第4号 令和6年3月15日)。

提出が必要なタイミングと締め切り:

  • ア:算定を開始しようとする月 → 翌月10日まで
  • イ:新規にサービス利用を開始した月 → 翌月10日まで
    (月末開始等のやむを得ない場合は翌々月10日まで。ただし利用開始月の加算算定は不可)
  • ウ:継続中の利用者 → 少なくとも3か月ごとに翌月10日まで
  • エ:サービスの利用を終了する月 → 翌月10日まで

計画書の作成・説明・同意の要件

LIFEへのデータ提出に加えて、以下のPDCAサイクルに関する要件を満たす必要があります。

  • 利用者の心身の状況等に係る基本的な情報に基づき、適切なサービスを提供するためのサービス計画を作成すること(Plan)
  • サービス計画に基づき、利用者の自立支援・重度化防止に資する介護を実施すること(Do)
  • LIFEからのフィードバック情報を活用し、サービスの改善・計画の見直しを行うこと(Check・Act)
  • 利用者またはその家族に、計画の内容を説明して同意を得ること

記録の保存義務

LIFEへの提出データおよびケア記録は、各自治体の条例が定める期間に従って保存する必要があります。一般的に介護記録の保存は2〜5年とされていますが、必ず所管の自治体に確認してください。

届出・算定開始までの流れ

体制届の提出先

体制届の提出先はサービス種別によって異なります。

サービス種別 届出先
特養・老健・介護医療院・広域型の特定施設 等 都道府県(または保健所設置市)
通所介護・グループホーム・小規模多機能型居宅介護 等の地域密着型サービス 市区町村

算定開始タイミング(15日ルール)

体制届を提出してから実際に算定が開始できるタイミングは、自治体の運用ルールに基づき一般的に以下のように整理されています。

サービス種別 届出提出のタイミング 算定開始月
居宅系・通所系 算定を希望する月の前月15日まで 翌月から算定開始
居宅系・通所系 算定を希望する月の前月16日以降 翌々月から算定開始
施設系・特定施設 算定を希望する月の初日(1日)に受理 当月から算定開始(要確認)
施設系・特定施設 算定を希望する月の2日以降に受理 翌月から算定開始

注意:施設系サービスの「当月1日受理→当月算定開始」の扱いは、自治体ごとの運用差がある領域で、通知本文に明示の規定があるわけではありません。届出前に必ず所管の自治体窓口に確認し、最新の運用に従ってください。

届出の方法

体制届は原則として「介護事業所・生活保護指定介護機関電子申請・届出システム」を利用して提出します。システムの利用が困難な場合は、郵送や持参が認められる場合があります。詳細は届出先の自治体窓口に確認してください。

算定開始までの手順(チェックリスト)

算定前の確認事項:

  • LIFEのシステムアカウントを取得済みであること
  • 利用者の同意取得(情報提出への同意)が完了していること
  • 初回のLIFEデータ入力・送信が完了していること
  • 体制届を所管の都道府県または市区町村に提出済みであること
  • 介護給付費明細書への算定コードの入力方法を確認済みであること

算定できないケース・注意点

LIFEへの提出漏れ時のペナルティ

注意:提出漏れが発生した場合は全利用者の加算が算定不可となります。

通知原文(老老発0315第4号)には以下のとおり規定されています。

「情報を提出すべき月について情報の提出を行えない事実が生じた場合、直ちに届出を提出しなければならず、事実が生じた月のサービス提供分から情報の提出が行われた月の前月までの間について、利用者等全員について本加算を算定できない」

例えば4月のデータを5月10日までに提出できなかった場合、4月サービス提供分から算定が停止します。すでに請求済みの場合は、過誤申立により保険者(市区町村)への返還が必要です。大規模施設では数百万円規模の損失につながる可能性があります。

「やむを得ない場合」として認められる3つのケース

以下の場合は、提出できなかったことに正当な理由があるとして扱われます(令和6年度介護報酬改定Q&Aより)。

  1. 緊急入院等:通所サービスの利用者が月初に緊急入院することとなり、情報の提出ができなかった場合
  2. システムトラブル:データを入力したにもかかわらず、LIFEのシステムトラブル等により提出ができなかった場合
  3. 全身状態の急速な悪化:全身状態が急速に悪化した入所者について、体重等の必須項目が測定できず、一部の情報しか提出できなかった場合

補足:「単なる入力忘れ」や「担当者の不在」は正当な理由として認められません。複数名で提出状況を確認できる体制を整えておくことが重要です。

令和6年度改定の移行期特例

令和6年度改定への対応として、令和6年4月〜7月のサービス提供分のデータ提出については、令和6年10月10日までに提出することが認められる特例措置がありました(すでに終了)。

加算ⅠとⅡの同時算定禁止

加算Ⅰと加算Ⅱは同一の利用者に対して同時に算定できません。より高い上位区分である加算Ⅱを選択してください。

組み合わせて算定できる主な加算

科学的介護推進体制加算は、他のLIFE関連加算と組み合わせて算定することができます。主な例は以下のとおりです。

補足:科学的介護推進体制加算で提出する基本データに、各LIFE関連加算固有のデータを上乗せして提出する構造になっています。ADL維持等加算(Ⅰ・Ⅱ)の算定要件・Barthel Index評価方法・アウトカム基準はADL維持等加算の解説記事で詳しく解説しています。

必要な人員・体制

科学的介護推進体制加算には、特定の職種の「専従」要件はありません。ただし、LIFEへの正確なデータ提出とPDCAサイクルの実施のために、多職種が有機的に連携することが求められます。

職種 主な役割 関与の形態
医師 既往歴・服薬情報の確認、フィードバックに基づく医学的指示 兼務可(施設医・嘱託医としての参画)
看護師 褥瘡リスク・口腔衛生・副作用の観察、バイタルデータの管理 専任(日常的なモニタリングと記録)
介護職員 ADL(Barthel Index)の評価、認知症の行動観察(DBD13)、日常生活の記録 兼務(ケアの実施と評価の主体)
リハビリ職(PT・OT・ST) ADL評価の精度管理、個別機能訓練との整合性確認 専任または兼務(専門的アセスメント)
管理栄養士 低栄養リスク評価、栄養マネジメント情報の提供 専任または兼務(栄養状態の定量的評価)
介護支援専門員 提出スケジュール管理、フィードバックのケアプランへの反映 兼務可(PDCAサイクルのコーディネート)

ポイント:本加算に専従職員の配置要件はありません。ただし、提出データの正確性と定期的な評価・見直しのために、施設全体でLIFEを運用できる体制を構築することが重要です。特に「誰がいつ何のデータを入力・送信するか」の役割分担を明文化しておくことを推奨します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 加算ⅠとⅡ、どちらを選べばよいですか?

通所系・居宅系・多機能系サービスは加算Ⅱが設定されていないため、加算Ⅰのみ算定できます。特養・老健・介護医療院の場合、加算Ⅰ(40単位)か加算Ⅱ(特養50単位、老健・介護医療院60単位)のどちらかを選択します。加算Ⅱは診断名・服薬情報等の追加提出が必要ですが、単位数が高くなります。提出できるデータ量と施設の体制に応じて選択してください。

Q2. LIFEに提出するデータは、毎月送信しなければなりませんか?

毎月の提出は必須ではありません。令和6年度改定後のルールでは「少なくとも3か月に1回」の提出が必要です。ただし、算定開始月・新規利用開始月・サービス終了月はその都度、翌月10日までに提出する必要があります。

Q3. 提出期限を1日でも過ぎると、全員分の加算が取れなくなりますか?

原則としてそのとおりです。期限(翌月10日)を過ぎた場合、その月のサービス提供分から加算の算定ができなくなります。ただし、緊急入院・システムトラブル・全身状態の急速な悪化といった「やむを得ない場合」に該当するケースは除かれます。

Q4. 新規利用者はいつから算定できますか?

新規利用者については、利用開始月の翌月10日までにLIFEへのデータ提出が必要です。月末近くに利用を開始した場合は翌々月10日までの提出が認められますが、その場合は利用開始月の加算は算定できません。

Q5. 体制届を出した月から加算を算定できますか?

サービス種別によって異なります。居宅系・通所系は、算定を希望する月の前月15日までに届け出ると翌月から算定できます。施設系は当月初日(1日)に受理されれば当月から算定できる場合がありますが、自治体によって運用差があるため、詳細は届出先の窓口にご確認ください。

Q6. LIFEのフィードバックを活用しなくても算定できますか?

フィードバックを受け取るだけでなく、その内容をケア計画の見直しに活かすことが要件です。単にデータを提出するだけでなく、PDCAサイクル(計画・実施・評価・改善)に基づいたケアを実施している記録が求められます。

Q7. 口腔・栄養関連の加算と同時に算定できますか?

はい、算定できます。栄養マネジメント強化加算・口腔衛生管理加算(Ⅱ)など他のLIFE関連加算は、科学的介護推進体制加算と組み合わせて算定することが可能です。口腔・栄養加算については「口腔・栄養加算まとめ」もご参照ください。

令和6年度改定による主な変更点

項目 改定前(令和3年度〜令和5年度) 令和6年度改定後(新)
提出頻度 少なくとも6か月に1回 少なくとも3か月に1回(厳格化)
評価項目 基本情報・総論・口腔栄養・認知症 上記+生活・認知機能尺度(別紙様式3)を追加
初回提出の猶予 月末開始等の場合の追加猶予なし 新規利用開始月が月末等のやむを得ない場合は翌々月10日まで提出可(利用開始月の加算は算定不可)
システム 旧LIFEシステム 新LIFEシステム(令和6年8月稼働)へ移行
単位数 加算Ⅰ:40単位、加算Ⅱ:特養50・老健/介護医療院60単位 変更なし

LIFE関連加算の算定体制の整備や、書式・マニュアルの作成についてお困りの場合は、お気軽にご相談ください。口腔・栄養加算に関する書式雛形も無料で提供しています。

実務で使える書式雛形(無料ダウンロード)

科学的介護推進体制加算の算定に必要な評価項目を、施設内で記録・整理するための補助シートを用意しました。LIFE提出(別紙様式1〜3)の前段階でアセスメント情報をまとめる用途にご活用ください。

補足:本シートは「老老発0315第4号」の別紙様式そのものではなく、施設で使いやすい形に整理した独自補助シートです。LIFE提出は厚労省公式の別紙様式(LIFE公式サイトより入手)で行ってください。

書式名 対応する別紙様式・用途 ダウンロード
LIFE科学的介護推進評価表
(通所・居住サービス用)
別紙様式1の補助/加算Ⅰ算定の通所介護・特定施設・グループホーム等向け 本体(Excel)
記入例(架空・75歳・要介護2)
LIFE科学的介護推進評価表
(施設サービス用)
別紙様式2の補助/加算Ⅱの追加項目(既往歴・服薬情報)にも対応 本体(Excel)
記入例(架空・85歳・特養・加算Ⅱ)
LIFE生活・認知機能尺度評価シート 別紙様式3の補助/令和6年度改定で追加された生活機能8項目+認知機能6項目 本体(Excel)
記入例(架空・82歳・MCIレベル)
科学的介護推進に関する評価
(施設サービス・別紙様式2)
上の補助シート(書式20)ではなく別紙様式2そのもの。Word版は厚生労働省の原本、Excel版は当サイトで入力しやすく作成したもの Excel形式
Word形式(厚労省原本)
生活・認知機能尺度
(別紙様式3)
上の補助シート(書式21)ではなく別紙様式3そのもの。Word版は厚生労働省の原本、Excel版は当サイト作成版 Excel形式
Word形式(厚労省原本)

💡 補助シートと別紙様式の使い分け:書式19〜21は多職種で情報を集約するための当サイト独自の補助シート、書式29・30はLIFEに提出する別紙様式そのものです。補助シートで集めた情報を別紙様式へ転記する流れが実務的です。

実務での使い方:多職種でアセスメント情報を集約する際に、本補助シートに記入→LIFE公式の別紙様式に転記、という流れで使うと入力ミスが減ります。3か月ごとの定期評価のテンプレートとしても活用できます。

参考文献

  • 厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(老老発0315第4号、令和6年3月15日)
  • 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1・Vol.3・Vol.10)」
  • 厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)第1回説明会資料」(令和6年9月)
  • 厚生労働省 LIFE公式サイト(https://life.mhlw.go.jp/)(2026年4月時点)