この記事では、特養・老健・介護医療院・看護小規模多機能型居宅介護(看多機)を対象に、排せつ支援加算(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)の算定要件を整理します。

加算Ⅰはプロセス評価(10単位/月)、加算Ⅱ・Ⅲはアウトカム評価(15・20単位/月)の2段階構造です。令和3年度改定で現行の3区分化が実施され、令和6年度改定では30日ルールの明確化など運用面が整理されました。

評価頻度・計画見直し頻度・LIFE提出頻度がそれぞれ異なる「三重構造」を正確に把握することが算定継続のポイントです。

排せつ支援加算(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)算定要件とアウトカム評価【LIFE提出加算・令和6年度改定対応】

排せつ支援加算とは

排せつ支援加算は、要介護状態の軽減が見込まれる入所者・利用者に対し、医師または医師と連携した看護師が排せつ状態を評価し、多職種が協働して支援計画を作成・実施することで排泄自立度の向上とおむつ使用率の低減を目指す加算です。

科学的介護情報システム(LIFE)への情報提出を要件とする「LIFE関連加算」のひとつです。

制度の沿革は以下のとおりです。

  • 平成30年度改定:排せつ支援加算を創設(100単位/月、1区分)
  • 令和3年度改定:Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの3区分化を実施、LIFEへの提出を要件化
  • 令和6年度改定:単位数・区分を維持しつつ、30日ルールの明確化など運用面を整理

補足:3区分化(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)は令和3年度改定で実施済みです。令和6年度改定では新たに区分を創設したわけではありません。この点を正確に理解しておくことが重要です。

算定単位数と対象施設(令和6年度改定対応)

区分 単位数 評価の軸
排せつ支援加算(Ⅰ) 月10単位 プロセス評価(評価・LIFE提出・支援計画の実施)
排せつ支援加算(Ⅱ) 月15単位 アウトカム評価1(排泄状態改善 または おむつ離脱)
排せつ支援加算(Ⅲ) 月20単位 アウトカム評価2(排泄状態改善 かつ おむつ離脱の両方)

重要:加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲは同月内に1つしか算定できません。加算Ⅱ・Ⅲはアウトカムを達成した月にⅠから切り替えて算定します。

対象施設・サービス(令和6年度改定後)は以下のとおりです。

  • 介護老人福祉施設(特養)
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 介護医療院
  • 看護小規模多機能型居宅介護(看多機)

Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの違い(プロセス評価とアウトカム評価2段階)

加算の3区分は、「プロセス(取り組みの実施)」を評価するⅠと、「アウトカム(結果)」を評価するⅡ・Ⅲに大きく分かれます。

区分 評価の種類 達成要件の概要 単位数
加算Ⅰ プロセス評価 医師等による評価・多職種での支援計画策定・LIFE提出を継続的に実施 月10単位
加算Ⅱ アウトカム評価1 Ⅰの全要件 + 排泄状態の改善 または おむつ離脱のいずれか一方を達成 月15単位
加算Ⅲ アウトカム評価2 Ⅰの全要件 + 排泄状態の改善 かつ おむつ離脱の両方を達成 月20単位

加算Ⅱ・Ⅲはいずれも加算Ⅰの要件をすべて満たした上で、アウトカム要件を達成した月に算定します。加算Ⅰを算定している利用者がアウトカムを達成したら、その月から加算Ⅱまたは加算Ⅲへ切り替えます。

加算Ⅰのプロセス要件

加算Ⅰを算定するには、以下の5つのプロセス要件を継続的に満たす必要があります。

要件1:排せつ状態の評価(医師・看護師)

  • 評価の実施者:医師、または医師と連携した看護師
  • 評価のタイミング:入所時(利用開始時)に実施し、その後少なくとも6か月に1回評価する
  • 評価内容:別紙様式6「排せつの状態に関するスクリーニング・支援計画書」の各項目

要件2:評価対象者の定義(支援計画の対象者)

支援計画の作成対象となる利用者は、認定調査員テキスト2009改訂版の方法を用いて評価した結果、以下のいずれかに該当する者です。

  • 排尿の状態が「一部介助」または「全介助」と評価される者
  • 排便の状態が「一部介助」または「全介助」と評価される者
  • おむつを使用している者

要件3:多職種協働での支援計画作成

要因分析と支援計画の作成は多職種で行います。参加が必須の職種と、必要に応じて加える職種があります(詳細は「多職種連携体制」のセクションを参照)。

要件4:計画の定期的な見直し

  • 見直し頻度:少なくとも3か月に1回
  • 支援計画の内容を多職種で検討し、PDCAサイクルを回す

要件5:LIFEへの情報提出・活用

  • 評価結果をLIFE(科学的介護情報システム)に提出する
  • LIFEのフィードバック情報を活用してケア計画の改善を図る

評価の三重構造(評価6か月・計画見直し3か月・LIFE提出3か月)

ポイント:排せつ支援加算では、「評価」「計画見直し」「LIFE提出」の3つの頻度がそれぞれ異なります。この三重構造の把握が算定継続の鍵です。

項目 実施者 頻度
排せつ状態の評価 医師または医師と連携した看護師 入所時 + 6か月に1回以上
支援計画の見直し 多職種チーム 3か月に1回以上
LIFEへの情報提出 担当者(LIFE入力担当) 3か月に1回以上(翌月10日まで)

評価は6か月サイクル、計画見直しとLIFE提出は3か月サイクルで動きます。評価を行っていない月でも、計画見直しとLIFE提出は必要です。この違いを管理表等で担当者間に周知してください。

加算Ⅱのアウトカム要件

加算Ⅱは、加算Ⅰの全プロセス要件を満たした上で、入所時と比較して以下のAまたはBのいずれか一方を達成した月に算定できます。

条件 達成内容
条件A:排泄状態の改善 排尿または排便の状態の少なくとも一方が改善し、かつ、いずれにも悪化がない
条件B:おむつ離脱 入所時にあった「おむつ使用」が「おむつ使用なし」に改善した

条件AとBのどちらか一方を達成した月から加算Ⅱを算定します。アウトカムを達成した月は加算ⅠではなくⅡで算定してください。

加算Ⅲのアウトカム要件(ⅡとⅢの対比)

加算Ⅲは、加算Ⅰの全プロセス要件を満たした上で、入所時と比較して以下のAかつBの両方を同時に達成した月に算定できます。

注意:加算ⅢはⅡの「AまたはB」ではなく、「AかつB」の両方を同時達成が必要です。条件Aのみ・条件Bのみの達成では加算Ⅲを算定できません。この違いを誤ると過算定になります。

区分 条件A(排泄状態改善) 条件B(おむつ離脱) 両方の関係
加算Ⅱ 必要 どちらか一方で可 A または B
加算Ⅲ 必要 両方とも必要 A かつ B

加算Ⅲのアウトカム要件を具体的に示すと、「排尿または排便の少なくとも一方が改善し、いずれにも悪化がなく、かつ、おむつ使用ありから使用なしに改善した」状態です。

排せつ状態の評価項目(別紙様式6)

LIFEへの提出データは、別紙様式6「排せつの状態に関するスクリーニング・支援計画書」に基づきます。評価項目は以下のとおりです。

評価項目 評価区分・選択肢
排尿の状態 介助されていない/見守り等/一部介助/全介助
排便の状態 介助されていない/見守り等/一部介助/全介助
おむつ使用の有無 なし/あり(日中のみ・夜間のみ・終日)
ポータブルトイレ使用 あり/なし
尿道カテーテル使用 あり/なし
人工肛門使用 あり/なし

入所時の状態を正確に記録しておくことが重要です。アウトカム判定(加算Ⅱ・Ⅲ)は、入所時と最新評価時の比較で行うため、初期データの精度が算定可否を左右します。

評価対象者の定義(一部介助・全介助・おむつ使用)

支援計画の作成対象となる入所者の定義を再掲します。「認定調査員テキスト2009改訂版」の方法を用いて評価します。

  • 排尿の状態が「一部介助」または「全介助」と評価される者
  • 排便の状態が「一部介助」または「全介助」と評価される者
  • おむつを使用している者

「見守り等」は支援計画の必須対象に含まれませんが、施設の方針として自立支援を進める観点から対象に含めることは差し支えありません。

LIFE提出要件(様式・項目・頻度・経過措置)

提出様式

提出様式は、別紙様式6「排せつの状態に関するスクリーニング・支援計画書」です。

主要提出項目

  • 基本情報(氏名・生年月日・要介護度等)
  • 排せつの状態(排尿・排便・おむつ等の各評価項目)
  • 排せつ支援に係る取組(支援計画の内容)
  • 排せつに関する支援の必要性(アセスメント結果)

提出頻度・期限

  • リスク評価を行った日の属する月(少なくとも3か月に1回)
  • 提出期限:原則として該当月翌月10日まで

令和6年度改定に伴う経過措置

  • 令和6年7月末頃:LIFEシステムが更改
  • 令和6年4月〜7月分のデータ:令和6年10月10日までに提出することで算定可能

補足:LIFE提出の基本的な操作・スケジュール管理については、LIFEとは?提出方法と活用ガイドをあわせてご参照ください。

多職種連携体制(必須職種と任意職種)

排せつ支援加算の要因分析と支援計画の作成・見直しには、多職種の参加が求められます。必須職種と必要に応じて参加する任意職種に分かれます。

職種 主な役割 必須・任意
医師 排せつ状態の評価・医学的判断・指示 必須(または連携する看護師)
看護師(医師と連携) 評価の実施・看護的アセスメント 必須(医師の代理として評価可)
介護支援専門員(ケアマネ) ケアプランへの反映・調整 必須
介護職員 排せつ介助・日常観察・記録 必須(支援対象者の特性を把握している者)
薬剤師 薬剤性失禁・過活動膀胱薬等の評価 必要時(任意)
管理栄養士 便秘・下痢への栄養介入・水分摂取指導 必要時(任意)
理学療法士(PT) トイレ動作訓練・移動能力の向上 必要時(任意)
作業療法士(OT) ADL改善・トイレ環境の調整 必要時(任意)

ポイント:専従・専任の配置要件はありません。施設に在籍する既存の職員で多職種チームを構成できます。ただし、カンファレンスの参加記録(出席者・協議内容)を書面で保管することが必要です。

サービス利用中断時の取り扱い(30日ルール)

令和6年度改定で、サービス利用中断時の算定取り扱いが明確化されました。

  • 30日以上の利用中断(入院等)が決定した時点:「サービス利用終了時」として最新の評価データをLIFEへ提出することで、算定の継続要件を保持できます。
  • 全項目の評価が困難な場合:評価できた項目のみのデータ提出でも、「やむを得ない場合」として加算算定が可能です。

注意:30日未満の入院等であれば通常どおり算定を継続できますが、30日以上となることが見込まれる場合は早めにLIFE提出の手続きを行ってください。提出タイミングが遅れると算定根拠が失われる恐れがあります。

算定上の注意点・実務ポイント

  1. 入所時のベースライン記録を確実に残す
    加算Ⅱ・Ⅲのアウトカム判定は「入所時との比較」で行います。入所時の排尿・排便の状態とおむつ使用の有無を別紙様式6に正確に記録し、保管してください。
  2. 3か月ごとのPDCAサイクルを徹底する
    支援計画見直し(3か月)→ LIFE提出(3か月)→ フィードバック活用というサイクルを担当者間で共有し、管理表等で提出漏れを防ぎましょう。
  3. アウトカム達成月を正確に把握する
    加算Ⅱ・Ⅲはアウトカムを達成した月のみ算定できます。前月は加算Ⅰ・当月は加算Ⅱ(またはⅢ)というように、月ごとの算定区分を正確に管理してください。
  4. 多職種カンファレンスの記録を保管する
    支援計画の作成・見直しを行ったカンファレンスの記録(参加者・協議内容・決定事項)を文書で保存してください。算定の根拠書類となります。
  5. 評価対象者のスクリーニングを定期的に行う
    新規入所者については入所時に必ず評価を実施します。施設全体の排泄状態の把握と、支援計画の対象者漏れがないよう確認する体制を整えてください。

同時算定の可否

加算の組み合わせ 同時算定 備考
排せつ支援加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ間 不可(同月内は1つのみ) アウトカム達成状況に応じて毎月1区分を選択
科学的介護推進体制加算(Ⅰ・Ⅱ) 可 LIFE提出を3か月サイクルで統一管理すると効率的
褥瘡マネジメント加算(Ⅰ・Ⅱ) 可 各利用者について要件を満たせば併算定可。提出頻度・スケジュールが共通
自立支援促進加算 要確認 老健・介護医療院では対象者・要件が重なる場合があるため確認が必要
ADL維持等加算 対象サービスが異なる ADL維持等加算は通所介護等が対象。特養・老健・介護医療院との算定重複はない

よくある質問(FAQ)

Q1. 排せつ支援加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの単位数は?

加算Ⅰは月10単位、加算Ⅱは月15単位、加算Ⅲは月20単位です。いずれも月単位の算定で、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲは同月内に1つだけ算定可能です(重複算定不可)。

Q2. 加算Ⅱと加算Ⅲのアウトカム要件の違いは何ですか?

加算Ⅱは「排尿または排便の改善(A)」または「おむつ離脱(B)」のいずれか一方を満たせば算定可能です。一方、加算Ⅲは「A」かつ「B」の両方を同時に達成する必要があります。Ⅲの方がより厳格なアウトカム評価となります。

Q3. 看護小規模多機能型居宅介護(看多機)でも算定できますか?

はい、令和6年度改定により看多機が対象サービスに追加されました。現在の対象サービスは、介護老人福祉施設(特養)、地域密着型介護老人福祉施設、介護老人保健施設(老健)、介護医療院、看護小規模多機能型居宅介護の5種類です。

Q4. LIFEへの提出頻度はどれくらいですか?

少なくとも3か月に1回、別紙様式6「排せつの状態に関するスクリーニング・支援計画書」の各項目をLIFEへ提出する必要があります。提出期限は原則として該当月翌月10日までです。褥瘡マネジメント加算(Ⅱ)と同じ提出スケジュールです。

Q5. 別紙様式6の評価項目は何項目ありますか?

別紙様式6の主要な評価項目は、①排尿の状態(4段階)、②排便の状態(4段階)、③おむつ使用の有無、④ポータブルトイレ使用の有無、⑤尿道カテーテル使用の有無、⑥人工肛門使用の有無の6項目です。排尿・排便の状態は「介助されていない/見守り等/一部介助/全介助」の4段階で評価します。

Q6. 30日以上のサービス利用中断があった場合はどうなりますか?

30日以上のサービス利用中断が決定した時点で、「サービス利用終了時」として入院までの期間で最新の評価データをLIFEへ提出します。全項目の評価ができていなかった場合でも、評価が出来ている項目のデータをLIFEへ提出することで加算の算定が可能です(やむを得ない場合に該当)。

Q7. 専従・専任の職員配置は必要ですか?

排せつ支援加算には専従・専任の職員配置要件はありません。ただし、医師(または医師と連携した看護師)・介護支援専門員・支援対象者の特性を把握している介護職員による多職種協働での評価・支援計画作成が必須です。必要に応じて薬剤師・管理栄養士・理学療法士・作業療法士を加えます。

Q8. 褥瘡マネジメント加算や科学的介護推進体制加算と併算定できますか?

科学的介護推進体制加算(Ⅰ・Ⅱ)とは併算定可能です。褥瘡マネジメント加算(Ⅰ・Ⅱ)とは利用者単位で要件を満たせば併算定可能ですが、自立支援促進加算(老健・介護医療院向け)との関係は留意が必要です。詳細は科学的介護推進体制加算の記事もご参照ください。

関連書式・関連記事

利用できる書式

排せつ支援加算に関連する書式は以下のとおりです。

書式名 用途 当サイトの提供状況
排せつの状態に関するスクリーニング・支援計画書(別紙様式6) 評価・LIFE提出・支援計画を一体管理(厚労省公式書式) Excel / Word
多職種カンファレンス記録 支援計画作成・見直しの議事録 書式07(Excel)・書式15(Excel)を流用可

書式整備のご相談:別紙様式6の施設向けカスタマイズや、排せつ支援加算の算定フロー整備についてお困りの場合は、お気軽にお問い合わせください。

LIFEシリーズ関連記事

参考文献

  • 厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(老老発0315第4号、令和6年3月15日)
  • 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(令和6年3月)
  • 厚生労働省「指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(老企第40号)
  • 介護給付費単位数表(令和6年度改定)告示第95号 七十一の三
  • 厚生労働省「LIFE(科学的介護情報システム)」公式サイト https://life.mhlw.go.jp/

免責事項:本記事は令和6年度介護報酬改定時点の情報に基づき作成しています。算定に際しては必ず最新の厚生労働省告示・通知・疑義解釈をご確認の上、各施設の状況に応じてご判断ください。具体的な算定可否の判断については、管轄の国保連合会や都道府県の担当窓口にご確認ください。