この記事では、介護老人福祉施設(特養)・介護老人保健施設(老健)・介護医療院・看護小規模多機能型居宅介護(看多機)を対象に、褥瘡マネジメント加算(Ⅱ)の算定要件・アウトカム評価の3パターン・DESIGN-R®2020による褥瘡状態評価・LIFE提出フローを解説します。

令和6年度改定でアウトカム評価に「治癒」が追加され、対象サービスに看多機が追加されました。改定の新旧対照・別紙様式5の評価項目・実務上の注意点までを実務者向けに整理しています。

褥瘡マネジメント加算(Ⅱ)算定要件とDESIGN-R®2020評価【令和6年度改定】

褥瘡マネジメント加算とは(LIFE提出加算の概要)

褥瘡マネジメント加算は、施設入所者・利用者の褥瘡発生リスクを定期的に評価し、多職種が協働して褥瘡ケア計画を作成・実施することで、褥瘡の発生・悪化を予防することを評価する介護報酬上の加算です。

科学的介護情報システム(LIFE)への情報提出を要件とする「LIFE関連加算」のひとつであり、LIFEからのフィードバックをケアの改善に活かすPDCAサイクルの実践が求められます。

平成30年度改定で創設され、令和3年度改定でⅠ・Ⅱの2区分に整理されました。令和6年度改定では、加算Ⅱのアウトカム評価に「治癒」が追加され、対象サービスに看護小規模多機能型居宅介護(看多機)が加わりました。

ポイント:加算Ⅰはリスク評価・ケア計画・LIFE提出という「プロセス」を評価します。加算Ⅱはそれに加えて褥瘡が発生しなかった・治った・再発しなかったという「アウトカム(結果)」を評価します。ⅠとⅡは同月内に同時算定できません。

褥瘡マネジメント加算の単位数と対象施設(令和6年度改定対応)

区分 単位数 評価軸 対象サービス
褥瘡マネジメント加算(Ⅰ) 月3単位 プロセス評価(リスク評価・ケア計画・LIFE提出) ・介護老人福祉施設(特養)
・地域密着型介護老人福祉施設
・介護老人保健施設(老健)
・介護医療院
・看護小規模多機能型居宅介護(看多機)※令和6年度追加
褥瘡マネジメント加算(Ⅱ) 月13単位 アウトカム評価(褥瘡の発生なし/治癒した/再発なし)

注意:加算Ⅰと加算Ⅱは同月内に同時算定できません。アウトカム要件を達成した月は加算Ⅱを算定し、達成できなかった月は加算Ⅰを算定するという「月別の切り替え」が基本的な運用です。

加算Ⅰと加算Ⅱの違い(プロセス評価 vs アウトカム評価)

項目 加算Ⅰ(月3単位) 加算Ⅱ(月13単位)
評価の考え方 プロセス評価(取り組みの質) アウトカム評価(結果の質)
算定できる月 要件を満たす全月 アウトカム要件を達成した月のみ
LIFE提出 必須 必須(Ⅰの要件を前提として含む)
ケア計画の作成 必須 必須(Ⅰの要件を前提として含む)
褥瘡発生・治癒の条件 問わない 発生なし/治癒/再発なし のいずれかが必要
Ⅰ・Ⅱの同月算定 不可(どちらか一方のみ)

褥瘡マネジメント加算Ⅱのアウトカム要件(3パターン整理)

加算Ⅱは、加算Ⅰの要件をすべて満たしたうえで、下記の3つのパターンのうちいずれかを達成した月に算定できます。

パターン 対象者 算定できる条件 令和6年度改定
① 発生予防 入所時にリスクありと評価された利用者(褥瘡なし) 利用開始月の翌月以降の評価で、「持続する発赤(d1)以上」の褥瘡の発症がない 改定前から存在
② 治癒 入所時にすでに褥瘡があった利用者 入所時に存在した褥瘡が治癒した 令和6年度改定で追加
③ 再発予防 入所時に褥瘡があり、治癒した利用者 治癒後に再発がない 改定前から存在

ポイント:アウトカム判定の基準となる「持続する発赤(d1)」とは、DESIGN-R®2020の「深さ」区分のうち「d1:持続する発赤」を指します。d1以上(d1・d2・D3・D4・D5・DTI・DU)の褥瘡が新たに発生した場合、その月は加算Ⅱを算定できません。

補足:入所後に褥瘡が発生した月・および褥瘡が治癒するまでの期間は加算Ⅱを算定できません。治癒後に再発がなければ、再度パターン③として加算Ⅱの算定が可能になります。

加算Ⅰの算定要件(褥瘡対策のプロセス要件7項目)

加算Ⅱを算定するにはまず加算Ⅰの全要件を満たす必要があります。加算Ⅰの要件は以下の7項目です。

  1. リスク評価:入所時または利用開始時に、全利用者の褥瘡の有無とリスクを評価する
  2. 継続評価:少なくとも3か月に1回、全利用者を対象にリスク評価を継続する
  3. 多職種協働のケア計画作成:医師・看護師・管理栄養士・介護職員・介護支援専門員等が共同で、褥瘡またはリスクありの利用者ごとに褥瘡ケア計画を作成する
  4. 実施と記録:ケア計画に従い褥瘡管理を実施し、内容と利用者の状態を定期的に記録する
  5. 計画の見直し:少なくとも3か月に1回、褥瘡ケア計画を見直す
  6. LIFE提出:評価結果等を厚生労働省(LIFE)に提出する
  7. フィードバック活用:LIFEからのフィードバックを褥瘡管理に活用する

褥瘡対策スクリーニング・ケア計画書(別紙様式5)の評価項目

褥瘡のリスク評価は、厚生労働省「褥瘡対策に関するスクリーニング・ケア計画書(別紙様式5)」の評価項目に基づいて行います。以下の項目のうちひとつでも「あり(できない)」に該当する場合は、褥瘡ケア計画の作成対象となります。

評価項目 評価の概要 備考
日常生活自立度 B2〜C2に該当(寝たきり・ほぼ寝たきり) J・A判定は基本的に対象外
基本的動作能力 寝返り・座位保持・立位保持等の自力動作が困難 自力で体位変換できない場合はリスクあり
病的骨突出 仙骨・坐骨・尾骨・大転子・踵部等の骨突出 低栄養による痩せとの関連に注意
関節拘縮 拘縮の有無 体位変換が困難になり圧迫が生じやすい
栄養状態低下 低栄養の有無(BMI・アルブミン値等) 管理栄養士との連携ポイント
皮膚湿潤 多汗・失禁等による皮膚の湿潤状態 スキンケアの介入根拠となる
浮腫 局所以外の浮腫の有無 全身性浮腫が対象(局所浮腫は除く)
皮膚の脆弱性 スキンテア歴・脆弱肌の有無 平成30年度改定で追加された項目

評価頻度は、入所時(利用開始時)および少なくとも3か月に1回です。状態変化時は都度評価することが望ましいとされています。

DESIGN-R®2020による褥瘡状態評価(点数表)

褥瘡がある利用者の状態評価には、日本褥瘡学会が定める「改定DESIGN-R®2020」を用います。LIFEへの提出でもこの評価スケールに準拠します。7項目を評価し、深さ(D)を除いた6項目の合計点で重症度を判定します。

項目 記号 スコア(軽症 → 重症) 備考
深さ Depth d/D d0 / d1 / d2 / D3 / D4 / D5 / DTI / DU 合計点に加算しない
滲出液 Exudate E e0(0) / e1(1) / e3(3) / E6(6) 最大6点
大きさ Size S s0(0) / s3(3) / s6(6) / s8(8) / s9(9) / s12(12) / S15(15) 長径×短径(cm²)で判定。最大15点
炎症/感染 Inflammation/Infection I i0(0) / i1(1) / I3(3) / I3C(3) / I9(9) 最大9点
肉芽組織 Granulation G g0(0) / g1(1) / g3(3) / G4(4) / G5(5) / G6(6) 最大6点
壊死組織 Necrotic tissue N n0(0) / N3(3) / N6(6) 最大6点
ポケット Pocket P p0(0) / P6(6) / P9(9) / P12(12) / P24(24) 長径×短径(cm²)で判定。最大24点

合計点(深さを除く6項目)は0点〜66点で、点数が大きいほど褥瘡の重症度が高いことを示します。

補足:DESIGN-R®2020は2020年に改定されたバージョンです。以前使用していた「DESIGN-R(2008年版)」は現在は使用されていません。LIFEへの提出・評価はDESIGN-R®2020に準拠していることをご確認ください。

LIFEへの提出要件(様式・提出項目・頻度)

提出様式

褥瘡マネジメント加算のLIFE提出には、厚生労働省が定める「褥瘡対策に関するスクリーニング・ケア計画書(別紙様式5)」を使用します。

提出項目(利用者の状態による区別)

対象者 提出必要な項目
全利用者 基本情報 / 褥瘡の有無 / 危険因子の評価(リスク評価8項目)
褥瘡ありの利用者 上記に加え、褥瘡の状態の評価(DESIGN-R®2020)および褥瘡ケア計画(自由記載部分を除く)も提出

提出頻度と期限

  • 入所時(利用開始時)+ 少なくとも3か月に1回
  • 状態変化によりリスク評価を行った場合は、その月も提出が必要
  • 提出期限:原則として当該月の翌月10日まで

注意:令和6年度改定に伴いLIFEシステムが更改されました(令和6年7月末頃に新システム運用開始)。令和6年4月〜7月のサービス提供分データは、令和6年10月10日まで提出期限が延長されました。最新の厚生労働省通知をご確認ください。

多職種連携体制(必須職種を明示)

褥瘡ケア計画の作成・実施・見直しは、複数の職種が協働して行うことが算定要件として求められています。施設内で以下の体制を整備してください。

職種 主な関与内容 関与の程度
医師 褥瘡管理の医学的判断・治療方針の決定・ケア計画への関与 必須
看護師 皮膚状態のアセスメント・DESIGN-R®評価・処置・ケア計画の中心的担当 必須
管理栄養士 栄養状態の評価・低栄養への介入・褥瘡治癒を促す栄養ケア計画の作成 必須
介護職員 体位変換・スキンケアの日常的な実施・皮膚観察・記録 必須
介護支援専門員 ケアプランへの褥瘡ケア目標の反映・家族との連絡調整 必須
理学療法士・作業療法士 体位保持・ポジショニング・ADL評価への協力 必要に応じて関与
薬剤師 外用薬(褥瘡処置薬)の管理・相互作用確認 必要に応じて関与

ポイント:専従・専任の配置要件は特に定められていませんが、多職種が「共同で」ケア計画を作成することが要件です。カンファレンスの開催記録・出席者リスト・議事録を残しておくことが、算定根拠として重要です。

令和6年度改定の主な変更点(新旧対照)

変更項目 改定前(令和5年度まで) 改定後(令和6年度〜)
加算Ⅱのアウトカム評価対象 ① 褥瘡の発生なし(発生予防)
③ 治癒後の再発なし(再発予防)の2パターン
① 発生予防 ② 治癒そのもの(新規追加) ③ 再発予防 の3パターン
対象サービスの追加 特養・地密特養・老健・介護医療院 上記に加え看護小規模多機能型居宅介護(看多機)を追加
LIFE様式の整理 加算ごとに個別定義された様式 評価項目・選択肢が他のLIFE加算と共通化・整理
初回提出タイミングの柔軟化 入所時に提出 他のLIFE加算と同月にまとめて提出可(柔軟化)
介護医療院の位置づけ 「褥瘡対策指導管理」として別枠算定 要件が整理され、本加算の枠組みとの関係が明確化

令和6年度改定の重要ポイント:これまで「治癒した褥瘡」はアウトカムとして評価されていませんでした。改定後は「治癒した月」も加算Ⅱの算定根拠となります。入所時から褥瘡があった利用者の治癒を目標にしたケアが、より積極的に評価されるようになりました。

算定上の注意点・実務ポイント

1. アウトカム達成月の正確な把握

加算Ⅱは「アウトカムを達成した月のみ」算定できます。毎月の状態評価を確実に行い、達成月・非達成月を正確に記録・管理することが必要です。

2. 入所時褥瘡の写真記録を残す

入所時に褥瘡があった場合は、DESIGN-R®2020による評価とあわせて写真記録を残しておくことが重要です。治癒判定の根拠として、また入所後の新規発生でないことの証明として活用できます。

3. 評価者間のばらつき防止

DESIGN-R®2020の評価には経験が必要です。評価者によって点数がばらつかないよう、施設内で定期的な研修・評価事例のケーススタディを実施してください。

4. LIFE提出の月次スケジュール管理

3か月ごとの提出スケジュールを施設内の管理表で一元管理し、提出漏れを防いでください。他のLIFE関連加算の提出タイミングと合わせることで業務効率化が図れます。

5. 多職種カンファレンスの記録

ケア計画の作成・見直し時には必ず議事録(出席者・日付・内容・合意事項)を残してください。実地指導・監査時の算定根拠として必要です。

注意:LIFEへの提出を忘れた月については、加算Ⅰ・Ⅱともに算定の根拠が失われます。提出期限(翌月10日)を過ぎた場合の扱いについては、施設の所在する都道府県の国保連・介護保険審査委員会に確認してください。

同時算定の可否(他加算との関係)

組み合わせ 同時算定 備考
褥瘡マネジメント加算Ⅰ + Ⅱ(同月) 不可 どちらか一方のみ。アウトカム達成月はⅡ、それ以外の月はⅠ
科学的介護推進体制加算(Ⅰ・Ⅱ) 可 別の要件に基づく加算。LIFE提出スケジュールを合わせて管理する
排せつ支援加算 可(要件確認) 対象・要件が異なるが、同一利用者でも両要件を満たせば算定可
自立支援促進加算(老健・介護医療院) 可(要件確認) 対象・要件が異なる。各加算の要件を個別に確認すること

よくある質問(FAQ)

Q1. 褥瘡マネジメント加算(Ⅱ)の単位数は何単位ですか?

褥瘡マネジメント加算(Ⅱ)は月13単位です。アウトカム要件(褥瘡の発生なし/治癒/再発なし のいずれか)を達成した月のみ算定できます。プロセス評価のみの加算(Ⅰ)は月3単位です。

Q2. 加算Ⅰと加算Ⅱは同じ月に同時算定できますか?

いいえ、同月内に同時算定はできません。アウトカム要件を達成した月は加算Ⅱを、達成できなかった月は加算Ⅰを算定するという月別の切り替え運用となります。

Q3. 令和6年度改定で追加された「治癒」のアウトカム評価とは何ですか?

令和6年度改定で、入所時にすでに褥瘡があった利用者について、当該褥瘡が治癒した月も加算Ⅱのアウトカム要件として認められるようになりました。改定前は「発生予防」と「再発予防」の2パターンのみでしたが、改定後は「治癒」を含む3パターンに整理されています。

Q4. 看護小規模多機能型居宅介護(看多機)でも算定できますか?

はい、令和6年度改定から看多機が対象サービスに追加されました。特養・地密特養・老健・介護医療院と同様に、加算Ⅰ・Ⅱのいずれも算定可能です。

Q5. DESIGN-R®2020で「持続する発赤(d1)以上」とは具体的に何を指しますか?

DESIGN-R®2020の「深さ」区分のうち、d1(持続する発赤)・d2(真皮までの損傷)・D3〜D5(皮下組織以下の損傷)・DTI(深部組織損傷疑い)・DU(深さ判定不能)を指します。これらの褥瘡が新たに発生した月は、加算Ⅱの「発生予防」アウトカムを満たせません。

Q6. LIFE提出の頻度はどのくらいですか?

原則として入所時(利用開始時)と少なくとも3か月に1回の頻度で提出します。提出期限は当該月の翌月10日までです。状態変化により評価を行った場合は、その月も提出が必要です。

Q7. 褥瘡対策に関するスクリーニング・ケア計画書(別紙様式5)の評価項目は何項目ありますか?

別紙様式5の危険因子評価は8項目です。日常生活自立度・基本的動作能力・病的骨突出・関節拘縮・栄養状態低下・皮膚湿潤・浮腫・皮膚の脆弱性が評価対象となります。1項目でも「あり(できない)」に該当すれば、褥瘡ケア計画の作成対象となります。

Q8. 科学的介護推進体制加算と褥瘡マネジメント加算は併算定できますか?

はい、両加算は同月内で併算定可能です。要件・LIFE提出様式が異なるため、両加算を併算定する場合はLIFE提出スケジュールを合わせて管理することで業務効率化を図れます。詳しくは科学的介護推進体制加算の算定要件解説記事をご参照ください。

関連書式・関連記事

関連書式(ダウンロード)

褥瘡マネジメント加算の実務で役立つ書式を提供しています。

補足:記入例は架空事例「山田太郎さん(83歳・男性・要介護5・特養入所中・脳梗塞後遺症で寝たきり)」を用いた仙骨部褥瘡(d2/DESIGN-R®2020合計8点)のケースで、DESIGN-R®2020の各項目判定と多職種ケア計画の書き方を確認できます。

LIFEシリーズ 関連記事(褥瘡マネジメント加算と併算定可)

参考文献

  • 厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(老老発0315第4号、令和6年3月15日)
  • 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(令和6年3月)
  • 厚生労働省「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第39号)関連告示
  • 令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1〜Vol.10)(令和6年3月〜)
  • 日本褥瘡学会「改定DESIGN-R®2020 コンセンサス・ドキュメント」(2020年)
  • 厚生労働省「LIFE(科学的介護情報システム)」公式サイト https://life.mhlw.go.jp/

免責事項:本記事は令和6年度介護報酬改定時点の情報に基づいています。算定要件の詳細・解釈については、厚生労働省の告示・通知・Q&Aの最新版を必ずご確認ください。実際の算定にあたっては、施設の所在する都道府県・市町村の介護保険担当部署にもお問い合わせいただくことをお勧めします。