令和8年(2026年)6月1日施行の診療報酬改定で、在宅医療充実体制加算が新設されました。これは従来の「在宅緩和ケア充実診療所・病院加算」を見直し、緩和ケアだけでなく重症患者・看取り・小児在宅などを地域で支える在宅医療提供体制全体を評価する加算へと再編したものです。在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料に上乗せして算定します。本記事は、加算の位置づけ・主な施設基準と人員配置・点数の考え方に加え、現場で関心の高い「重症患者割合要件の緩和」(重度認知症患者への対応で2割→1割5分)と訪問診療患者数のカウント緩和を、在宅療養支援診療所・病院向けに整理した実務解説です。

📋 在宅医療の改定の全体像:令和8年度改定の在宅・介護連携の変更点は「在宅医療・介護連携の改定(記事10)」、施行スケジュールは「診療報酬改定2026 完全ガイド」で確認できます。6月1日施行の届出・チェックは「6月1日施行 直前チェックリスト(記事64)」もご覧ください。

このページの要点:

  • 新設加算:在宅医療充実体制加算は、旧「在宅緩和ケア充実診療所・病院加算」を再編した令和8年度の新設加算。在総管・施設総管への上乗せ。
  • 重症患者割合の緩和:原則は重症患者割合2割以上。重度認知症患者(認知症自立度IV・M)へ適切に対応する場合は1割5分以上に緩和(疑義解釈その4 → 令和8年5月29日訂正通知で施設基準に反映)。
  • 訪問診療患者数のカウント緩和:常勤換算医師1人当たり100人以下の基準で、単一建物2人以上の加算対象患者・月1回訪問の患者は70人を上限に0.5人として計算できる。

§1 在宅医療充実体制加算とは(新設の背景)

在宅医療充実体制加算は、令和8年度改定で新設された加算です。従来の「在宅緩和ケア充実診療所・病院加算」が緩和ケアの実績を中心に評価していたのに対し、本加算は重症患者の受け入れ・緊急往診・看取り・地域連携といった在宅医療提供体制全体を評価する内容に再編されました。背景には、在宅医療のニーズ増加に対し、「24時間体制で重症患者を実際に支えている医療機関を手厚く評価する」という政策意図があります。

あわせて、機能強化型在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)の評価が、自院の医師による往診・在宅医療提供の確保度合いに応じてA(高い評価)・B(低い評価)の2区分に整理されました。本加算は、こうした在宅医療の体制評価の見直しと一体で導入されています。

算定の位置づけ:在宅医療充実体制加算は単独で算定する点数ではなく、在宅時医学総合管理料(在総管)・施設入居時等医学総合管理料(施設総管)に上乗せして算定する加算です。算定するには在支診・在支病としての届出に加え、本加算の施設基準を満たす届出が必要です。

§2 主な施設基準と人員配置

在宅医療充実体制加算は、機能強化型在支診・在支病であることを前提に、在宅医療の実績と体制を求めます。主な要件は次のとおりです(詳細は通知で必ず確認してください)。

区分 主な要件(概要)
人員配置 在宅医療を担当する医師が常勤換算3名以上、かつ常勤医師2名以上
体制 機能強化型の在支診・在支病であって、自院単独で24時間の連絡体制・往診体制を確保していること
実績(過去1年) 緊急往診の実績30件以上、かつ看取りの実績と小児在宅患者数の合計が30件以上
緩和ケア体制 緩和ケア研修を修了した常勤医師が在宅医療を担当。加えて、緩和ケア病棟または在宅での年間看取り10件以上の医療機関で3か月以上の勤務歴がある常勤医師が在宅医療を担当していること
オピオイド対応の実績 患者自らが注射でオピオイド系鎮痛薬を注入する鎮痛療法を過去1年に2件以上、または過去に5件以上実施した経験のある常勤医師を配置し、オピオイド系鎮痛薬の投与実績を過去1年に10件以上
重症患者割合 在宅医療を提供する患者のうち、別表第8の2の重症度の高い患者と終末期の患者の合計が原則2割以上(緩和規定は第4章参照)
訪問診療患者数 訪問診療を担当する常勤換算医師1人当たりの実患者数が100人以下(カウント緩和は第5章参照)
ICT・連携/教育・データ 在宅医療情報連携加算の届出を行っていること。過去2年度以内に地域医療実習生・研修医・専攻医の受入等の教育実績があること。在宅データ提出加算の届出を行っていることが望ましい

⚠️ 人員配置は「常勤換算」と「常勤実数」の両方に注意:「常勤換算3人以上」と「常勤2人以上」は別の数え方です。非常勤を組み合わせて常勤換算3人を満たしても、常勤医師が2人いなければ要件を満たしません。さらに緩和ケア研修修了医師の配置も必要です。届出前に医師ごとの勤務形態・研修修了状況を整理しておきましょう。

§3 点数(旧加算から倍増)

在宅医療充実体制加算は、旧「在宅緩和ケア充実診療所・病院加算」の点数をおおむね倍増させた評価です。在総管・施設総管では単一建物診療患者の人数区分ごとに点数が設定され、往診加算・ターミナルケア加算・在宅がん医療総合診療料にも上乗せ区分があります。

在総管(単一建物1人)
400点 → 800点
施設総管(単一建物1人)
300点 → 600点
在宅ターミナルケア加算
1,000点 → 2,000点
加算対象 単一建物診療患者 現行(旧加算) 改定後(新加算)
在宅時医学総合管理料 1人 400点 800点
2〜9人 200点 400点
10〜19人 100点 200点
20〜49人 85点 170点
50人以上(上記以外) 75点 150点
施設入居時等医学総合管理料 1人 300点 600点
2〜9人 150点 300点
10〜19人 75点 150点
20〜49人 63点 126点
50人以上(上記以外) 56点 112点
緊急往診加算・夜間休日往診加算・深夜往診加算 — 100点 200点
在宅ターミナルケア加算 — 1,000点 2,000点
在宅がん医療総合診療料 — 150点 300点

出典:上記点数は厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要(8. 質の高い在宅医療の推進)」の新旧対照にもとづきます。算定にあたっては、令和8年厚生労働省告示第71号(特掲診療料の施設基準等)・診療報酬点数表・保医発0305第8号の原文もあわせてご確認ください。

§4【注目】重症患者割合要件の緩和(重度認知症患者への対応)

本加算の施設基準のうち、現場で特に関心が高いのが重症患者割合要件です。原則は2割以上ですが、令和8年度改定では重度認知症患者へ適切に対応している場合に1割5分以上へ緩和する規定が設けられました。この取扱いは疑義解釈(その4・令和8年4月21日)で示され、令和8年5月29日付の訂正通知で施設基準の通知本体に反映されています。

原則
2割以上
→
重度認知症対応(2条件充足)で緩和
1割5分以上
項目 内容
原則 重症患者割合 2割(20%)以上
緩和後 下の2条件をいずれも満たす場合、1割5分(15%)以上で基準を満たすとみなす
条件① 「適切なケアを行う重度認知症患者」の延べ診療月数の割合が8%以上
条件② そのうち在宅時医学総合管理料を算定する患者の割合が4%以上

「適切なケアを行う重度認知症患者」とは:認知症高齢者の日常生活自立度がランクIVまたはMに該当する患者で、介護者への助言や療養方針に関する本人・介護者との意思決定支援を継続的に行い、かつ直近3か月以内に関係機関との間で情報を共有し連絡調整を行った患者を指します。単に重度認知症であるだけでなく、意思決定支援と多機関連携の実態が求められる点に注意してください。

📌 一次情報の確認先:この緩和規定は「疑義解釈資料の送付について(その4)」(令和8年4月21日)で示され、「令和8年度診療報酬改定関連通知及び官報掲載事項の一部訂正について」(令和8年5月29日 保険局医療課事務連絡)で施設基準の通知に正式に盛り込まれました。算定にあたっては両方の原文をご確認ください。

§5 訪問診療患者数のカウント緩和

在宅医療の提供体制に関する基準として、訪問診療を担当する常勤換算医師1人当たりの実患者数を100人以下とする要件があります。令和8年度改定では、この患者数のカウント方法に緩和が設けられました。

0.5人カウントの緩和:次のいずれかに該当する患者は、70人を上限として「0.5人」として計算できます。

  • 単一建物診療患者が2人以上の場合の点数を算定する患者
  • 月1回の訪問診療を行っている患者

これにより、施設等の複数患者をまとめて訪問するケースや、状態が安定し月1回訪問の患者が多い医療機関では、実態に即した形で患者数基準を満たしやすくなります。

⚠️ 「70人を上限に」の意味:0.5人カウントが適用できるのは70人までです。それを超える分は0.5人換算の対象外になります。自院の患者構成(単一建物の人数区分・訪問頻度)を整理し、どの患者が0.5人カウントの対象になるかを正確に把握してください。

§6 算定にあたっての実務チェック

  • ☐ 機能強化型在支診・在支病(A/B区分)としての届出状況を確認したか
  • ☐ 在宅医療担当医師の常勤換算3人以上・常勤2人以上・緩和ケア研修修了医師を満たすか
  • ☐ 過去1年の緊急往診・在宅看取りの実績件数を集計したか
  • ☐ 重症患者割合を算出したか(2割未満の場合、重度認知症の緩和規定の対象か)
  • ☐ 重度認知症患者について、意思決定支援・直近3か月の多機関連携の記録を残しているか
  • ☐ 訪問診療患者数のカウント(0.5人・70人上限)を反映して100人以下を確認したか
  • ☐ 在総管・施設総管の点数・人数区分を最新の告示で確認したか

📄 届出書式:施設基準の届出には共通様式の診療報酬改定届出書(Excel・書式01)を無料でご利用いただけます。加算固有の様式は厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」および各地方厚生(支)局のページから取得してください。9月30日までの経過措置がある項目は「経過措置タイムライン(記事69)」で期限を確認しましょう。

§7 よくある質問(FAQ)

Q. 在宅医療充実体制加算は単独で算定できますか?
A. いいえ。在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料に上乗せして算定する加算です。在総管・施設総管を算定する患者について、施設基準を満たした上で加算します。

Q. 重症患者割合が2割に届きません。算定できないのですか?
A. 重度認知症患者へ適切に対応している場合、「適切なケアを行う重度認知症患者の延べ診療月数の割合が8%以上」かつ「そのうち在総管算定患者の割合が4%以上」の2条件を満たせば、1割5分以上で基準を満たすとみなされます。記録の整備が前提になります。

Q. 「適切なケアを行う重度認知症患者」はどう判断しますか?
A. 認知症高齢者の日常生活自立度がランクIVまたはMに該当し、本人・介護者への意思決定支援を継続的に行い、直近3か月以内に関係機関と情報共有・連絡調整を行った患者です。自立度の判定と支援・連携の記録を残しておく必要があります。

Q. 旧「在宅緩和ケア充実診療所・病院加算」を算定していました。自動的に新加算になりますか?
A. 自動移行ではありません。新設の在宅医療充実体制加算の施設基準を満たし、改めて届出が必要です。要件が再編されているため、自院が新基準を満たすかを確認してください。

§8 まとめ

在宅医療充実体制加算は、在宅医療提供体制を手厚く評価する令和8年度の新設加算です。算定のポイントは次のとおりです。

  1. 前提:機能強化型在支診・在支病であり、常勤換算3人以上・常勤2人以上・緩和ケア研修修了医師を配置。
  2. 実績:緊急往診・在宅看取りなどの実績要件を満たす。
  3. 重症患者割合:原則2割。重度認知症対応の2条件(延べ診療月数8%以上+在総管4%以上)で1割5分に緩和。
  4. 患者数カウント:単一建物2人以上・月1回訪問の患者は70人上限で0.5人換算。
  5. 点数:旧加算から倍増。在総管 単一建物1人800点・施設総管600点ほか、往診加算200点・ターミナルケア加算2,000点などに上乗せ。

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参考文献・一次情報

  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
  • 令和8年度診療報酬改定の概要「8. 質の高い在宅医療の推進」(厚生労働省保険局医療課)
  • 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日 保医発0305第8号)
  • 特掲診療料の施設基準等(令和8年厚生労働省告示第71号)
  • 疑義解釈資料の送付について(その4/令和8年4月21日)— 重症患者割合要件の緩和
  • 令和8年度診療報酬改定関連通知及び官報掲載事項の一部訂正について(令和8年5月29日 保険局医療課事務連絡)— 緩和規定の施設基準への反映

※ 本記事は令和8年6月1日施行時点の情報にもとづく実務解説です。本文中の点数は厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要」の新旧対照にもとづきますが、算定にあたっては告示・通知・疑義解釈の原文を必ずご確認ください。判断に迷う場合は管轄の地方厚生(支)局へご確認ください。