令和8年度診療報酬改定(令和8年6月1日施行)では、在宅医療・介護連携分野において重症患者の訪問診療・在宅看取りへの重点評価が強化されました。在宅患者訪問診療料の小幅な引き上げ、居宅療養管理指導料の整理、協力医療機関との連携要件の変更など、実務に直結する改定ポイントを整理しています。各点数は令和8年厚生労働省告示第69号にもとづき記載していますが、一部項目については現時点で詳細が未確認のため「⚠️ 要確認」と明示しています。最新通知を必ず参照の上、算定判断を行ってください。

施行日:令和8年6月1日(一部項目は経過措置あり)。本記事は令和8年3月5日付告示・通知および令和8年4月1日付疑義解釈その2にもとづいて執筆しています。

1. 在宅医療の全体的な改定方針

令和8年度改定では、「重症・複合的ニーズを持つ患者への在宅医療の充実」が主要テーマの一つとして設定されました。具体的には以下の方針が示されています。

  • 在宅での看取り・ターミナルケアに関する評価の維持・充実
  • 多職種連携(医師・薬剤師・管理栄養士・訪問看護師等)によるチーム医療の推進
  • 医療と介護の連続性を担保するための協力医療機関要件の明確化
  • ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の推進と適切な意思決定支援の評価

在宅医療の点数は全体として小幅な引き上げが行われています。大幅な制度改変よりも要件の明確化・整理が中心であり、すでに適切な算定を行っている施設は引き続き同様の運用が可能です。

今回の改定のポイント:令和8年度改定では「算定要件の大幅変更」よりも「要件の明確化と点数の微調整」が中心です。現在の算定内容を一度整理し、要件を満たしているか確認することが重要です。

2. 在宅患者訪問診療料・往診料の変更

在宅患者訪問診療料(Ⅰ)について、令和8年度改定で小幅な点数引き上げが行われました。往診料については変更がありません。

在宅患者訪問診療料(Ⅰ)(C001)の改定前後比較

区分 令和6年度(改定前) 令和8年度(改定後) 増減
訪問診療料1
同一建物居住者以外
888点 890点 +2点
訪問診療料1
同一建物居住者
213点 215点 +2点
訪問診療料2
同一建物居住者以外
884点 886点 +2点
訪問診療料2
同一建物居住者
187点 189点 +2点

出典:令和8年厚生労働省告示第69号(医科点数表)

往診料(C000)

区分 令和6年度 令和8年度
往診料 720点 720点(変更なし)

補足:訪問診療料1(C001の1)は在宅療養中の患者へ計画的な医学管理のもとに定期訪問する場合、訪問診療料2(C001の2)は在宅時医学総合管理料等の算定要件を満たす他医療機関から紹介された患者に訪問する場合に適用されます。詳細は保医発0305第6号をご確認ください。

3. 訪問看護関連の変更点

⚠️ 要確認:訪問看護基本療養費の詳細な点数変化については、訪問看護療養費の告示(令和8年厚生労働省告示第70号等)および関連通知を直接ご確認ください。本記事では訪問看護に特化した内容については方向性のみ記載しています。

訪問看護に関しては、以下の方向性が示されています。

  • 医療ニーズの高い患者(重症・がん終末期・小児等)への訪問看護の評価強化
  • 訪問看護ステーションと病院・診療所との連携推進
  • 24時間対応体制に関する加算要件の見直し(詳細は最新通知を参照)

4. 在宅医療と介護報酬の連動部分(協力医療機関連携)

介護保険施設(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設等)と医療機関の連携については、令和6年度介護報酬改定ですでに協力医療機関の確保が義務付けられています。令和8年度の診療報酬改定では、医療側からの連携評価に関する整理が行われました。

⚠️ 要確認:協力医療機関連携加算の令和6年度から令和8年度にかけての詳細変更(算定要件・カンファレンス頻度・対象施設の範囲)については、保医発0305第6号および関連通知の詳細確認が必要です。算定前に必ず最新通知をご確認ください。

協力医療機関に関する主な要件の方向性

項目 内容
対象 介護保険施設・特定施設等と協力関係にある病院・診療所
連携内容 入退院時の情報共有、緊急時の対応、定期的なカンファレンスへの参加
カンファレンス 協力医療機関の医師・スタッフが参加する多職種会議(頻度・形式は要確認)
記録 連携内容・カンファレンス記録の適切な保管

実務アドバイス:協力医療機関としての役割を担う病院・診療所は、カンファレンスへの参加記録と情報提供の実績を適切に管理することが重要です。当サイトのカンファレンス記録書(Excel)をご活用ください。

5. 居宅療養管理指導の変更

居宅療養管理指導料は、医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士等が訪問して療養上の管理や指導を行う場合に算定します。令和8年度改定での変更点は以下のとおりです。

在宅患者訪問薬剤管理指導料(C008)

区分 令和6年度 令和8年度
単一建物診療患者1人 650点 650点(変更なし)
単一建物診療患者2〜9人 320点 320点(変更なし)
単一建物診療患者10人以上 290点 290点(変更なし)

在宅患者訪問栄養食事指導料(C009)

区分 令和6年度 令和8年度
訪問栄養食事指導料1(単一建物1人) 530点 530点(変更なし)
訪問栄養食事指導料1(2〜9人) 480点 480点(変更なし)
訪問栄養食事指導料1(10人以上) 440点 440点(変更なし)
訪問栄養食事指導料2(単一建物1人) 510点 510点(変更なし)
訪問栄養食事指導料2(2〜9人) 460点 460点(変更なし)
訪問栄養食事指導料2(10人以上) 420点 420点(変更なし)

出典:令和8年厚生労働省告示第69号(医科点数表)・令和6年度告示との比較で変更なしを確認

関連記事:管理栄養士が行う在宅患者訪問栄養食事指導については、【令和8年度改定】栄養管理・リハビリテーション編もあわせてご参照ください。

6. ACPおよび看取りに関する加算変更

ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の推進と適切な看取りへの評価は、令和8年度改定でも継続的に重視されています。

看取り加算・ターミナルケア加算

加算名 令和6年度 令和8年度
看取り加算(往診時) 3,000点 3,000点(変更なし)
在宅ターミナルケア加算 各区分3,500〜6,500点 変更なし

ACP推進に向けた実務のポイント

ACP関連加算を適切に算定するためには、患者・家族との意思決定支援プロセスの記録が不可欠です。以下の書式を活用することで、多職種間での情報共有や記録の整備がスムーズになります。

  • 患者の意向・価値観の記録:ACPシート
  • 多職種での意思決定支援プロセスの記録:ACP対話記録シート
  • 今後の治療・ケアの方針に関する文書:事前意思表明書

実務アドバイス:ACP関連の算定では「患者・家族との対話の実施」と「その記録の保管」が要件の核心です。特に看取りに関わる方針決定は、口頭だけでなく文書での記録が求められます。下記よりACP記録書式をダウンロードいただけます。

関連書式のダウンロード

在宅医療・介護連携の実務で使用する書式雛形を無料でダウンロードいただけます。施設の実情に合わせてカスタマイズしてご利用ください。

書式名 用途 ダウンロード
ACPシート 患者の意向・価値観の記録(人生会議 記録用) Excel形式
ACP対話記録シート 多職種での意思決定支援プロセスの記録 Excel形式
カンファレンス記録書 協力医療機関・多職種カンファレンスの記録 Excel形式

よくある疑問(FAQ)

Q1. 令和8年度から訪問診療の算定要件は変わりますか?

訪問診療料の点数は小幅に引き上げられましたが(例:訪問診療料1・同一建物居住者以外:888点→890点)、算定要件の根本的な変更は現時点では確認されていません。ただし、保医発0305第6号の留意事項通知に細部の変更が含まれる可能性があるため、算定前に最新通知をご確認ください。

Q2. 協力医療機関としての要件を満たすために何を準備すればよいですか?

協力医療機関として介護保険施設等と連携する場合、主に(1)連携協定・覚書の締結、(2)入退院時の情報提供・共有の記録、(3)定期的なカンファレンスへの参加と議事録の保管、が求められます。カンファレンス記録書(Excel形式)を活用して記録の整備を行うことをお勧めします。

Q3. ACP関連加算を算定するための記録はどのように整備すればよいですか?

ACP関連加算の算定には、患者・家族との対話の実施と、その内容の文書記録が必要です。記録には「対話の日時・参加者・内容・患者の意向」を明記することが重要です。ACP対話記録シートおよびACPシートをご活用ください。

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参考文献

  • 令和8年厚生労働省告示第69号「診療報酬の算定方法の一部を改正する件」(令和8年3月5日)
  • 保医発0305第6号「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う留意事項について」(令和8年3月5日)
  • 疑義解釈資料の送付について(その2)(令和8年4月1日)