低栄養への対応として「どの栄養剤を選び、どの場面で使うか」の判断は、病院・介護施設・在宅それぞれで大きく異なります。 経口で補える段階ならば高カロリー・高たんぱくの経口補助食品(ONS:Oral Nutritional Supplements)から始め、 経口困難な場合は経管・経腸栄養剤への段階移行を検討します。 本記事では、各製品の特性・手技難易度・衛生面・下痢や逆流リスクを使用場面ごとに整理し、 在宅成分栄養経管栄養法指導管理料(C105)・在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料(C105-3)を含む 関連加算の情報もあわせて解説します。
§1. 低栄養への対応の基本ステップ
栄養介入の出発点は、GLIM基準(Global Leadership Initiative on Malnutrition)による低栄養評価です。 表現型(体重減少・BMI低下・筋肉量減少)と病因(食物摂取量減少・炎症)の組み合わせで 「中等度低栄養」「重度低栄養」を判定し、介入の優先度を決定します。
GLIM基準の詳細は GLIM基準による低栄養評価 をご参照ください。 また、リハビリテーションと栄養・口腔の一体的な取組については リハ・栄養・口腔の一体的取組 もあわせてご覧ください。
ポイント:低栄養対応の3ステップ判定フロー
Step 1:経口摂取は可能か?
→ 可能であれば食事形態の工夫・補助食品(ONS)を優先(→§2へ)
Step 2:ONS・食事改善で目標エネルギー・たんぱく量を充足できるか?
→ 充足できなければ経管・経腸栄養剤への移行を検討(→§3へ)
Step 3:経管栄養が必要な場合、使用場面(病院・施設・在宅)に応じた製剤を選択(→§4〜§6へ)
JSPEN 第3版は「消化管が機能していれば可能な限り経腸経路で栄養補給する」ことを推奨しています。 いずれのステップでも、最終判断は主治医・管理栄養士・NSTチームで行ってください。
§2. 経口補助食品(ONS)の使い分け
ONS(Oral Nutritional Supplements)とは、経口摂取が可能な患者に対して 通常の食事に加えて用いる高カロリー・高たんぱくの補助食品です。 ゼリータイプ・ドリンクタイプに大別されます。 本セクションでは「高カロリー・高たんぱくのゼリー・ドリンク」に限定して紹介します (添加剤・サプリメント・粉飴等は対象外です)。
補足: 以下の製品情報は代表例として列挙するものです。 製品のランキング・優劣評価はしておりません。 個別症例への適用は必ず主治医・管理栄養士・NSTにご相談ください。
ゼリータイプONS
| 製品名 | メーカー | エネルギー | たんぱく質 | 容量 | 主な入手経路 |
|---|---|---|---|---|---|
| メイバランス Mini カップ | 明治 | 200kcal | 7.5g | 125mL | ドラッグストア・調剤薬局・通販 |
| メイバランス ブリックゼリー プレーン | 明治 | 350kcal | 12g | 220g | 医療機関・介護施設向け供給ルート |
| メイバランス たんぱくゼリー | 明治 | — | 高たんぱく | — | ドラッグストア・通販(現行販売中) |
| エンジョイクリミール | 森永乳業クリニコ | 200kcal | 7.5g | 125mL | ドラッグストア・病院売店・通販 |
| アイソカル® ゼリー HC | ネスレ | 150kcal | 3.0g | 66g | 病院・薬局供給中心(特別用途食品) |
| ブイ・クレス CP10 | ニュートリー | 80kcal | 12.0g | 125mL | 医療機関処方・調剤薬局(病者用食品) |
| ブイ・クレス BIO | ニュートリー | 90kcal | 0.3g | 125mL | 病院・介護施設中心(乳糖・カゼインフリー) |
補足: 「プロテアプラスゼリー(森永乳業クリニコ)」については、2026年5月時点で現行販売状況・スペックが公開情報として確認できていないため、本記事では掲載を見送っています。 最新情報はメーカーに直接お問い合わせください。
ドリンクタイプONS
| 製品名 | メーカー | エネルギー | たんぱく質 | 容量 | 特記事項 |
|---|---|---|---|---|---|
| メイバランス Mini(紙パック) | 明治 | 200kcal | 7.5g | 125mL | カップ版と同スペック・容器形態のみ違い |
| ファインケア | キューピー | 200kcal | 7.5g | 125mL | 9フレーバー・栄養機能食品(亜鉛・銅) |
| リカバリーNutry | 森永乳業 | 約100kcal | 7.0g | 125mL | シールド乳酸菌・植物繊維入り・通販でも入手可 |
医薬品扱いの経腸栄養剤(経口摂取可・処方が必要)
エンシュア・H、エンシュア・リキッド、エネーボ、イノラス、ツインラインNF、ラコールNF液剤は 医療用医薬品で添付文書上は経口投与も可能ですが、処方箋が必要です。
⚠️ 令和8年度(2026年6月)改定:経口栄養剤の保険給付制限
「栄養保持を目的とした医薬品の保険給付の適正化」により、以下6製剤の保険給付対象が限定されました。
対象薬剤:イノラス・エネーボ・エンシュアH・エンシュア・リキッド・ツインラインNF・ラコールNF
投与対象は①手術後の患者、②経管栄養患者、③医師が医療上必要と判断した患者に限定されます。
処方箋および診療報酬明細書への理由記載が必須です。
入院患者以外で理由記載がない場合は、調剤料・処方料が算定できません。
出典:栄養NEWS ONLINE「令和8年度診療報酬改定 Ⅳ-4-3-①」(2026年2月27日)
ONS選択のポイント
- 嚥下機能:嚥下障害がある場合はゼリー状・とろみ付加を選択。流動性の高い飲料は誤嚥リスクがあります。
- 糖尿病合併例:ONSは高炭水化物製剤が多いため、糖尿病用ONS(炭水化物量50%以下)を選択するか、投与後の血糖モニタリングを徹底してください。詳細は経管・経腸栄養剤ガイド(ハブ)の病態別マッチング表をご参照ください。
- コスト・入手性:在宅では薬局・通販での入手可否も選択基準になります。
- エビデンス:JSPEN第3版は「経腸栄養剤の補助的追加は、褥瘡の発症予防に有効(推奨グレードAI)」としています。
§3. 経管・経腸栄養剤の使い分け(消化態・半消化態・成分・半固形)
経腸栄養剤は窒素源の形態によって4種類に大別されます。 低栄養例では消化吸収能が正常〜軽度低下の場合が多く、半消化態栄養剤が第一選択となることが多いです。
| 分類 | 窒素源 | 代表製剤(代表例) | 主な適応 |
|---|---|---|---|
| 成分栄養剤(完全消化態) | L-アミノ酸 | エレンタール/エレンタールP/ヘパンED(EAファーマ) | 消化吸収能が極端に低下・クローン病・短腸症候群・肝不全 |
| 消化態栄養剤 | ジ・トリペプチド+遊離アミノ酸 | ツインラインNF(EAファーマ)/ペプタメンAF(ネスレ) | 軽度〜中等度の消化吸収障害・術後早期 |
| 半消化態栄養剤 | カゼイン・大豆分離たんぱく等 | エンシュアH/エネーボ/ラコールNF液剤/イノラス/メイバランス | 消化吸収能正常〜軽度低下(低栄養の第一選択) |
| 半固形栄養剤 | 上記+粘度調整 | ラコールNF半固形剤(大塚)/PGソフトEJ(ニュートリー)/ハイネゼリー/メディエフプッシュケア2.5(ネスレ) | 誤嚥リスク・PEGボーラス投与・介護者負担軽減 |
補足:メディエフプッシュケアについて
メディエフプッシュケア2.5はネスレヘルスサイエンスの製品です。
2022年12月にテルモ栄養事業がニュートリー株式会社に譲渡されましたが、
メディエフプッシュケアはニュートリー譲渡対象外であり、引き続きネスレヘルスサイエンスが販売しています(3.0kcal/mL の高濃度設計)。
PGソフトEJシリーズはニュートリーが販売しています。
補足:ヘパンEDの容器変更
ヘパンED配合内用剤は、2023年12月にプラスチック容器製剤が販売中止となっています。
現行はパウチ製剤(80g袋)のみの取り扱いです。
肝不全用製剤の詳細は
病態別・周術期の経腸栄養剤選択(記事57)
をご参照ください。
液体栄養剤 vs 半固形栄養剤の比較
| 観点 | 液体栄養剤 | 半固形栄養剤 |
|---|---|---|
| 投与時間 | 長い(数時間〜持続滴下) | 短い(5〜10分) |
| 逆流・誤嚥リスク | 高め | 低(胃内停滞により逆流しにくい) |
| 下痢の発生 | やや高い | 低め |
| チューブ閉塞 | 低め | やや高い(高粘度時) |
| 注入圧 | 低い | 高い(手動プランジャー型注入器が必要) |
| 介護者負担 | 高い(長時間付き添い) | 低い(短時間で完了) |
| コスト | 比較的安価 | やや高め |
| ポンプ使用 | 適する | 使用困難〜不可 |
病態別(クローン病・肝不全・CKD・糖尿病・周術期)の製剤選択の詳細は 病態別・周術期の経腸栄養剤選択 をご参照ください。
§4. 使用場面別の適性①:病院(急性期・回復期)
入院中は入院時食事療養費(包括払い)の範囲で食品系濃厚流動食が多用されます。 NSTラウンドで嚥下・栄養評価を行い、必要に応じて医薬品系(高たんぱく・高カロリー製剤)を追加します。
| 病期 | 栄養管理の重点 | 主に選ばれる製剤の特徴 |
|---|---|---|
| 急性期 | 高たんぱく重視(筋タンパク分解対策) | エンシュアH・ペプタメンAF等の高たんぱく・消化態製剤 |
| 回復期 | 経口移行重視・リハ栄養と並行 | メイバランス・クリミール等の半消化態栄養剤+ONS併用 |
ポイント:退院後継続を見据えた製剤選択
在宅での継続が必要な場合、退院前から在宅で扱える製品(半固形剤やC105対象薬)への切替を検討します。
医薬品系製剤から食品系に切り替える際は、カロリー・たんぱく量の変化を管理栄養士が確認してください。
感染症対策・チューブ管理は院内手順書に準じて行ってください。 NSTによる嚥下機能評価・口腔ケア・リハ栄養との連動については リハ・栄養・口腔の一体的取組 をご参照ください。
§5. 使用場面別の適性②:介護施設(特養・老健・介護医療院)
介護施設では給食扱いの濃厚流動食を主体に運用するケースが多いです。 医薬品の経腸栄養剤は処方薬扱いになるため、通常は要介護者の自己負担または施設契約の処方ルートが必要です。
半固形剤が選ばれやすい理由
- 誤嚥・逆流リスクの低減(→§7参照)
- 投与時間が5〜10分程度と短く、介護スケジュールとの両立がしやすい
- 介護者の長時間付き添いが不要で、介護者負担が軽減される
ポイント:介護職員による経管栄養の法的位置づけ
介護職員が経管栄養を実施するには、喀痰吸引等研修(医療的ケア研修)の受講と事業者届出が必要です。
研修修了者は看護師指導下のもと、経管栄養を業務として行えます。
施設内で手順書を整備し、定期的な研修・評価を行うことが重要です。
連動する介護報酬加算
| 加算名 | 単位数 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 経口維持加算(Ⅰ) | 400単位/月 | 嚥下障害例で1日100kcal以上経口摂取・管理栄養士関与・栄養ケア計画 |
| 経口維持加算(Ⅱ) | 100単位/月(Ⅰに加算) | 協力歯科医療機関が参加する月1回の多職種会議 |
| 経口移行加算(Ⅰ) | 320単位/月 | 経管栄養から経口摂取への移行計画 |
| 経口移行加算(Ⅱ) | 160単位/月 | 移行計画の継続段階 |
| 栄養マネジメント強化加算 | — | 個別ケア計画・経過評価・連携会議 |
各加算の詳細は 経口維持・栄養加算ガイド および 経口維持計画書の書き方完全ガイド をご参照ください。 多職種連携(管理栄養士・歯科医師・言語聴覚士(ST)・看護職員・介護職員)による 定期的な嚥下評価と栄養評価が、加算算定と経口移行の推進に不可欠です。
§6. 使用場面別の適性③:家庭(在宅医療・家族介護)
在宅での経管栄養は、家族介護者が主体となって実施することが多く、 使いやすさ・衛生管理のしやすさ・在庫管理のしやすさが製品選択の重要な基準となります。 また、在宅での経管栄養には医師による指導管理料の算定が可能です。
在宅成分栄養経管栄養法指導管理料(C105)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | C105 在宅成分栄養経管栄養法指導管理料 |
| 算定点数 | 2,500点/月 |
| 対象薬剤 | アミノ酸・ジペプチド・トリペプチドを主なタンパク源とし、未消化態タンパクを含まないもの。具体的には:エレンタール・エレンタールP・ツインラインNF(肝不全用:ヘパンED、アミノレバンEN) |
| 算定要件 | 諸種の原因で経口摂取できない、または著しく困難な在宅療養患者が自ら実施する栄養法 |
| 除外規定 | 単なる流動食の鼻腔栄養は該当しない |
| 関連加算 | C162 在宅経管栄養法用栄養管セット加算(2,000点・月1回)、C161 注入ポンプ加算(1,250点・2月に2回) |
在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料(C105-3)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | C105-3 在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料 |
| 算定点数 | 2,500点/月 |
| 対象 | 薬価基準収載の高カロリー薬または薬価基準非収載の流動食で、あらかじめ半固形状に調整されたもの(ラコールNF半固形剤等) |
| 算定要件 | 経口摂取が著しく困難なため胃瘻を造設している者で、医師が経口摂取回復に向けて在宅半固形栄養経管栄養法を行う必要を認め、胃瘻造設術後1年以内に開始するもの |
| 算定期間 | 最初に算定した日から起算して1年を限度として算定 |
注意:C105-3の「半固形状」の定義
「投与後に胃液等により液体状から半固形状に変化する栄養剤」や
「市販時に液体状のものに半固形化剤を加えて半固形状に調整したもの」は
C105-3の対象に該当しません。
あらかじめメーカーが半固形状に製剤化したものが対象です。
家庭で扱いやすい栄養剤の特徴
- 小容量(200〜400mL/本)で室温保管が可能
- 賞味期限が長く、開封後の使用期限が明確
- 例:エレンタールPは250mLパウチ(室温保存可)、ツインラインNFはA液・B液各200mLバッグ(室温保存可)
家庭で扱いが難しい/注意が必要な栄養剤
| タイプ | 製品例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 粉末溶解タイプ | エレンタール・エレンタールP | 衛生管理・溶解手順の習熟が必要。調製器具の洗浄消毒が欠かせない |
| 2液混合タイプ | ツインラインNF(A液+B液) | A液・B液の取り違え防止が重要。混合後は12時間以内に使用すること |
| 高粘度半固形剤 | ラコールNF半固形剤・PGソフトEJ | 手動プランジャー型注入器が必要。押し出し圧の管理が必要 |
家族介護者向け指導チェックリスト
注意:在宅経管栄養の衛生管理は感染予防の要です。以下の手順を必ず守ってください。
| 確認項目 | 具体的な実施内容 |
|---|---|
| 注入前後のフラッシュ | 20〜30mLのぬるま湯で注入前後にチューブ内を洗浄する |
| 温度管理 | 湯せんは70℃以下。電子レンジは一回量のみ・加熱むらに注意 |
| 開封後の使用期限 | 開封後24時間以内に使い切る。混合後は12時間以内 |
| 品質確認 | 投与前にカビ・異臭・分離・変色の有無を確認する |
| 体位管理 | 注入中・注入後30分はヘッドアップ30〜45度を保つ |
| 口腔ケア | 経口摂取がなくても毎日の口腔ケアを継続する |
| トラブル時の対応 | むせ・逆流・注入拒否があれば投与を中断し、訪問看護師または在宅医に連絡する |
ポイント:訪問看護・在宅医との連携
定期的な体重測定・栄養評価・チューブ固定状態の確認は訪問看護師が行います。
緊急時の連絡経路(訪問看護ステーション・在宅医・かかりつけ薬局)を家族と共有しておくことが重要です。
§7. リスク別の選び方:下痢・逆流・誤嚥・チューブ閉塞・リフィーディング症候群
経腸栄養中に生じやすい4つのリスクと、リフィーディング症候群への対応を整理します。
リスク別対応マトリクス
| リスク | 主な原因 | 第一対応 | 製剤の見直しポイント |
|---|---|---|---|
| 下痢 | 注入速度過速・高浸透圧・乳糖・薬剤性・感染性 | 注入速度を半分に落とす(最優先) | 乳糖少・浸透圧低・食物繊維配合製剤(ファイブレン等)への変更 |
| 逆流・誤嚥 | 胃内容物の停滞・低いヘッドアップ角度 | セミファウラー位30〜45度の徹底 | 半固形剤(ハイネゼリー・PGソフトEJ・ラコールNF半固形等)への切替を検討 |
| チューブ閉塞 | 栄養剤の固化・薬剤の懸濁不良 | 投与前後のフラッシュ(20〜30mLぬるま湯)を徹底 | 低粘度・水溶性の製剤を選択。薬剤投与後は必ずフラッシュ |
| リフィーディング症候群 | 長期絶食後の急速な栄養投与 | 初期10〜20kcal/kgから漸増(3〜4日かけて目標到達) | リン・カリウム・マグネシウム・チアミン(B1)の補充と血中濃度モニタリング |
注意:下痢が続いても経腸栄養を安易に中止しないこと
JSPEN第3版は「下痢が発生しても消化管が使用可能であれば、経腸栄養中止の条件にはならない(推奨グレードBII)」としています。
C. difficile等の感染性下痢の鑑別を行った上で、速度・製剤の見直しで対応します。
リフィーディング症候群のリスク評価(ASPEN 2020)
| リスク区分 | 該当条件 | 基準 |
|---|---|---|
| 高リスク | 1項目以上で該当 | BMI<16 kg/m² / 3ヶ月で体重減少15%超 / 絶食7日以上 / 治療前のリン・K・Mg低値 |
| 中リスク | 2項目以上で該当 | BMI 16〜18.5 / 体重減少(1ヶ月5%以上または3ヶ月7.5%以上)/ 絶食5〜6日 |
ポイント:モニタリング指標
血清リン<2.0mg/dL、カリウムまたはマグネシウムが10%以上低下した場合は速やかに補充を検討してください。
JSPEN第3版は「リン・カリウム・マグネシウム・ビタミンB1を補充して血中濃度を正常範囲内に維持する(推奨グレードAIII)」としています。
補足:逆流対策としての半固形剤
JSPEN第3版は「半固形状流動食の使用が胃食道逆流の抑制に有効な場合がある(推奨グレードCIII)」としています。
投与時間の延長(4〜8時間)やポンプ使用も逆流軽減に有効です。
§8. 関連加算・関連書式
介護報酬(令和6年度改定)
| 加算名 | 単位数 | 概要 | 関連リンク |
|---|---|---|---|
| 経口維持加算(Ⅰ) | 400単位/月 | 嚥下障害例で経口維持を支援 | 加算ガイド |
| 経口維持加算(Ⅱ) | 100単位/月(Ⅰに加算) | 歯科医療機関参加の多職種会議 | 計画書の書き方 |
| 経口移行加算 | Ⅰ:320単位/月、Ⅱ:160単位/月 | 経管→経口移行計画 | 加算ガイド |
| 栄養マネジメント強化加算 | — | 個別ケア計画・連携会議 | 加算ガイド |
医療保険(令和6年度改定)
| 加算名 | 概要 |
|---|---|
| 摂食嚥下機能回復体制加算 | 嚥下機能評価・訓練を実施する体制への評価 |
| リハ・栄養・口腔連携体制加算 | 令和6年度改定で要件拡大。リハ・栄養・口腔の一体的取組への評価 |
令和8年度改定(2026年6月施行)の関連事項
| 改定事項 | 内容 |
|---|---|
| 栄養保持医薬品の保険給付適正化 | イノラス・エネーボ・エンシュアH・エンシュア・リキッド・ツインラインNF・ラコールNFの6製剤の給付制限 |
| 経腸栄養管理加算(300点/日)見直し | 入院前から経腸栄養を行っていなかったTPN患者にも対象拡大 |
| 退院後訪問栄養食事指導料(新設・530点/回) | 退院直後に管理栄養士が患家訪問して指導を実施 |
関連書式(無料ダウンロード)
- GLIM評価シート(書式12): Excelでダウンロード/記入例版 / 詳細はGLIM基準による低栄養評価
- 経口維持計画書(書式34): Excelでダウンロード / 詳細は経口維持計画書の書き方完全ガイド
- 栄養状態情報提供書(書式35): Excelでダウンロード
- 栄養マネジメント強化加算届出書(書式36): Excelでダウンロード
書式の整備・施設ごとのカスタマイズについてご相談がある場合は、 お気軽にお問い合わせフォームからご連絡ください。
§9. よくある質問(FAQ)
Q1. 経口補助食品(ONS)はどんな患者に使いますか?
GLIM基準で「低栄養あり」と判定された患者や、経口摂取が不十分で体重減少が進行中の患者に用います。 食事量に対してエネルギー・たんぱく量が不足しているが経管栄養までは必要ない、 軽〜中等度の低栄養患者に対して、高カロリー・高たんぱくのONSを食間や補食として併用します。 JSPEN第3版は褥瘡の発症予防にも経腸栄養剤の補助的追加が有効(AI)としています。 個別の適用判断は主治医・管理栄養士・NSTにご相談ください。
Q2. エンシュアやイノラスは家でも飲めますか?
これらは処方薬(医療用医薬品)であり、添付文書上は経口投与も可能ですが、処方箋が必要です。 令和8年度(2026年6月)改定以降、イノラス・エネーボ・エンシュアH・エンシュア・リキッド・ツインラインNF・ラコールNFの6製剤は 「手術後の患者」「経管栄養患者」「医師が医療上必要と判断した患者」に保険給付が限定され、 処方箋・診療報酬明細書への理由記載が必須です。 在宅成分栄養経管栄養法指導管理料(C105)の対象薬剤は エレンタール・エレンタールP・ツインラインNFです。 在宅での使用は処方医・薬局と連携して進めてください。
Q3. 在宅で経管栄養を始めるとき、家族はどんな準備が必要ですか?
①清潔な台所(洗浄スペース)の確保、②注入ポンプ・温度調節具・フラッシュ用注射器の準備、 ③手指消毒薬・ガーゼ・手袋の常備が基本です。 開始前に訪問看護師・管理栄養士が来宅し、チューブ固定・注入・フラッシュ・混合・廃棄期限などを 家族と一緒に確認します。 緊急時の連絡経路(訪問看護ステーション・在宅医・かかりつけ薬局)を事前に整理しておくことも重要です。
Q4. 下痢が続くときはどうすればよいですか?
まず投与速度を半分に落とします。改善しない場合は製剤を確認し、 乳糖含量が少なく浸透圧が低い製剤・食物繊維配合製剤への変更を検討します。 衛生管理(器具の洗浄消毒・開封後使用期限の遵守)の再確認も重要です。 抗菌薬関連下痢(C. difficile感染症)の鑑別も行ってください。 JSPEN第3版は「消化管が使用可能な場合は経腸栄養中止の条件にならない(BII)」としています。 改善しない場合は主治医・管理栄養士に相談してください。
Q5. 半固形栄養剤は介護施設のスタッフでも投与できますか?
「喀痰吸引等研修(医療的ケア研修)」を受講し、事業者届出を行った介護職員は 看護師指導下のもと経管栄養を業務として実施できます。 施設内で手順書の整備と定期的な研修・評価を行うことが前提です。 医師の指示書は必須です。半固形剤は投与時間が短い一方、高粘度のため プランジャー型注入器の使い方の習熟が必要です。
Q6. 高カロリーゼリーで足りない場合は経管栄養に移行すべきですか?
1日3回の高カロリーゼリーを補食しても日当たりのエネルギー・たんぱく目標を満たせない場合、 またはGLIM基準で高度低栄養と判定され食事療法だけでは改善が見込めない場合が、経管栄養移行の目安です。 経管栄養は患者負担・医師処方の手続きが必要なため、 まず食事形態の工夫・ONSの種類変更・摂取タイミングの調整を試み、 改善しなければ主治医・管理栄養士・NSTで移行計画を立てます。 QOLへの影響も含めて多職種で総合的に判断してください。
経管・経腸栄養剤の分類・投与経路・物性の詳細は 経管・経腸栄養剤ガイド(ハブページ) をご覧ください。 病態別(肝不全・CKD・クローン病・糖尿病・周術期)の選択は 病態別・周術期の経腸栄養剤選択 で詳しく解説しています。
参考文献
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定における改定事項について」(2026年3月6日)
- 栄養NEWS ONLINE「【令和8年度診療報酬改定】Ⅳ-4-3-①栄養保持を目的とした医薬品の保険給付の適正化」(2026年2月27日)
- 公益社団法人 日本栄養士会「令和8年度診療報酬改定のポイント」
- 厚生労働省 診療報酬点数表 C105 在宅成分栄養経管栄養法指導管理料(C105-3 在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料 含む)関連通知
- 静脈経腸栄養ガイドライン 第3版(日本静脈経腸栄養学会・JSPEN)Quick Reference
- ASPEN Consensus Recommendations for Refeeding Syndrome(2020)
- PMDA 医療用医薬品添付文書:エレンタール配合内用剤(2023年4月改訂)/エレンタールP乳幼児用配合内用剤(2023年9月改訂)/ツインラインNF配合経腸用液/ラコールNF配合経腸用液・半固形剤/アミノレバンEN配合散/ヘパンED配合内用剤(2023年9月改訂)
- EAファーマ「ヘパンED® 配合内用剤 プラスチック容器製剤の供給に関するお詫び」(2023年8月)
- PDN レクチャー Chapter 2「経腸栄養」(peg.or.jp)
- 各メーカー公式情報:明治・森永乳業クリニコ・ネスレヘルスサイエンス・キューピー・ニュートリー・大塚製薬工場・アボットジャパン・EAファーマ