経口維持計画書は、経口維持加算(Ⅰ)(Ⅱ)の算定に欠かせない多職種連携の中核となる書式です。しかし「何をどこまで書けばよいか」「事例ベースの記入例が見つからない」と悩む現場の声を多くいただきます。本記事では、特養に入所する架空の利用者「田中花子さん」の事例を題材に、経口維持計画書の各項目をどう記入するかを具体的に解説します。記入例つきExcelファイルもダウンロードできるので、自施設の運用にすぐ活用できます。

🍽 経口維持加算の算定要件全体像はこちら:算定対象者・点数・人員配置・関連加算との併算定可否は「食事に関する加算ガイド」でまとめて確認できます。

経口維持計画書とは何か

経口維持計画書は、誤嚥性肺炎の発症リスクが高い利用者に対し、経口摂取を継続するための計画と多職種の支援内容を文書化した書式です。介護保険における経口維持加算(介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院)の算定要件として、入所者ごとの作成・カンファレンスでの確認が義務付けられています。

経口維持加算(Ⅰ)(Ⅱ)の概要

区分単位数主な要件
経口維持加算(Ⅰ) 400単位/月 水飲みテスト・頸部聴診法等による評価/医師の指示/管理栄養士による計画作成・モニタリング
経口維持加算(Ⅱ) 100単位/月(Ⅰに加算) 協力歯科医療機関の参加する多職種会議の月1回以上の開催

計画書の更新頻度:原則6ヶ月ごとに見直し。ただし状態変化(食形態変更・誤嚥発生・退所予定など)があった場合は随時更新し、多職種会議で再評価することが推奨されます。

計画書の全体構成と書き方の基本

経口維持計画書は大きく4つのブロックで構成されます。

ブロック記載内容記入のポイント
① 基本情報 施設名・入所者名・作成日・計画作成者・介護度・生年月日 計画作成者は管理栄養士の氏名を記載
② 摂食機能評価 評価日・評価方法・評価結果・誤嚥リスク・食形態・水分とろみ・姿勢・備考 4回分の経時評価が現場で標準的
③ 経口維持の目標と計画 短期目標・長期目標・具体的支援内容・食事中の注意・多職種の役割分担 SMARTな目標設定が監査でも評価される
④ 多職種会議参加者(署名欄) 医師・歯科医師・管理栄養士・ST・介護職員・看護職員・ケアマネ・歯科衛生士の署名/印 多職種会議実施日と一致させる

記入例:田中花子さん(架空・80歳・要介護4)の事例

本記事の記入例は、特別養護老人ホーム「みどりの里」に入所する架空の利用者「田中花子さん(80歳・要介護4)」の事例で構成しています。実際の利用時は、施設・対象者の情報に書き換えてご使用ください。

① 基本情報

施設名特別養護老人ホーム みどりの里
入所者名田中 花子
作成日令和7年4月22日
計画作成者(管理栄養士)鈴木 真由美
介護度要介護4
生年月日昭和20年5月3日(80歳)

② 摂食機能評価(4回分の経時記録)

評価日評価方法結果誤嚥リスク食形態水分とろみ姿勢
R7.4.1反復唾液嚥下テスト軽度誤嚥リスク中度きざみ食とろみ中リクライニング30度
R7.4.8フードテスト嚥下反射安定中度きざみ食とろみ中リクライニング30度
R7.4.15ミールラウンド改善傾向軽度きざみ食とろみ中リクライニング45度
R7.4.22VE検査嚥下反射改善軽度軟菜食とろみ薄座位

📌 ポイント:評価方法は段階的に組み合わせるのが現場の実践です。スクリーニング系(反復唾液嚥下テスト・フードテスト)→ 観察評価(ミールラウンド)→ 精密検査(VE/VF)の順で実施し、結果を時系列で並べることで「誤嚥リスクの推移」が一目で分かる計画書になります。

③ 経口維持の目標と計画

短期目標(1ヶ月以内)

誤嚥なく主食7割を経口摂取できる

書き方のコツ:「誤嚥なく」「主食7割」のように、達成度が判断できる定量的な指標を含めます。「経口摂取を維持する」だけでは目標として弱く、監査でも指摘されやすい項目です。

長期目標(3ヶ月以内)

必要エネルギー量の80%を経口摂取し、体重維持できる

書き方のコツ:長期目標は「機能維持」だけでなく「QOLや栄養状態の改善」につながる内容を含めると、計画の方向性が明確になります。

具体的支援内容

週2回ミールラウンド実施・食形態の段階的調整・月1回多職種カンファ

食事中の注意

食前に口腔ケア。覚醒確認後に食事介助。むせがあれば一旦中断し体位調整。

多職種の役割分担

職種主な役割
医師指示・全体評価・誤嚥性肺炎時の対応
管理栄養士食形態調整・栄養計算・計画書作成・モニタリング
言語聴覚士(ST)嚥下訓練・嚥下機能評価
介護職員食事介助・観察記録(ミールラウンド)
看護職員吸引・全身状態管理・誤嚥時の対応
歯科衛生士口腔ケア指導・口腔状態評価

多職種会議参加者(署名欄)の運用

経口維持加算(Ⅱ)の算定要件として、協力歯科医療機関が参加する多職種会議を月1回以上開催することが求められます。署名欄は以下の8職種を想定して構成されています。

  • 医師(嘱託医・往診医)
  • 歯科医師(協力歯科医療機関)
  • 管理栄養士(計画作成者)
  • 言語聴覚士(ST)
  • 介護職員
  • 看護職員
  • 介護支援専門員(ケアマネ)
  • 歯科衛生士

⚠ よくある算定漏れ:歯科医師の参加がない月は加算(Ⅱ)の算定要件を満たさないため、加算(Ⅰ)のみの算定となります。協力歯科医療機関とのスケジュール調整は早めに行いましょう。

よくある記載漏れと対策

よくある記載漏れ対策
短期/長期目標が抽象的(「経口摂取を維持する」など) 定量指標(割合・kcal・体重)を必ず含める
摂食機能評価が1回しかない 評価方法を複数組み合わせて経時記録(最低2回以上)
多職種の役割分担が空欄 記事中の表をテンプレ化して職種ごとに記載
署名欄に歯科医師の押印漏れ 会議実施前に協力歯科医療機関と日程調整
状態変化時の更新が遅れる 食形態変更・誤嚥発生時は3日以内に再評価・計画見直し

書式雛形のダウンロード

経口維持計画書は「空欄版」と「記入例版」の2種類を無料でダウンロードできます。初めて算定する施設は、まず記入例版で書き方のイメージを掴んでから、空欄版を施設の様式に合わせて編集することをお勧めします。

📄 経口維持計画書

📄 関連書式(経口維持加算の運用に必要)

💡 関連記事:ミールラウンド記録の書き方は ミールラウンド記録の実践ガイド で詳しく解説しています。

参考文献

  • 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(令和6年3月15日)
  • 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年厚生省告示第19号)
  • 日本摂食嚥下リハビリテーション学会『嚥下調整食学会分類2021』
  • 日本歯科医師会『施設・在宅における摂食嚥下機能管理の手引き』