「早期離床・リハビリテーション加算」は、ICU等の重症患者に多職種チームが超急性期から介入することを評価する加算で、特定集中治療室管理料(A301)の注4・1日につき500点・入室日から14日を限度に算定します。令和8年度診療報酬改定でも点数・算定期間・対象入院料は据え置きです。本記事では、点数・算定要件・対象となる5つの入院料・チーム構成(医師・看護師・療法士の経験と研修)・入室48時間以内の取組・様式42の3による届出・疾患別リハとの同日排他と早期栄養介入管理加算との併算定を、急性期病院向けに整理します。
📋 リハ加算の全体像はこちら:急性期の早期介入は名称が似た加算が4系統あります。4系統をまとめて比較した「早期リハビリテーション加算2026(4系統の比較・早見表)」、重症患者向けの「急性期リハビリテーション加算(注4・50点)」、回復期も含む全体像は「回復期リハビリテーション 加算ガイド」で確認できます。
この記事のポイント
- 早期離床・リハビリテーション加算はA301注4・1日500点・入室日から14日限度(令和8年度も据え置き)
- 対象はICU等の5つの入院料(救命救急・特定集中治療室・HCU・SCU・小児ICU)に限定
- 入室後48時間以内に多職種チームが計画に基づく取組を開始することが必須
- 同一日に疾患別リハビリテーション料は算定不可(早期栄養介入管理加算とは併算定可)
1. 早期離床・リハビリテーション加算とは(急性期4系統の中の「系統D」)
急性期のリハビリ評価は名称が似た加算が複数あり、混同が起きがちです。疾患別リハビリテーション料に係る早期介入の評価は次の4系統に整理でき、早期離床・リハビリテーション加算は、ICU等の重症管理ユニットに特化した系統Dです。系統A〜C(疾患別リハ料の注に規定)とは規定の場所も算定の仕組みも異なります。
| 系統 | 加算名 | 規定 | 点数 | 算定期間 | 主な対象 |
|---|---|---|---|---|---|
| A | 早期リハビリテーション加算 | 疾患別リハ料 注2 | 60点/25点(段階) | 入院日から14日 | 入院患者全体 |
| B | 初期加算 | 疾患別リハ料 注3 | 45点 | 発症等から30日 | 入院患者全体 |
| C | 急性期リハビリテーション加算 | 疾患別リハ料 注4 | 50点 | 発症等から14日 | 重症患者等 |
| D | 早期離床・リハビリテーション加算 | 特定集中治療室管理料等の注 | 500点/日 | 入室日から14日 | ICU等の患者 |
系統Dの独自性:系統A〜C(1単位あたり数十点)は1単位ごとの疾患別リハに上乗せする加算ですが、系統Dは1日につき500点と評価が大きく、多職種チームによる総合的な離床の取組をまとめて評価します。その代わり、後述のとおり同一日に疾患別リハビリテーション料は算定できません。
2. 点数・算定期間・起算日(新旧対照)
| 項目 | 令和6年度 | 令和8年度 |
|---|---|---|
| 規定 | 特定集中治療室管理料(A301)の注4(他の対象入院料でも準用) | |
| 点数 | 1日につき500点 | 1日につき500点(据え置き) |
| 算定期間 | 入室日から14日 | 入室日から14日を限度(据え置き) |
| 起算日 | 当該治療室に入室した日 | 当該治療室に入室した日(据え置き) |
14日のカウント(疑義解釈):対象ユニットを退室後、同一入院期間中に再入室した場合や、別の対象ユニット(例:特定集中治療室→脳卒中ケアユニット)へ転棟した場合も、それぞれで算定した日数を通算して14日を限度とします(リセットされません)。4系統の起算日の違い・管理方法は「リハビリ加算の起算日 完全ガイド」で整理しています。
3. 対象となる入院料(5区分に限定)
本加算を算定できるのは、次の5つの特定入院料(管理料)を算定する病室に限定されます(令和8年度改定でも範囲の変更なし)。
| 区分番号 | 対象となる入院料(管理料) |
|---|---|
| A300 | 救命救急入院料 |
| A301 | 特定集中治療室管理料 |
| A301-2 | ハイケアユニット入院医療管理料 |
| A301-3 | 脳卒中ケアユニット入院医療管理料 |
| A301-4 | 小児特定集中治療室管理料 |
4. 施設基準・チーム構成(必要人員)
対象治療室に、次の要件を満たす多職種チーム(早期離床・リハビリテーションチーム)を設置します。各職種とも専任での配置が求められます。
| 職種 | 勤務形態 | 経験・研修の要件 |
|---|---|---|
| 医師 | 専任 | 集中治療に関する5年以上の経験(小児ICUの場合は小児の集中治療に関する5年以上の経験) |
| 看護師 | 専任・常勤 | 集中治療を必要とする患者の看護に5年以上従事し、かつ適切な研修(国・医療関係団体等が主催する600時間以上の研修等)を修了 |
| 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 | 専任・常勤 | 急性期医療を提供する保険医療機関で5年以上従事(※下記の特例あり) |
療法士の経験年数の特例:当該保険医療機関での急性期経験が5年に満たない場合でも、同一医療機関の回復期リハビリテーション病棟に専従で勤務した経験と通算して5年以上であれば要件を満たします。
施設要件:施設全体として心大血管疾患リハ(H000)・脳血管疾患等リハ(H001)・呼吸器リハ(H003)のいずれかの施設基準を届出していることが必要です。
複数ユニットの兼務:同一院内に複数の特定集中治療室(ICUとHCU等)がある場合、各室のチームを同一の構成員が兼ねても差し支えありません。
5. 実施要件(48時間以内・計画・プロトコル・記録)
本加算は、計画的な多職種介入と継続的な記録によって成り立ちます。次の運用が求められます。
- 個別支援計画の早期作成:入室後速やかに全身状態・運動・呼吸・摂食嚥下・消化吸収・排泄機能等を評価し、関係学会の指針等を踏まえた早期離床計画を治療室スタッフと共同作成する。
- 入室後48時間以内の取組開始:入室から48時間以内に、計画に基づく具体的な取組(ベッドサイドの関節可動域訓練・呼吸理学療法・ポジショニング・離床訓練等)を開始する。
- プロトコルの整備と定期的な見直し:標準的なプロトコル(手順書)をあらかじめ整備し、多職種で協働。実施状況や最新の知見を踏まえて定期的に見直す。
- 診療録への記載:早期離床計画の内容、実施した取組、再評価の結果、介入に要した実施時間を診療録等に記載する。
重症で離床できない患者でも対象(疑義解釈):意識障害や循環動態不安定等でベッド外への離床が困難な患者でも、安全に実施可能な他動的な関節可動域訓練・呼吸理学療法・ポジショニング等を48時間以内に開始していれば、取組要件を満たします。
6. 届出(様式42の3)
施設基準の届出は、別添7の様式42の3を用いて管轄の地方厚生(支)局へ行います。主な記入・添付は次のとおりです。
- 算定対象とする入院料名(特定集中治療室管理料・救命救急入院料 等)の明記
- チーム構成員(医師・看護師・PT・OT・ST)の氏名・専任区分・資格取得後の経験年数
- 看護師の研修(600時間以上)修了が確認できる書類(修了証の写し等)
- 療法士の経験を回復期リハ病棟の専従経験と通算する場合は、それぞれの期間を分けて記載
- 院内で整備している早期離床・リハビリテーションのプロトコル(現物の写し)1部
- プロトコルの見直し頻度(年間回数)
施設種別ごとの届出先・必要書類は「施設基準 届出ナビ」でも確認できます。届出が受理された月の翌月1日(月の最初の開庁日に受理された場合はその月の1日)から算定できます。
7. 併算定(疾患別リハとは同日排他・早期栄養介入管理加算とは併算定可)
本加算は多職種チームによる総合的な取組を包括的に評価するため、疾患別リハビリテーション料との同日算定が制限されています。
| 相手の項目 | 同一日の算定 | 備考 |
|---|---|---|
| 疾患別リハビリテーション料(H000心大血管/H001脳血管/H001-2廃用/H002運動器/H003呼吸器/H007障害児者/H007-2がん) | × | 本加算を算定した日は算定不可(費用は本加算に含まれる) |
| 早期リハ加算・初期加算・急性期リハ加算・休日リハ加算(疾患別リハに付随) | × | 疾患別リハ料が算定不可のため同日不可 |
| 早期栄養介入管理加算(250点/400点) | ○ | 双方の施設基準を届け出ていれば同日併算定可 |
DPCでの取扱い:DPC算定対象病棟でも、出来高(医科点数表)と同様の排他ルールが適用されます(疑義解釈)。ICU退室後に一般病棟へ移った後は、疾患別リハビリテーション料(後述の10%減算等の新ルールが適用)へ切れ目なく移行します。
8. ベッド上リハの10%減算との関係
令和8年度改定では、特定の患者に対して離床を伴わない(ベッド上の)リハビリを行う場合の一部10%減算が新設されました。ただし、特定集中治療室管理料等のユニットでは、この減算は適用除外です。超急性期では、受動的な関節可動域訓練やポジショニングこそが将来のADL回復に不可欠なプロトコルの一部であると位置づけられているためです。早期離床・リハビリテーション加算は、こうした超急性期の早期介入を後押しする評価といえます。
9. よくある質問(FAQ)
Q1. 令和8年度改定で点数や要件は変わりましたか?
点数(1日500点)・算定期間(入室日から14日)・対象入院料・起算日は据え置きです。一方で、急性期・回復期全体では「離床を伴わないリハの10%減算」など適正化が行われており、ICU等はその減算の適用除外となっています。
Q2. どの入院料で算定できますか?
救命救急入院料(A300)、特定集中治療室管理料(A301)、ハイケアユニット入院医療管理料(A301-2)、脳卒中ケアユニット入院医療管理料(A301-3)、小児特定集中治療室管理料(A301-4)の5区分に限定されます。
Q3. 疾患別リハビリテーション料と同じ日に算定できますか?
できません。早期離床・リハビリテーション加算を算定した日は、疾患別リハビリテーション料(およびそれに付随する早期リハ加算・初期加算・急性期リハ加算・休日リハ加算)を算定できません。一方、早期栄養介入管理加算とは、双方の施設基準を届け出ていれば同日併算定が可能です。
Q4. 「入室後48時間以内の取組」は離床できない重症患者でも必要ですか?
必要です。ベッド外への離床が困難でも、安全に実施可能な他動的な関節可動域訓練・呼吸理学療法・ポジショニング等を48時間以内に開始していれば取組要件を満たします。
参考・一次情報
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)A301 特定集中治療室管理料 注4
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(保医発0305第6号)
- 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(保医発0305第7号)別添7 様式42の3
- 厚生労働省 疑義解釈資料
※ 本記事は令和8年度改定の整理に基づく解説です。起算日・14日通算の細目、研修の該当範囲等は改定の都度見直されます。算定前に最新の告示・通知・疑義解釈、および管轄の地方厚生局でご確認ください。