低栄養を見逃さないためには、まず栄養スクリーニングでリスクのある人を拾い上げ、必要に応じてアセスメントを行い、GLIM基準で低栄養を診断する——という流れが基本です。本記事では、代表的なスクリーニングツール(MST・MUST・MNA-SF・NRS-2002)を比較表で整理し、特に簡便で広く使われるMST(栄養評価スケール)の項目・配点・カットオフを詳しく解説します。あわせてSGA等のアセスメント、GLIM基準への接続、診療報酬・介護報酬での位置づけまでまとめます。
📋 関連ガイド:スクリーニング陽性後の診断は「GLIM基準による低栄養評価」、リハ・栄養・口腔の一体的取組は「リハ栄養口腔一体的取組」、加算の全体像は「食事・口腔に関する加算ガイド」「回復期リハビリテーション加算ガイド」で確認できます。
この記事のポイント
- 栄養評価はスクリーニング → アセスメント/GLIM診断 → 重症度判定の流れ
- MST(栄養評価スケール)は2項目・0〜5点で、2点以上が低栄養リスクあり
- ツールは対象・場面で使い分け(急性期=NRS-2002・MST/高齢者=MNA-SF など)
- スクリーニング陽性者はGLIM基準(表現型1+病因1以上)で低栄養を診断する
1. 栄養スクリーニングとアセスメント・GLIM診断の3段階
栄養評価は、目的の異なる段階を順に踏みます。GLIM基準はこれを「2ステップ・アプローチ」(①スクリーニング→②診断・重症度判定)として整理しています。実務上は次の3段階で理解するとわかりやすいです。
| 段階 | 目的 | 主な手段 |
|---|---|---|
| ① スクリーニング | 低栄養リスクのある人(at risk)を簡便に拾い上げる | MST・MUST・MNA-SF・NRS-2002 など |
| ② アセスメント/診断 | リスク陽性者を詳しく評価し、低栄養を診断する | SGA・身体計測・血液指標+GLIM基準 |
| ③ 重症度判定 | 低栄養の程度を判定し介入につなげる | GLIMの重症度(中等度/重度) |
2. 主要スクリーニングツール比較表
代表的な栄養スクリーニングツールの対象・項目・カットオフは次のとおりです。
| ツール | 対象 | 項目(配点) | カットオフ |
|---|---|---|---|
| MST Malnutrition Screening Tool | 成人全般 (入院・施設・外来) | 2項目:①意図しない体重減少②食欲低下・摂取量減少(計0〜5点) | 2点以上で低栄養リスクあり(0〜1=低リスク) |
| MUST Malnutrition Universal Screening Tool | 成人全般 (在宅・施設・急性期) | BMI/3〜6か月の体重減少%/急性疾患による絶食の影響(各0〜2・計0〜6点) | 0=低/1=中等度/2点以上=高リスク |
| MNA-SF Mini Nutritional Assessment-SF | 65歳以上の高齢者 | 6項目:摂取量・体重変化・移動・急性疾患/ストレス・認知/精神・BMI(測定不可時は下腿周囲長)(計0〜14点) | 12〜14=良好/8〜11=低栄養のおそれ/0〜7=低栄養 |
| NRS-2002 Nutritional Risk Screening 2002 | 入院患者(急性期) | 栄養障害スコア+疾患重症度スコア(各0〜3)+年齢70歳以上で+1 | 合計3点以上で栄養リスクあり |
このほか、食欲を簡易に問うSNAQや、血液データから算出するCONUT(アルブミン+総リンパ球数+総コレステロール、0〜12点:0〜1正常/2〜4軽度/5〜8中等度/9〜12重度)なども用いられます。CONUTは客観性が高い一方、スクリーニングよりアセスメント・経過観察の補助に使われます。
3. MST(栄養評価スケール)とは|2項目・2点以上でリスクあり
MST(Malnutrition Screening Tool)は、わずか2項目・1〜2分で実施できる簡便なスクリーニングツールです。看護師でも導入しやすく、急性期から回復期、外来の高齢者まで幅広く使えます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ① 体重減少 | 最近、意図せず体重が減ったか。減少の有無・程度に応じて配点 |
| ② 食欲・摂取量 | 食欲低下や食事摂取量の減少があるか |
| 合計点 | 0〜5点 |
| 判定 | 2点以上=低栄養リスクあり(at risk)/0〜1点=低リスク |
MSTの位置づけ:MSTで「リスクあり」とされた人は、そうでない人に比べて客観的な栄養指標が低く、在院日数が長いことが報告されています。簡便なため一次ふるい分けに適し、リスク陽性者をアセスメント(SGA・GLIM)につなげるのが基本的な使い方です。
※ 配点・設問文の確認:MSTの正確な設問文・配点は、原典(Ferguson M, et al. Nutrition. 1999)および各施設で採用している様式でご確認ください。カットオフ「2点以上=リスクあり」は広く用いられる標準値です。
4. MUST/MNA-SF/NRS-2002 の使い分け
- MUST:BMI・体重減少・急性疾患の3要素で評価。検査不要・短時間で、在宅から急性期まで汎用的に使えます。過栄養・低栄養の両方に目を向けられるのが特徴です。
- MNA-SF:65歳以上の高齢者専用。食事・移動・認知/精神面まで含む多面的な6項目で、在宅・施設・急性期の高齢者に有用。BMIが測れない場合は下腿周囲長で代用できます。
- NRS-2002:入院患者(特に手術・重症例)向け。栄養障害と疾患重症度の両面を評価でき、急性期病院で広く使われます。スコア計算がやや複雑で、ある程度の教育が必要です。
5. アセスメント(SGA・身体計測・血液指標)
スクリーニングで「リスクあり」となった人には、より詳しいアセスメントを行います。
- SGA(主観的包括的評価):体重変化・食事摂取・消化器症状・身体機能・疾患・身体所見から総合的に判定し、A(良好)/B(中等度低栄養)/C(高度低栄養)に分類します。低栄養評価の「ゴールドスタンダード」とされ、スクリーニングツールの妥当性検証の基準にも使われます。習得に時間を要するため、主にNST等の専門職が用います。
- 身体計測・血液指標:BMI・下腿周囲長・筋肉量、アルブミン・プレアルブミン等。PNI・GNRI・CONUTなどの指標も補助的に使われます。
6. GLIM基準への接続|スクリーニング陽性後の診断
スクリーニングで陽性となった人は、GLIM基準で低栄養を診断します。GLIMは世界共通の低栄養診断基準で、次の2系統の項目で評価します。
| 区分 | 項目 |
|---|---|
| 表現型基準(3項目) | ① 非意図的な体重減少 ② 低BMI ③ 筋肉量の減少 |
| 病因基準(2項目) | ④ 食事摂取量の減少または消化吸収の低下 ⑤ 炎症または疾患負荷 |
表現型から1つ以上+病因から1つ以上該当すれば低栄養と診断します。重症度は表現型項目に基づきStage1(中等度)/Stage2(重度)に判定します。詳しい手順は「GLIM基準による低栄養評価」で解説しています。
7. 診療報酬・介護報酬での位置づけ
栄養スクリーニング・アセスメントは、各種加算の要件として組み込まれています(点数・単位の詳細は最新通知でご確認ください)。
| 分野 | 主な加算・要件 |
|---|---|
| 医療(診療報酬) | 栄養サポートチーム加算(NST)/令和8年度新設のリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算(専従の管理栄養士配置・入院後早期の栄養評価 等) |
| 介護(介護報酬・令和6年度) | 栄養アセスメント加算・栄養マネジメント強化加算(LIFEへの提出。別紙様式4-1-1〔施設〕/4-3-1〔通所・居宅〕等を用いたスクリーニング・アセスメント・モニタリング)/科学的介護推進体制加算 |
介護のLIFE関連加算と提出実務は「LIFE加算ガイド」、回復期リハの栄養評価は「回復期リハビリテーション加算ガイド」、食事・口腔の加算は「食事・口腔に関する加算ガイド」で詳しく解説しています。
8. 使い分けのまとめ
- 急性期病院:NRS-2002またはMSTでスクリーニング → 陽性例はSGA・GLIMで精査。
- 回復期・高齢者施設・在宅:MNA-SFやMST、MUSTを活用。高齢者ではMNA-SFが多面的で有用。
- 共通:簡便なMSTで一次ふるい分け→リスク陽性者をアセスメント(SGA)・GLIM診断へ、という流れが実務的です。
9. よくある質問(FAQ)
Q1. MST(栄養評価スケール)は何点でリスクありですか?
MSTは「意図しない体重減少」と「食欲・摂取量の低下」の2項目で評価し、合計0〜5点です。2点以上で低栄養リスクありと判定するのが標準的です。簡便なため一次スクリーニングに適します。
Q2. MSTとMUSTの違いは?
MSTは体重減少と食欲の2項目のみで最短1〜2分。MUSTはBMI・体重減少%・急性疾患の3要素(0〜6点)で評価し、低栄養に加え過栄養にも目を向けられます。いずれも検査不要で簡便ですが、MUSTの方がやや情報量が多い評価です。
Q3. スクリーニングとアセスメント、GLIMの関係は?
スクリーニング(MST等)でリスクのある人を拾い上げ、アセスメント(SGA・身体計測・血液指標)で詳しく評価し、GLIM基準(表現型1+病因1以上)で低栄養を診断します。GLIMは「スクリーニング→診断・重症度判定」の2ステップで運用されます。
Q4. 介護のLIFEではどの様式で栄養スクリーニングを行いますか?
栄養アセスメント加算・栄養マネジメント強化加算では、別紙様式4-1-1(施設)・4-3-1(通所・居宅)等を用いてスクリーニング・アセスメント・モニタリングを行い、LIFEへ提出します。具体的な単位数・要件は最新の通知でご確認ください。
参考・出典
- GLIM基準(Cederholm T, et al. Clinical Nutrition. 2019)およびJSPEN(日本臨床栄養代謝学会)関連資料
- MST:Ferguson M, et al. Nutrition. 1999;15(6):458-464
- MUST(BAPEN)/MNA-SF(MNA®)/NRS-2002(ESPEN, Kondrup J, et al. 2003)
- 厚生労働省 令和8年度診療報酬改定・令和6年度介護報酬改定 関連通知、科学的介護情報システム(LIFE)
※ 各ツールの設問・配点・カットオフは原典・採用様式に従ってください。加算の点数・単位・算定要件は改定・通知で変動するため、最新の告示・通知でご確認ください。