病院には、医療法第25条第1項に基づいて原則年1回の「立入検査(医療監視)」が入ります。これは、病院が法令どおりの人員・構造設備を備え、適正な管理を行っているかを保健所(都道府県・保健所設置市・特別区)の医療監視員が確認するものです。本記事では、立入検査の目的・実施主体・頻度、検査項目の全体像(人員/管理/諸記録/診療/構造設備)、指摘されやすい事項、当日までの準備を、厚生労働省の立入検査要綱に基づいて整理します。診療報酬の「適時調査」(地方厚生局)とは別物である点も、冒頭で整理します。準備に使えるチェックリスト(書式48・無料)も用意しました。

⚠️ 最初に整理:「医療監視(立入検査)」と「適時調査」は別物です
立入検査(医療監視)=医療法第25条に基づき、保健所(都道府県・保健所設置市・特別区)が病院の人員・構造設備・管理を確認するもの。
適時調査=診療報酬(保険診療)の施設基準の適合性を、地方厚生(支)局が確認するもの。
根拠法令も実施機関も対象も異なります。本記事は前者(医療法の立入検査=医療監視)の解説です。診療報酬の施設基準の届出・定例報告は「施設基準の定例報告ガイド」をご覧ください。

📋 情報の時点:本記事は医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱(最新改正:令和8年6月12日 医政発0612第9号、実施通知:同第10号)等に基づく一般的な解説です(2026年7月時点)。検査項目・運用の詳細は自治体(保健所)ごとに異なる場合があります。指摘されやすい事項は一般論であり、「これを満たせば完全」というものではありません。必ず最新の要綱・自治体の通知をご確認ください。

1. 立入検査(医療監視)とは

立入検査は、医療法第25条第1項の規定に基づき、病院が「医療法及び関連法令により規定された人員及び構造設備を有し、かつ、適正な管理を行っているか否か」を検査し、病院を科学的で、かつ、適正な医療を行う場にふさわしいものとすることを目的とする検査です。現場では「医療監視」とも呼ばれます。

項目内容
根拠医療法第25条第1項
目的病院が法令どおりの人員・構造設備を有し、適正な管理を行っているかを検査・指導する
対象医療法に基づくすべての病院(診療所・助産所も医療法25条の対象だが、要綱に基づく系統的な検査は病院が中心)
頻度原則 年1回
実施主体都道府県知事・保健所を設置する市の市長・特別区の区長が任命した医療監視員
方法医療監視員が施設に赴き、第1表(施設表)・第2表(検査表)を作成。検査基準のうち該当項目を検査・判定

2. 医療監視・適時調査・個別指導の違い

医療機関に入る行政の検査・指導は複数あり、混同されがちです。根拠法令と実施機関で整理すると次のとおりです。

種類根拠実施機関主な確認対象
立入検査(医療監視)医療法25条1項保健所(都道府県・保健所設置市・特別区)人員・構造設備・管理(医療安全・院内感染・記録等)
適時調査健康保険法等(保険診療)地方厚生(支)局診療報酬の施設基準の適合性(届出どおり運用されているか)
個別指導健康保険法(指導)地方厚生(支)局・都道府県診療報酬の請求内容・診療内容の妥当性

💡 使い分けのポイント:「保健所が来る」なら医療監視(医療法)、「厚生局が来る」なら適時調査・個別指導(診療報酬)と押さえておくと混乱しません。施設基準の届出・8月の定例報告は診療報酬側の話で、施設基準の定例報告ガイドで解説しています。

3. 検査の流れ

  1. 事前通知:多くの自治体では、実施日・提出書類・当日の段取りが事前に通知されます(自治体により運用は異なります)。
  2. 書面の事前提出:施設表・従業者名簿・各種委員会の記録・診療録関係など、指定された書類を事前または当日に提出します。
  3. 当日の実地検査:医療監視員が施設に赴き、第1表(施設表)を作成のうえ、検査基準の該当項目を確認し判定します。
  4. 判定・講評:検査結果(第2表=検査表等)に基づき、適合・不適合等の判定が行われます。
  5. 改善指導・改善計画書:不適合事項があるときは、病院の開設者・管理者に事実が通知され、改善計画書の提出を求められることも含め、改善のために必要な指導が行われます。

4. 検査項目の全体像

立入検査の検査基準は、大きく人員(従業者)・管理・諸記録・診療・構造設備に分かれます。代表的な項目は次のとおりです(要綱の検査基準に基づく整理)。

区分主な検査項目(例)
従業者(人員)医師数・歯科医師数・薬剤師数・看護師数・看護補助者数・(管理)栄養士数などの員数(医療法上の標準数を満たしているか)
管理体制医療に係る安全管理のための体制(指針・委員会・研修・報告)/院内感染対策のための体制/医薬品に係る安全管理体制/医療機器に係る安全管理体制/診療用放射線に係る安全管理/医師の宿直/職員の健康管理/清潔保持
諸記録診療録の管理・保存/助産録の管理・保存/診療に関する諸記録の整理/エックス線装置等に関する記録
診療・医療機器医薬品の取扱い/医療機器等の清潔保持/医療機器の保守点検
構造設備病室等(面積・区画等)/放射線装置及び同使用室(管理区域・放射線障害の防止に必要な設備等)

5. 指摘されやすい事項(一般論)

以下は一般的に確認・指摘されやすいとされる事項の例で、自治体や施設の状況により異なります。網羅的なものではありません。

  • 人員:医師・看護職員等の員数が医療法の標準数を満たしているか。非常勤の常勤換算・勤務実態と名簿の整合。
  • 各種委員会・研修:医療安全管理委員会・院内感染対策委員会等の定期開催の記録、従業者への研修の実施記録があるか。指針が整備・更新されているか。
  • 医薬品・医療機器の安全管理:安全管理責任者の配置、業務手順書、研修・保守点検の記録。
  • 診療録・諸記録:記載・管理・保存が適切か。必要な諸記録が整理されているか。
  • 清潔保持・防火防災:清掃・消毒・滅菌の運用、消防計画・防火管理者。
  • 構造設備:病室面積・区画、放射線管理区域の表示・測定など。
  • 医療情報システムの安全管理(サイバーセキュリティ):近年の重点項目。→ 詳しくは「サイバーセキュリティの立入検査対応ガイド」で解説しています。

6. 当日までの準備|チェックリスト(書式48・無料)

立入検査は「日頃の運用と記録が整っているか」を確認するものです。直前に慌てないよう、委員会記録・研修記録・名簿・各種手順書・保守点検記録などを区分ごとに事前点検しておくと安心です。当サイトで、区分に沿った準備チェックリストを用意しました。

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7. あわせて備えたい関連テーマ

8. よくある質問(FAQ)

Q1. 立入検査(医療監視)と適時調査は同じですか?
別物です。立入検査(医療監視)は医療法第25条に基づき保健所(都道府県・保健所設置市・特別区)が人員・構造設備・管理を確認するもの。適時調査は診療報酬の施設基準の適合性を地方厚生(支)局が確認するものです。根拠法令も実施機関も異なります。

Q2. 立入検査はどのくらいの頻度で来ますか?
病院に対しては原則年1回実施されます。医療法に基づくすべての病院が対象です(診療所・助産所も医療法25条の対象ですが、要綱に基づく系統的な検査は病院が中心です)。

Q3. 誰が検査に来ますか?
都道府県知事・保健所を設置する市の市長・特別区の区長が任命した医療監視員が施設に赴いて検査します。

Q4. 何を検査されますか?
大きく、人員(医師・看護師等の員数)/管理(医療安全・院内感染・医薬品/医療機器の安全管理・清潔保持など)/諸記録(診療録等)/診療・医療機器/構造設備です。近年は医療情報システムの安全管理(サイバーセキュリティ)も重点です。

Q5. 不適合があるとどうなりますか?
不適合事項があるときは、病院の開設者・管理者に事実が通知され、改善計画書の提出を求められることも含め、改善のために必要な指導が行われます。日頃の運用と記録を整えておくことが最善の対策です。

Q6. サイバーセキュリティも検査されますか?
医療情報システムの安全管理は近年の重点項目です。運用管理規程・台帳・インシデント対応体制の整備が求められます。詳しくは「サイバーセキュリティの立入検査対応ガイド」をご覧ください。

参考・一次情報

※ 本記事は立入検査要綱等に基づく一般的な解説です(2026年7月時点)。検査項目・運用は自治体(保健所)ごとに異なる場合があり、記載の「指摘されやすい事項」は一般論であって網羅的・確定的なものではありません。実際の対応にあたっては、必ず最新の要綱・自治体の通知・自院を所管する保健所の案内をご確認ください。