レセプト(診療報酬明細書)の摘要欄に記載する根拠・理由のうち、定型的なものは、あらかじめ定められた文言とコード(選択式コメント)で記載します。令和6年度診療報酬改定では、従来フリーテキストで記載していた多くの項目が選択式コメントへ移行・追加され、医療事務の現場で確認すべき点が増えました。本記事では、選択式コメントの仕組み・構造・記載が必要になる代表的な場面・記載漏れによる返戻/査定のリスクと対策・公式一覧の入手と使い方を、初めて担当する方にも分かるように整理します。

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この記事のポイント

  • 選択式コメントは、摘要欄に記載する理由・根拠を定められた文言+コメントコードで記載する仕組み
  • 令和6年度改定でフリーテキストから選択式への移行が大きく進んだ(審査の効率化が背景)
  • 必要なコメントの記載漏れ・誤りは返戻・査定の原因になる
  • 正式な文言・コード・対象項目は記載要領通知と公式の「コメントマスター」で確認する

1. レセプトの「摘要欄」と選択式コメントとは

レセプトの摘要欄は、診療行為の算定にあたって、回数・日数・実施理由・医学的根拠など、点数だけでは伝わらない情報を補足するための欄です。何をどのように記載するかは、厚生労働省の「診療報酬請求書等の記載要領」(記載要領通知)で定められています。

このうち、記載内容が定型化できるものについては、各医療機関が自由に文章を書く(フリーテキスト)のではなく、あらかじめ用意された文言とコード(コメントコード)から選んで記載します。これが選択式コメントです。レセプトの電子化・オンライン請求が前提となり、コメントを構造化(標準化)することで審査側のコンピュータチェックを行いやすくする狙いがあります。

種類内容
選択式コメントあらかじめ定められた文言(固定文)とコメントコードを用いて記載する。必要に応じて数値・年月日・薬剤名などを補記する。
フリーコメント(自由記載)定型の選択肢では表現できない事情を、自由な文章で記載する。選択式コメントが用意されている項目では、原則として選択式を用いる。

2. なぜ令和6年度改定で選択式コメントが拡大したのか

選択式コメント自体は以前から存在しましたが、令和6年度診療報酬改定(2024年)では、従来フリーテキストで記載していた多くの項目が選択式コメントに置き換え・追加されました。これは記載要領の改正によるもので、背景には次のような狙いがあります。

  • 審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険団体連合会)における審査の効率化・標準化
  • レセプトの電子化・オンライン請求を前提とした記載内容の構造化(コンピュータチェックのしやすさ)
  • 医療機関ごとの記載のばらつきを抑え、必要な情報を確実に把握できるようにすること

※ 情報の時点:選択式コメントの大幅な拡大は令和6年度(2024年)改定が中心です。令和8年度(2026年)改定でも、対象項目・文言・コードの追加や見直しが行われる可能性があります。実際に算定・請求する際は、必ず最新の記載要領通知と、お使いのレセコン(医事会計システム)に反映された最新のコメントマスターをご確認ください。

3. 選択式コメントの構造(パターン)

選択式コメントは、原則としてコメントコード(識別番号)と固定文がセットになっています。固定文をそのまま記載するものもあれば、文言の一部に数値・年月日・自由文などを補って完成させるものもあります。代表的なパターンのイメージは次のとおりです(文言は説明用の例で、実際の固定文・コードは公式一覧でご確認ください)。

パターン内容記載イメージ(例)
固定文のみ定められた文言をそのまま記載「(定型の理由文)」
固定文+数値文言の一部に回数・数量などの数値を補記「○○のため(回数:◯回)」
固定文+年月日文言の一部に日付を補記「前回実施年月日:◯年◯月◯日」
固定文+自由文(テキスト)文言の一部に医療機関が自由記載を補記「その他の理由:(自由記載)」

これらのコメントコードと文言は、レセコンや電子カルテのコメントマスターとして登録・管理されており、画面上でコードや文言を選択して入力します。改定の際はマスターの更新が必要になります(後述)。

4. 選択式コメントの記載が必要になる代表的な場面

選択式コメント(および摘要欄への記載)が求められるのは、主に「標準的な算定と異なる場合の理由」「算定要件への該当を示す情報」を伝える必要がある場面です。診療区分ごとの代表的な例は次のとおりです(どの項目で具体的に必須となるかは記載要領で定義されます)。

区分コメントが求められる代表的な場面
投薬・注射用法・用量・投与日数が標準と異なる場合の理由、特定の薬剤を選択した理由 など
検査・病理同一項目を短期間に複数回実施した医学的理由、判断料・加算の算定根拠 など
画像診断複数回撮影・特定の条件で実施した理由 など
処置・手術複数回・両側実施、所定点数を超える特別な医学的必要性 など
リハビリテーション標準的算定日数を超えて継続する理由、起算日・発症(手術)日、対象となる疾患名 など
在宅医療訪問・指導の状況、特別な指示や算定要件への該当 など
入院料・各種加算算定開始日、施設基準・算定要件への該当状況 など

上表はあくまで場面の例示です。実際にどの診療行為でどのコメントが必要か(必須・任意の別、文言、コード)は、診療報酬点数表・記載要領通知・公式のコメントマスターで個別にご確認ください。

5. 記載漏れ・誤りのリスク(返戻・査定)

必要な選択式コメントが記載されていない、または内容に不備があると、レセプトが正しく処理されず、次のような不利益につながります。

区分内容影響
返戻(へんれい)必要な記載の不備等により、レセプトが医療機関へ差し戻されること修正・再請求が必要となり、入金が翌月以降にずれ込む
査定(さってい)医学的妥当性や算定要件の充足が示されず、点数が減点・査定されること請求額が減る(過剰・不適切と判断されると返金対象になることも)

縦覧・突合点検にも注意:審査は単月のレセプトだけでなく、同一患者の複数月をまたいで確認する縦覧点検や、医科レセプトと調剤レセプトを照合する突合点検でも行われます。「前回実施日」「投与日数」などのコメントは、月をまたいだ整合性まで意識して記載する必要があります。

6. 公式「選択式コメント一覧(コメントマスター)」の入手と使い方

選択式コメントの正式な文言・コード・対象項目は、次の一次情報で確認します。記憶や前年度の資料だけに頼らず、改定対応版を確認することが重要です。

  • 診療報酬請求書等の記載要領(記載要領通知):摘要欄に何を記載すべきか、選択式コメントの取り扱いが定められています。
  • 公式のコメントマスター(電子点数表関連のマスターファイル):コメントコードと固定文の一覧。社会保険診療報酬支払基金の「診療報酬情報提供サービス」等で公開・ダウンロードできます。
  • 審査支払機関(支払基金・国保連合会)の案内:レセプト記載や審査に関する通知・事務連絡。

実務上は、これらの公式マスターを反映したレセコン・電子カルテのコメントマスターを、ベンダーの改定対応アップデートで更新して使うのが一般的です。改定時期には、マスターが最新版に更新されているかをベンダーに確認しましょう。

7. 院内で取り組む運用のコツ

  • マスターの更新確認:改定対応版のコメントマスターが反映されているか、レセコンベンダーに確認する。
  • 算定ルールとコメントの対応表を整備:自院でよく算定する項目について、「どの場面でどのコメントが必要か」を一覧化して院内マニュアルにする。
  • 点検フローの明確化:事務での一次点検と、必要に応じた医師確認の手順を決める。
  • 返戻・査定事例の蓄積:返戻・査定の理由を記録し、再発防止のチェックリストに反映する。

院内マニュアル化のご相談:「自院の算定項目 × 必要コメントの対応表」や、返戻・査定対策のチェックリストの整備は、当サイトのカスタマイズ・コンサルティング(有料)でも作成を支援しています。汎用の書式雛形は書式・様式の雛形ライブラリから無料でダウンロードできます。

8. よくある質問(FAQ)

Q1. 選択式コメントとフリーコメントの違いは?
選択式コメントは、あらかじめ定められた文言とコメントコードを使って記載する方式です。フリーコメント(自由記載)は、定型の選択肢で表現できない事情を文章で記載する方式です。選択式コメントが用意されている項目では、原則として選択式を用います。

Q2. 選択式コメントの一覧(コードや文言)はどこで確認できますか?
厚生労働省の「診療報酬請求書等の記載要領(記載要領通知)」と、社会保険診療報酬支払基金が提供する「診療報酬情報提供サービス」等で公開されるコメントマスターで確認できます。実務では、これらを反映したレセコン・電子カルテのコメントマスターを使用します。

Q3. コメントを記載し忘れるとどうなりますか?
必要なコメントの不備はレセプトの返戻(差し戻し)の原因となり、修正・再請求で入金が遅れます。また、医学的妥当性や算定要件の充足が示されない場合は査定(減点)につながります。

Q4. 令和6年度改定で選択式コメントはどう変わりましたか?
従来フリーテキストで記載していた多くの項目が、選択式コメントへ移行・追加されました。審査の効率化・標準化が背景です。令和8年度(2026年)改定でも追加・見直しの可能性があるため、最新の記載要領をご確認ください。

Q5. レセコンに最新のコメントを反映するには?
通常はレセコン・電子カルテベンダーが提供する改定対応アップデートで、コメントマスターが最新版に更新されます。改定時期には、マスターが最新版になっているかをベンダーに確認してください。

参考・一次情報

  • 厚生労働省「診療報酬請求書等の記載要領等について」(記載要領通知)および同改正通知
  • 社会保険診療報酬支払基金「診療報酬情報提供サービス」(電子点数表・コメントマスター等)
  • 社会保険診療報酬支払基金/国民健康保険団体連合会(審査・レセプト記載に関する案内)

※ 本記事は令和6年度・令和8年度改定の整理に基づく一般的な解説です。コメントコード・固定文・対象項目は改定の都度見直されます。具体的な記載は、必ず最新の記載要領通知・公式コメントマスター・お使いのレセコンの最新版でご確認ください。