2026年(令和8年)6月から、病院やクリニックで支払う医療費のしくみが一部変わります。これは「診療報酬改定(しんりょうほうしゅうかいてい)」という、2年に一度の見直しによるものです。むずかしい言葉が多くて不安に感じる方も多いと思いますが、ご家族の生活に関係する変化は実はいくつかにしぼられます。本記事では、患者さん・ご家族の目線で「お財布にどう影響するの?」を、専門用語をできるだけ使わずにやさしく解説します。

いそがしい方向け・3つのポイント:

  • 入院中の食事代が上がります(2026年6月から、1食あたり550円程度へ)
  • 先発のお薬をあえて選ぶと、追加のお金がかかる場合が増えます(差額の半分を負担)
  • 病院の窓口で払う初診料などの変化はごくわずか(数円程度)。大きく値上がりするわけではありません

1. 2026年6月、医療費の何が変わるの?

医療費のねだん(医療機関が受け取る点数)は、国が2年に一度見直しています。これを「診療報酬改定」といいます。2026年は、次の2段階で変わります。

  • 2026年4月1日:おもにお薬のねだん(薬価)が見直されました
  • 2026年6月1日:診察料や入院料、各種サービスのねだんが見直されます

なぜ見直すの?近年の物価高や、医療・介護で働く人の賃上げに対応するためです。患者さんの負担が増える部分もありますが、その背景には「必要な医療を安定して続けられるようにする」というねらいがあります。

2. 病院・クリニックの窓口で払うお金(影響は小さめ)

「初診料(はじめて受診したときの料金)」や「再診料(2回目以降の料金)」そのものは、大きくは変わりません。今回は物価高に対応する小さな上乗せ(物価対応料)が新しくできましたが、患者さんの窓口負担としては1回あたり数円程度の変化にとどまります。

たとえば:物価対応料は初診・再診で数点(数十円分)が上乗せされます。窓口での自己負担は通常その1〜3割なので、実際の負担増は1回あたり数円ほどです。「急に大幅値上げ」ということはありません。

3.【家計に直結①】入院したときの食事代が上がります

入院中の食事代(入院時食事療養費の自己負担分)が、2026年6月1日から引き上げられます。食材費や調理にかかる費用(光熱水費)の高騰を反映したものです。

区分 2026年6月1日から(一般的な所得の方)
入院中の食事代(1食あたりの自己負担) 550円程度(これまでより1食あたり約40円の引き上げ)

1日3食だと?1食あたり約40円の引き上げなら、1日で約120円、30日入院すると約3,600円の負担増となる計算です。長期入院のご家族がいる場合は、家計への影響を見込んでおくと安心です。

負担が軽くなる制度もあります:住民税が非課税の世帯など、所得が低い方には食事代の軽減(減額認定)があります。該当しそうな場合は、加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合・市区町村の国保など)に「限度額適用・標準負担額減額認定証」について問い合わせてみてください。

4.【家計に直結②】先発のお薬を選ぶと、追加のお金がかかることがあります

同じ成分で安価な「後発医薬品(ジェネリック)」があるのに、あえて先発(先に発売された)のお薬を希望した場合、差額の一部を「特別の料金」として追加で支払うしくみがあります(長期収載品の選定療養)。

このしくみは2024年から始まっていますが、2026年6月から、患者さんが負担する割合が「差額の4分の1」から「差額の2分の1」に引き上げられます。先発を選んだときの追加負担が、これまでより大きくなるということです。

例(1錠あたり) 内容
先発のお薬 100円
ジェネリック 60円
差額 40円
追加で支払う特別の料金(2026年6月から) 差額の2分の1=20円程度(+消費税相当。通常の窓口負担とは別)

ポイント:医師が「医療上の必要がある」と判断して先発を処方する場合などは、この追加負担はかかりません。お薬代を抑えたい方は、薬局で「ジェネリックにできますか?」と相談してみるとよいでしょう。

5. マイナ保険証でどう変わる?

2026年の改定では、医療機関が「マイナ保険証(マイナンバーカードの健康保険証利用)」に対応する体制づくりが、いっそう進められます。患者さん側にとっては、次のようなメリットがあります。

  • 過去のお薬や健診の情報を医師・薬剤師が確認でき、より安全で適切な医療を受けやすくなる
  • 高額療養費の「限度額」が自動的に適用され、窓口での一時的な立て替えが不要になりやすい
  • 転職・引っ越しなどで保険が変わっても、保険証の切り替えを待たずに使いやすい

マイナ保険証を持っていない場合は?これまでの健康保険証の代わりに「資格確認書」が使えます。受診できなくなるわけではありませんので、ご安心ください。詳しくは加入している保険者にご確認ください。

6. リハビリ・在宅医療を受けているご家族へ

入院してリハビリを受ける場合、入院直後(最初の数日)のリハビリがより重視されるよう見直されました。早い時期から体を動かすことが、回復や在宅復帰につながりやすくなります。在宅医療(自宅での療養)についても、医療と介護がより連携しやすいしくみが整えられています。これらは患者さんの自己負担そのものを大きく変えるものではありませんが、受けられるケアの質の向上を目指した変更です。

7.「医療費が高くなった」と感じたら

1か月の医療費の自己負担が高額になったときは、一定額を超えた分が戻ってくる「高額療養費制度」があります。年齢や所得に応じて自己負担の上限が決まっており、入院・手術などで負担が大きくなったときの支えになります。

困ったときの相談先:

  • 医療費の支払いが不安なとき → 病院の医療相談室・地域連携室(医療ソーシャルワーカー)
  • 高額療養費・食事代の軽減 → 加入している健康保険(協会けんぽ・健保組合・市区町村の国保)
  • 制度全般 → お住まいの市区町村の窓口

8. まとめ

  • 2026年6月の医療費の見直しで、窓口の診察料の変化はごくわずか
  • 家計に効くのは「入院中の食事代の引き上げ」と「先発薬を選んだときの追加負担の増加」の2つ
  • マイナ保険証には患者側のメリットがあり、持っていなくても受診はできる
  • 負担が大きいときは高額療養費や食事代の軽減などの制度を活用できる

医療機関の方・実務でお調べの方へ:届出・算定など実務面の詳細は「令和8年度改定 6月1日施行 実務チェックリスト」、改定全体は「診療報酬改定2026 完全ガイド」をご覧ください。

参考・出典

  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
  • 厚生労働省「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39830.html
  • 令和8年度診療報酬改定の概要【医科全体版】(厚生労働省保険局医療課)

※ 本記事は2026年6月1日施行時点の情報をやさしく要約したものです。金額は所得区分や個別の状況によって異なります。正確な負担額は、医療機関の窓口や加入している健康保険にご確認ください。