令和8年度(2026年)診療報酬改定では、医療DXに関する加算体系が全面的に再編されます。医療DX推進体制整備加算(8点)・医療情報取得加算(1〜3点)はすべて廃止となり、令和8年6月1日から電子的診療情報連携体制整備加算(初診最大15点・入院初日最大160点)が新設されます。既存の届出があっても改めて届出が必要という点が現場困惑ポイントです。本記事では確定点数・要件・届出スケジュールを告示第69号・留意事項通知(保医発0305第6号)・疑義解釈に基づき解説します。

1. 医療DX加算の統廃合マップ — 廃止・新設・存続の全体像

⚠️ 現場困惑ポイント:医療DX推進体制整備加算と医療情報取得加算は令和8年5月31日で廃止。6月1日から算定したい場合は新たに届出が必要です(既存届出の流用不可)。

廃止される加算(令和8年5月31日まで)

加算名点数算定単位廃止後の取扱い
医療DX推進体制整備加算 8点 初診・月1回 電子的診療情報連携体制整備加算へ移行
医療情報取得加算1 3点 初診・月1回 廃止(統合・再編)
医療情報取得加算2 1点 初診・月1回(電子資格確認あり) 廃止(統合・再編)
医療情報取得加算3 2点 再診・3月1回 廃止(統合・再編)
医療情報取得加算4 1点 再診・3月1回(電子資格確認あり) 廃止(統合・再編)

新設される加算(令和8年6月1日〜)

加算名点数算定単位主な要件
電子的診療情報連携体制整備加算1(外来) 15点 初診・月1回 電子処方箋・電子カルテ・電子カルテ情報共有サービス等 最高水準
電子的診療情報連携体制整備加算2(外来) 9点 初診・月1回 電子処方箋・電子カルテ等 中水準
電子的診療情報連携体制整備加算3(外来) 4点 初診・月1回 オンライン資格確認の活用等 基本水準
電子的診療情報連携体制整備加算(外来・再診) 2点 再診・月1回 初診と同一の施設基準届出(区分に関わらず一律2点)
電子的診療情報連携体制整備加算1(入院)
A207-5
160点 入院初日のみ 最高水準(外来加算1と対応)
電子的診療情報連携体制整備加算2(入院)
A207-5
80点 入院初日のみ 中水準(外来加算2と対応)

📌 明細書発行体制等加算(1点)は存続しますが、電子的診療情報連携体制整備加算を算定した月は別に算定できません。届出を行った保険医療機関は明細書発行体制等加算の算定が自動的に不可となります。

加算区分1/2/3の施設基準の概要

留意事項通知(保医発0305第6号)によると、電子的診療情報連携体制整備加算は以下を基本要件としています。

  • オンライン資格確認で取得した診療情報・薬剤情報等を実際の診療に活用できる体制
  • 電子処方箋の導入
  • 電子カルテの導入
  • 電子カルテ情報共有サービスとの接続インターフェース
  • サイバーセキュリティ対策の推進(バックアップ等)

⚠️ 加算1/2/3それぞれの具体的な要件項目数・組み合わせの詳細は告示第70号(基本診療料施設基準)・保医発0305第7号で確認してください。疑義解釈(その2・問1)では「加算1の施設基準(11)のイ及びウを満たす場合は電子カルテ情報共有サービス接続の要件を満たしたものとみなす」等の解釈が示されています。

2. マイナ保険証対応・オンライン資格確認の要件変更

令和8年6月以降も継続して必要な対応

令和6年12月からマイナ保険証が基本となりましたが、令和8年度改定でもオンライン資格確認の活用は電子的診療情報連携体制整備加算の基本要件として維持されています。以下の対応は引き続き必要です。

  • オンライン資格確認システムの稼働:受付窓口でのカードリーダー設置・運用
  • 診療情報・薬剤情報の実際の診療への活用:単に確認するだけでなく、診療に活用していることが要件
  • 院内掲示・ウェブサイトへの情報公開:医療DX推進の取組状況を掲示・ウェブ公開

令和8年度改定で新たに追加された要件

加算1(最高水準)を算定するためには、以下のDX対応が必要です。

対応事項概要
電子処方箋の導入 「電子処方箋管理サービスの運用について」に基づく電子処方箋を発行する体制
電子カルテの導入 電子カルテシステムを導入し、運用していること
電子カルテ情報共有サービスとの接続 電子カルテ情報共有サービスとの接続インターフェースを有すること(代替要件あり)
サイバーセキュリティ対策 医療情報システムの安全管理ガイドラインに基づく対策(次章参照)

3. サイバーセキュリティ要件の解説 — 現場での具体的な対応

⚠️ 現場困惑ポイント:サイバーセキュリティ対策は「やっているつもり」では不十分。疑義解釈(その2)で詳細が示されており、特にバックアップの「オフライン保管」要件に注意が必要です。

バックアップ要件(疑義解釈その2 問27〜31より)

電子的診療情報連携体制整備加算(入院・A207-5)の施設基準には、以下のバックアップ要件が含まれます。外来加算の施設基準でも同様の対応が求められます。

要件内容・具体例
複数方式でのバックアップ 例:HDDとRDX(Removable Disk Exchange system)、クラウドとNAS(Network Attached Storage)など複数媒体での保存
オフライン保管 バックアップの一部は常時ネットワークから切り離した状態で保管すること(データ転送時を除く)
世代管理 日次バックアップの場合、少なくとも3世代以上確保すること
対象システム 電子カルテシステム、オーダーリングシステム、レセプト電算処理システム

📌 クラウドサービス利用時の注意:クラウドサービスのみのバックアップは要件を満たさない場合があります。クラウドから専用アプリでRDX等の別媒体に抽出保存する方法、または常時ネットワークから切り離した状態でのバックアップ転送が必要です。医療情報システム・サービス事業者との契約書等で確認してください。

院内対応チェックポイント

  • ☐ 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(厚生労働省)を参照・遵守している
  • ☐ バックアップを複数方式(2種類以上の媒体)で確保している
  • ☐ バックアップの一部をオフライン(ネットワーク非接続)で保管している
  • ☐ 世代管理(日次なら3世代以上)を実施している
  • ☐ サイバー攻撃への対応手順書(インシデント対応計画)を整備している
  • ☐ 職員へのセキュリティ教育を定期的に実施している

4. 感染対策・医療安全に関する施設基準の変更

外来感染対策向上加算(存続・要件変更)

外来感染対策向上加算(6点・月1回)は令和8年度改定でも存続しますが、以下の関連加算と組み合わせた算定体系は変更なしです。

加算名点数算定条件
外来感染対策向上加算 6点(月1回) 感染防止対策の基本要件を満たす診療所
連携強化加算 3点(月1回) 感染対策向上加算1を算定する病院への報告体制あり
サーベイランス強化加算 1点(月1回) JANIS・J-SIPHEなど地域・全国サーベイランス参加
抗菌薬適正使用体制加算 5点(月1回) Access抗菌薬使用比率60%以上等の要件あり
発熱患者等対応加算 20点(月1回) 外来感染対策向上加算の上乗せ(発熱患者等対応時)

📌 電子的診療情報連携体制整備加算との関係:電子的診療情報連携体制整備加算を算定した月は外来感染対策向上加算も同一月に算定できません(A000注16・A001注19の規定による)。

5. 外来機能分化に関する点数・要件変更

かかりつけ医機能と地域包括診療加算の再編

令和8年度改定では、かかりつけ医機能報告制度(令和6年4月施行)と連動する形で、外来系加算が整理されています。

地域包括診療加算の変更(診療所向け)

令和8年度改定では「認知症地域包括診療加算」が廃止・統合され、地域包括診療加算に認知症患者等の区分が設けられました。

区分・患者種別令和6年度(現行)令和8年度(改定後)増減
地域包括診療加算1
認知症を有する患者等
(認知症地域包括診療加算1: 38点) 38点 統合(実質変更なし)
地域包括診療加算1
その他の慢性疾患等を有する患者
28点 28点 変更なし
地域包括診療加算2
認知症を有する患者等
(認知症地域包括診療加算2: 31点) 31点 統合(実質変更なし)
地域包括診療加算2
その他の慢性疾患等を有する患者
21点 21点 変更なし

📌 統合のポイント:従来は「地域包括診療加算」と「認知症地域包括診療加算」が別建てでしたが、令和8年度改定で一本化されました。認知症患者等への診療は引き続き高い評価(38点・31点)が維持されています。

紹介受診重点医療機関の要件(病院向け)

外来機能報告対象病院等(紹介受診重点医療機関)における選定療養費の徴収対象は継続されます。200床以上の病院で紹介なし初診・再診の場合の選定療養費が引き続き必要です。

6. 働き方改革関連加算

ベースアップ評価料の「新規」vs「継続」の整理

令和6年6月に新設されたベースアップ評価料(外来・訪問看護等)は、令和8年度改定でも継続されます。令和8年6月以降は「継続」として届出を行います。

📌 ベースアップ評価料の詳細(賃上げ要件・算定ルール・届出方法)については、厚生労働省のベースアップ評価料特設ページをご確認ください。

医師の時間外労働上限規制対応

令和6年4月から適用された医師の時間外労働上限規制(年間960時間・特例水準)への対応状況は、施設基準の一部に組み込まれています。令和8年度改定でも引き続き要件として維持されます。

7. 施設基準届出の4月・6月二段階スケジュールと手続きガイド ★現場困惑ポイント

⚠️ 現場困惑ポイント:令和8年度改定は「薬価は4月1日、診療報酬本体は6月1日」という二段階施行です。届出書類の準備・提出を2回に分けて行う必要があります。また、医療DX推進体制整備加算の届出があっても、電子的診療情報連携体制整備加算は必ず新規届出が必要(疑義解釈その1 問3)。

二段階施行スケジュールの整理

施行日対象対応すべき届出
令和8年4月1日 薬価改定・一部診療報酬 薬価改定対応・後発品使用体制等の届出
令和8年6月1日 診療報酬本体(全般) 電子的診療情報連携体制整備加算・各入院料等の新規・変更届出

「新規届出」「再届出(変更)」「経過措置」の判定方法

区分対象となる施設基準対応
新規届出が必要 令和8年度新設の加算・基準(電子的診療情報連携体制整備加算、リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算 等) 6月1日算定開始に向け、6月初旬〜前月までに地方厚生局へ提出
再届出(変更)が必要 施設基準が改正された加算で届出要件が変わるもの(機能強化加算等) 経過措置期間(一部は令和9年6月まで)を確認した上で届出
届出不要 令和8年5月31日現在で届出中の入院基本料等(名称・点数変更のみ) 引き続き算定可能。実績が要件を満たさなくなった場合は変更届出が必要

届出スケジュールの目安

  • 4月:薬価改定対応・DX体制の現状確認・施設基準棚卸し
  • 4〜5月:新設・変更加算の要件確認、届出書類の準備
  • 5月中旬〜下旬:地方厚生局への事前照会(不明点の確認)
  • 6月初旬:届出書類の提出・受理確認
  • 6月1日〜:新体制での算定開始

届出漏れは遡及算定不可

施設基準の届出は、受理された翌月(または同月)からしか算定できません。6月1日から算定したい場合は6月1日付で受理される必要があります。6月中旬以降の届出では、7月1日からの算定となります。届出漏れに気づいた時点から算定開始となるため、早めの準備が重要です。

地方厚生局への照会のポイント

  • 電子的診療情報連携体制整備加算の加算区分(1/2/3)の自院の該当判定
  • 既存の医療DX推進体制整備加算届出からの移行手続きの確認
  • 複数の施設基準を同時に変更する場合の優先順位
  • ⚠️ 電子申請対象拡大(2026年1月〜):電子申請が可能な届出については積極的に活用すること

8. 改定対応チェックリスト — 院内でまず確認すること

医療DX対応チェックリスト

確認事項チェック備考
現在算定中の医療DX加算の把握(医療DX推進体制整備加算 or 医療情報取得加算) 5月31日で廃止されるため対応必要
電子的診療情報連携体制整備加算の区分(1/2/3)の自院判定 地方厚生局に照会することを推奨
電子処方箋の導入状況の確認 加算1算定には原則必要
電子カルテシステムの導入状況の確認 加算1算定には必要
電子カルテ情報共有サービスとの接続状況の確認 加算1要件(代替要件あり)
バックアップの複数方式・オフライン保管の確認 サイバーセキュリティ要件
院内掲示・ウェブサイトへのDX取組情報の公開 公開義務あり
新規届出書類の準備・提出(遅くとも6月初旬まで) 既存届出の流用不可

⚠️ 未確定事項まとめ

項目現状確認方法
電子的診療情報連携体制整備加算1/2/3の具体的な施設基準要件の差異 概要は確認済み・詳細区分は要確認 告示第70号・保医発0305第7号
機能強化加算の経過措置の詳細 令和9年6月1日以降に引き続き算定する場合に届出が必要 保医発0305第7号

参考文献・根拠資料

  • 令和8年厚生労働省告示第69号(医科点数表)— 令和8年3月5日
  • 保医発0305第6号(診療報酬の算定方法の一部改正等に伴う実施上の留意事項について)— 令和8年3月5日
  • 疑義解釈資料の送付について(その1)— 令和8年3月23日
  • 疑義解釈資料の送付について(その2)— 令和8年4月1日
  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」— https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html