令和8年(2026年)6月1日施行の診療報酬改定では、「物価対応料」の新設、急性期病院A・B の追加新設(急性期一般入院料1〜6は継続存続)、ベースアップ評価料の大幅拡充、医療DX評価の再編など、多岐にわたる変更が行われます。本記事では基本診療料に絞って改定前後を比較し、現場で押さえるべきポイントを解説します。

1. 2026年改定の背景と改定率

令和8年度診療報酬改定は、令和8年6月1日から施行されます(薬価・検体検査料の一部は4月1日施行)。本体改定率は令和8年度・9年度の2年度平均で+3.09%です。令和8年度単年は+2.41%、令和9年度単年は+3.77%となります。

内訳改定率(2年度平均)
賃金引上げ分+1.70%
物価対応分+0.76%
食費・光熱費対応分+0.09%
経営環境悪化への緊急対応分+0.44%
政策的対応分+0.25%
適正化・効率化分▲0.15%
本体合計(2年度平均)+3.09%(薬価▲1.22%は別途)

💡 今改定の2大テーマ:①看護職員・救急救命士・医療技術職等の賃上げ、②マイナ保険証・電子処方箋・電子カルテ情報共有サービスを活用する医療DX推進。この2点が改定全体を貫くテーマです。

注意:施行日は2段階です。薬価改定・検体検査料の一部は令和8年4月1日から、基本診療料・特掲診療料等の大半は令和8年6月1日からの施行です。レセコン設定の切替日を誤らないよう注意してください。

2. 初診料・再診料の変更点

今改定で新設された「物価対応料」(届出不要・全保険医療機関が自動算定)が、初診料・再診料に加えて別途上乗せ算定される形で設定されました。初診料の本体点数は据え置きですが、再診料は1点引き上げられています。

区分改定前(令和8年5月31日まで)改定後(令和8年6月1日〜)増減
初診料291点291点(据え置き)±0点
再診料75点76点+1点
電話等再診料75点76点+1点
外来・在宅物価対応料(新設・別途算定)2点(初診・再診時)新設

📌 物価対応料とは:「外来・在宅物価対応料」は初診・再診時に2点、訪問診療時に3点を基本診療料に上乗せして別途算定します(初診料・再診料本体の点数には含まれません)。届出不要で、全保険医療機関が自動的に算定可能です。令和9年6月以降は2倍(4点・6点)に引き上げられます。

3. 入院基本料の改定

3-1. 急性期病院A・B一般入院料の新設(最重要変更点)

令和8年6月1日から「急性期病院A一般入院料」と「急性期病院B一般入院料」が新設されます。救急搬送・手術の実績に応じて高い点数が評価される新区分です。

注意:急性期一般入院料1〜6は廃止されません。従来の急性期一般入院料1〜6は令和8年度改定でも継続存続し、新たな点数(下表参照)に改定されます。急性期病院A・Bは、既存の急性期一般入院料に「追加」された新区分です。

区分改定後点数(日額)施行日
急性期病院A一般入院料(新設)1,930点令和8年6月1日
急性期病院B一般入院料(新設・基本)1,643点令和8年6月1日
急性期病院B一般入院料(看護・多職種協働加算あり)1,898点令和8年6月1日
急性期一般入院料1(存続・改定後)1,874点令和8年6月1日
急性期一般入院料2(存続・改定後)1,779点令和8年6月1日
急性期一般入院料3(存続・改定後)1,704点令和8年6月1日
急性期一般入院料4(存続・改定後)1,597点令和8年6月1日
急性期一般入院料5(存続・改定後)1,575点令和8年6月1日
急性期一般入院料6(存続・改定後)1,523点令和8年6月1日

急性期病院A・Bの算定要件

急性期病院A・Bの算定には、看護配置基準に加えて実績要件を満たす必要があります。

【急性期病院Aの実績要件】以下の両方を同時に満たすこと(AND条件):
 ・直近1年間の救急搬送件数 2,000件以上
 ・直近1年間の全身麻酔手術実施件数 1,200件以上

【急性期病院Bの実績要件】以下のいずれかを満たすこと(OR条件):
 ・直近1年間の救急搬送件数 1,500件以上
 ・直近1年間の救急搬送件数500件以上 かつ 全身麻酔手術500件以上
 ・人口20万人以下の地域で当該圏域最大の病院 かつ 救急搬送1,000件以上

⚠️ 注意:急性期病院Aの実績要件はAND条件です。救急搬送2,000件以上「かつ」全身麻酔手術1,200件以上の両方を満たす必要があります。どちらか一方では算定できません。実績の確認は早めに行ってください。

📌 実績期間:令和8年6月1日施行分の実績要件の判定対象期間は、令和7年6月1日〜令和8年5月31日の1年間です。今すぐ自院の実績を確認しておきましょう。

3-2. 療養病棟・地域包括ケア病棟・地域包括医療病棟

⚠️ 要確認:療養病棟入院基本料・地域包括ケア病棟入院料・地域包括医療病棟の改定後点数は、本記事執筆時点で告示原文(厚生労働省告示第69号)による最終確認が完了していません。なお、地域包括ケア病棟入院料は令和6年度改定から入院期間(40日以内/41日以降)による点数差異が設けられています。届出・算定前に必ず保医発0305第1号の原文でご確認ください。

4. 各種加算の新設・変更

加算名改定前改定後施行日概要
外来・在宅物価対応料(新設)初診・再診時+2点(別途算定)令和8年6月1日届出不要。全保険医療機関が算定可
電子的診療情報連携体制整備加算(新設)医療DX推進体制整備加算(廃止)初診時最大15点・再診時2点(区分により異なる)令和8年6月1日マイナ保険証利用実績等による3段階の区分
外来・在宅ベースアップ評価料(新規)(Ⅰ)初診時17点・再診時4点等令和8年6月1日令和6年度未算定または新規賃上げの医療機関向け
外来・在宅ベースアップ評価料(継続)(Ⅰ)初診時6点・再診時2点等初診時23点・再診時6点等令和8年6月1日令和6年度から継続算定している医療機関向け
急性期病院A一般入院料(新設)1,930点令和8年6月1日救急2,000件以上かつ全身麻酔1,200件以上の実績を持つ病院
急性期病院B一般入院料(新設)1,643点〜1,898点令和8年6月1日救急1,500件以上等の実績を持つ病院

📌 補足:上記は告示原文で確認が取れた主要項目です。詳細な新設・廃止加算の全リストは保医発0305第1号・第4号を参照してください。

5. ベースアップ評価料の「新規 vs 継続」と算定ポイント

令和6年度改定で新設されたベースアップ評価料は、令和8年度改定で大幅に拡充されます。

判定基準

令和8年3月31日時点でベースアップ評価料の届出を行っていること、または令和6年3月と比較して継続的に賃上げを実施している保険医療機関が「継続」として扱われます。
 ↓ 上記を満たす → 「継続」として届出・算定
 ↓ 満たさない → 「新規」として届出・算定

外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の点数

区分初診時再診時等訪問診療時(同一建物以外)訪問診療時(同一建物内)
新規(令和8年6月〜令和9年5月)17点4点79点19点
継続(令和8年6月〜令和9年5月)23点6点107点26点
新規・継続とも(令和9年6月〜)令和8年度の点数の200%(2倍)に引き上げ

外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)・入院ベースアップ評価料

Ⅱおよび入院ベースアップ評価料は、令和8年度改定で固定点数制(区分別)に整理されています。入院ベースアップ評価料は最大250点(令和9年6月以降は251〜500点が追加)、病棟機能に応じて点数が異なります(例:急性期一般入院料1は58点)。

⚠️ 要確認:外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の各区分の点数、および入院ベースアップ評価料の全区分の点数については、保医発0305第1号・第4号の原文で確認してください。

算定収入の使途ルール

  • 算定による収入は、全額を基本給等の引上げ(看護職員・救急救命士・医療技術職等)に充当すること
  • 繰越不可:算定した月内に充当しなければならない(翌月への繰越は不可)
  • 毎年、賃金改善実績報告書の作成・提出が必要

注意:ベースアップ評価料の届出には、賃金改善計画書の作成と地方厚生局への届出が必要です。令和8年6月1日からの算定を希望する場合、5月中に届出を完了させてください。

6. 医療DX:電子的診療情報連携体制整備加算(新設)

令和8年度改定で「医療DX推進体制整備加算」と「医療情報取得加算」は廃止され、新たに「電子的診療情報連携体制整備加算」が設けられました。評価の軸が「体制の整備」から「マイナ保険証の利用実績」へ転換しています。

区分初診料加算再診料加算算定頻度
区分1(利用率最高)15点2点月1回
区分29点2点月1回
区分34点2点月1回

注意:現在「医療DX推進体制整備加算」を届け出ている医療機関は、令和8年6月1日以降「電子的診療情報連携体制整備加算」へ改めて届出が必要です。旧加算の届出はそのまま継続されません。マイナ保険証の利用実績(利用率)によって算定区分が決まります。

7. オンライン診療関連

⚠️ 要確認:オンライン診療料・小児科オンライン診療料・オンライン在宅管理料等の改定後点数は、本記事執筆時点で告示原文による最終確認が完了していません。届出・算定前に必ず保医発0305第4号の原文でご確認ください。

8. ⚠️ 未確定事項まとめ

以下の項目は、本記事執筆時点(2026年4月)で告示原文の確認が取れていない事項です。届出・算定の前に必ず一次情報で確認してください。

項目現時点の情報確認先
療養病棟入院基本料1・2の改定後点数 改定の方向は入院料の再整理。点数は要確認 告示第69号の別表
地域包括ケア病棟入院料1〜4の改定後点数 令和6年度から40日以内/以降の区分あり。令和8年度の点数は要確認 告示第69号の別表
地域包括医療病棟の改定後点数 入院料1・2への細分化、手術・緊急入院の有無による3区分化が予定 保医発0305第1号
オンライン診療関連の改定後点数 オンライン診療の利活用促進方針は継続。点数は要確認 保医発0305第4号
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の各区分点数 固定点数制で区分数が8区分から23区分に拡大 保医発0305第1号・第4号
急性期病院A・Bの重症度・医療・看護必要度の基準値 2区分での要件設定予定。具体的な該当患者割合は要確認 保医発0305第1号の別表

注意:本記事は速報的な情報提供を目的としています。実際の算定・届出にあたっては、必ず告示・通知の原文を確認し、地方厚生局や関係団体の説明会等でも最新情報を収集してください。

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参考文献

  • 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部を改正する件」(令和8年厚生労働省告示第69号、令和8年3月5日)
  • 厚生労働省「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手順の一部改正について」(令和8年保医発0305第1号、令和8年3月5日)
  • 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年保医発0305第4号、令和8年3月5日)
  • 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その1)」(令和8年3月26日事務連絡)
  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html)