2026年度(令和8年度)薬価改定は2026年4月1日に施行されました。薬価全体の改定率は▲1.22%(国費換算▲0.43%)です。一方、処方箋料・調剤基本料など診療報酬本体の改定は2026年6月1日施行と、施行日が二段階に分かれています。本記事では薬価改定の全容と、医療機関・保険薬局が押さえるべき処方・調剤への影響を解説します。

1. 薬価改定の仕組みと今回の改定率

薬価改定の仕組み

薬価調査(前年9月時点の取引実勢価格調査)の結果をもとに、薬価基準(公定価格)を市場実勢価格に近づける形で引き下げます。2021年度より毎年改定(中間年改定)が導入されており、2026年度は通常の本改定にあたります。

令和8年度の薬価改定率

区分 改定率
実勢価格乖離解消分 ▲0.97%
長期収載品等の特例引き下げ分 ▲0.25%
薬価全体 ▲1.22%
国費換算 ▲0.43%

診療報酬本体の改定率は+3.09%(令和8年度・令和9年度の2年度平均。令和8年度+2.41%・令和9年度+3.77%)で、本体が3%台となるのは異例の高さです。この+3.09%は主に賃上げ分+1.70%・物価対応分+0.76%・食費光熱水費分+0.09%・緊急対応分+0.44%で構成されます(看護職員等のベースアップ対応が柱)。これとは別建ての各科改定率は医科+0.28%・歯科+0.31%・調剤+0.08%です。本体+3.09%に薬価等(▲0.87%)を合わせた全体ネット改定率は+2.22%となります。

薬価の「2つの改定率」に注意:本記事の▲1.22%は薬価そのものの引下げ率(薬価ベース。実勢価格乖離解消分▲0.97%+長期収載品等特例引き下げ分▲0.25%)です。一方、上記の全体ネット改定率の計算に用いる▲0.87%は医療費(国費)ベースに換算した値で、基準が異なります(さらに国費換算では▲0.43%)。同じ「薬価改定率」でも、どの基準の数値かで大きさが変わる点にご注意ください。

施行日の二段階構造(重要)

区分 施行日 主な内容
薬価改定 2026年4月1日 医薬品の薬価(公定価格)の改定。4月1日以降の調剤・投薬に新薬価が適用される
診療報酬本体の改定 2026年6月1日 処方箋料・調剤基本料・各種加算点数の改定。6月1日以降の算定から新点数が適用される

注意:4〜5月の診療分については、薬価は新薬価・診療報酬点数は旧点数でのレセプト請求となります。電子カルテ・調剤システムのマスタ更新のタイミングをベンダーに必ず確認してください。

2. 2026年に「値下げ」になる薬・「値上げ」になる薬(主要薬剤の薬価変更)

2026年(令和8年)4月の薬価改定では、薬価全体で▲1.22%(薬価ベース)の引き下げが行われ、大多数の医薬品は薬価が据え置き〜引き下げとなりました。一方で、医薬品の安定供給やイノベーション推進の観点から、例外的に薬価が引き上げ(=値上げ)または維持される品目もあります。ここでは「値下げになる薬」「値上げ・維持される薬」「患者負担への影響」を整理します。

値下げになる薬(原則)— 実勢価格への引き下げ(▲0.97%)

薬価調査で市場実勢価格との乖離が大きかった品目を中心に引き下げが行われました。後発品を含む多数の品目が対象で、薬価改定では大半の薬がこの「値下げ」に該当します。品目別の新薬価(2026年4月1日適用)は厚生労働省「薬価基準収載品目リスト」(令和8年4月1日適用版)をご確認ください。

値上げ・維持される薬(例外)

次のような品目は、令和8年度薬価制度改革により薬価が引き上げ、または特許期間中の薬価が維持されます。原材料費の高騰や後発品の供給不安で採算割れした医薬品を、安定供給の観点から下支えする措置です。

区分 内容(2026年度改革での扱い)
不採算品再算定 採算が取れない品目の薬価を引き上げる仕組み。令和8年度改革で「すべての類似薬が不採算でなくても、不採算の類似薬の合計シェアが5割以上であれば適用」と対象を拡大。
最低薬価の引き上げ・下支え 最低薬価について物価動向を踏まえた引き上げ対応を実施。外用塗布剤には新たに最低薬価を設定。
革新的新薬薬価維持制度
(旧・新薬創出加算)
「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」を「革新的新薬薬価維持制度」に改称。特許期間中の革新的新薬は薬価が基本的に維持される。
各種補正加算 有用性加算・市場性加算(Ⅰ)と小児加算の併加算を可能に。国内診療ガイドラインで標準的治療法と評価された場合の改定時加算を新設。

補足:「薬価改定=すべての薬が安くなる」と思われがちですが、後発品の供給不安や原材料費高騰で採算割れした医薬品は、不採算品再算定や最低薬価の引き上げによって薬価が上がる(=値上げ)ことがあります。安定供給を確保するための措置です。

新薬の薬価算定

新規収載品については類似薬効比較方式・原価計算方式に基づき個別に算定されます。有用性加算(I〜IV)、先駆的医薬品加算、小児適応加算等が適用された品目については上乗せが行われています。

また、市場拡大再算定(実際の売上高が予測を著しく上回った品目に対する薬価引き下げ)については、令和8年度改革で類似品への波及(いわゆる「共連れ」)を廃止し、自品の販売額に基づく対象とするよう見直されました。特例の名称は「持続可能性特例価格調整」に変更されています。

患者負担(窓口の支払い)への影響

薬価そのものは原則引き下げのため、同じ薬を使い続ける患者の薬剤一部負担は下がる方向です。ただし、次の点に注意が必要です。

  • 長期収載品を希望する場合は負担増:後発品があるのに先発品(長期収載品)を希望すると、差額の1/4を患者が自己負担する「選定療養」が継続・拡大されています(詳細は§3)。
  • 値上げになった薬を使う場合:不採算品再算定や最低薬価引き上げで薬価が上がった品目では、その薬を使う患者の一部負担はわずかに増えます。
  • (参考)入院時の食費・光熱水費の引き上げ:薬価とは別に、診療報酬本体側(2026年6月施行)で入院時の食費基準額が+40円/食、光熱水費基準額が+60円/日引き上げられ、入院患者の負担が増えます(低所得者・指定難病患者等は軽減・据え置き)。

3. 長期収載品と後発品誘導強化

長期収載品の段階的引き下げ継続

後発品が市場に出て一定期間が経過した長期収載品(先発品)については、後発品薬価の75%水準を目指した段階的引き下げが継続されています。

選定療養制度(2024年10月導入)の継続・拡大

後発品があるにもかかわらず患者の希望で長期収載品を選ぶ場合、差額の1/4を患者が自己負担する「選定療養」制度が継続されます。

令和8年度改定では、保医発0305第11号(令和8年3月5日)により対象品目リストが更新(拡大)されました。

ポイント:選定療養費の計算方法(後発品最高価格との差額の1/4を患者負担)は変更ありません。ただし対象品目が拡大されているため、窓口での患者説明フローを再確認してください。

後発品使用体制加算(診療報酬側の対応)

病院・診療所での後発品使用促進を評価する「後発品使用体制加算」については、2026年6月1日施行の診療報酬改定で要件・点数の見直しが行われています。

⚠️ [未確定]:後発品使用体制加算の新点数・新しい数量シェア要件については、告示・通知の正式発出後に確認が必要です。現行の要件(加算1〜3の区分など)からの変更内容を必ず一次情報でご確認ください。

4. 処方箋料・調剤報酬との連動変更(2026年6月1日施行)

処方箋料や調剤基本料などの改定は薬価改定と施行日が異なり、2026年6月1日から新点数が適用されます。

処方箋料

一般名処方加算(一般名での処方を行った場合の加算)は引き続き算定できます。2024年度改定で整備された一般名処方の促進策が継続されています。

特定疾患処方管理加算は、令和6年度(2024年度)改定で以下のとおり見直されており、令和8年度時点の現行制度は下表のとおりです。

区分 令和6年度改定前 現行(令和6年度改定後・令和8年度も継続)
特定疾患処方管理加算1(28日未満) 18点 廃止済み(令和6年度改定で廃止)
特定疾患処方管理加算2(28日以上) 66点 56点(令和6年度改定で▲10点。令和8年度での変更なし)

補足:特定疾患処方管理加算1の廃止・加算2の減点は令和6年度(2024年)改定で実施済みです。令和8年度改定での変更はありません。特定疾患療養管理料については、令和8年度改定でも対象疾患の適正化が引き続き進められています。

注意:向精神薬等の多剤処方に対する減算規定は継続されます。

調剤基本料

調剤基本料は保険薬局の規模・処方箋集中度に応じて複数の区分(調剤基本料1・2・3、特別調剤基本料)が設定されています。2026年度改定でも基本的な区分構造は継続されつつ、要件・点数の見直しが行われています。

⚠️ [未確定]:調剤基本料の具体的な新点数については、告示・通知の正式発出後に確認が必要です。自局の区分に変更がないかも含めて確認してください。

後発品調剤体制加算(廃止)→ 地域支援・医薬品供給対応体制加算(新設)

従来の「後発品調剤体制加算」「後発医薬品調剤体制加算」は2026年度改定で廃止されます。

代わりに、「地域支援・医薬品供給対応体制加算」が新設されました。後発品の調剤割合だけでなく、医薬品の安定供給対応や地域支援機能を含む幅広い要件を評価する加算へと再編されています。

注意:「後発品調剤体制加算」を現在算定している薬局は、新加算「地域支援・医薬品供給対応体制加算」の算定要件を確認のうえ、2026年6月1日施行に向けて届出手続きを行ってください。旧加算の届出はそのまま継続されません。

5. バイオシミラー推進に関する変更点

バイオシミラー(バイオ後続品)の使用推進については保医発0305第12号(令和8年3月5日)に規定されています。

バイオ後続品調剤体制加算(新設)

保険薬局においてバイオシミラーの適切な使用推進に取り組む体制を評価する「バイオ後続品調剤体制加算」が新設されました。

  • 点数:処方箋1回につき50点
  • 要件:患者への説明体制・適切な保管体制等の整備
  • 主な対象:インスリン製剤および一部のバイオ医薬品

ポイント:バイオシミラーへの切り替えを積極的に支援している薬局が評価される加算です。算定を検討する場合は、患者説明フロー・保管体制の整備と地方厚生局への届出が必要です。

補足:バイオシミラーを使用する患者には、切り替えにあたって医師からの十分な説明と患者同意が必要です。院内の切り替え手順・同意取得フローを整備しておくことをお勧めします。

6. 医薬品供給不安定問題への対応

後発品を中心とした医薬品の供給不安定問題は2026年時点でも継続しており、保医発0305第13号(令和8年3月5日)で対応の手順が示されています。

供給不安定時の代替品処方・調剤

  • 出荷停止・限定出荷品目の代替薬処方・調剤に係る手続きの明確化
  • 後発品の限定出荷時に先発品や他の後発品で対応する場合の算定ルールを規定
  • 代替品への変更に際して患者・処方医への説明・連絡が必要な場合の対応手順

地域支援・医薬品供給対応体制加算(新設)と安定供給対応

前述のとおり、後発品調剤体制加算の廃止に伴い、保険薬局における医薬品の安定供給対応も含めた「地域支援・医薬品供給対応体制加算」が新設されました。後発品の調剤率だけでなく、供給不安定品目への代替対応能力も評価される仕組みです。

補足:後発品の供給状況は、日本ジェネリック製薬協会・各医薬品卸の情報も定期的に確認することをお勧めします。採用薬委員会での定期見直しに活用してください。

現場対応チェックリスト

医療機関(病院・クリニック)

  • ☐ 電子カルテ・会計システムの薬価マスタを4月1日付で更新済みか確認
  • ☐ 採用薬委員会で後発品への切り替え品目を見直したか
  • ☐ 長期収載品の選定療養対象品目リスト(令和8年4月更新版)を入手・確認したか
  • ☐ 患者への選定療養の説明フローが継続運用されているか
  • ☐ 6月1日施行の処方箋料改定に向けた対応(一般名処方・向精神薬等の確認)
  • ☐ バイオシミラーへの切り替え候補品目を確認したか

保険薬局

  • ☐ 調剤システムの薬価マスタを4月1日付で更新済みか確認
  • ☐ 後発品の在庫確保状況と調剤割合を把握しているか
  • ☐ 長期収載品の選定療養対象品目の患者説明フローを継続しているか
  • ☐ 6月1日施行の調剤基本料改定内容を確認したか(後発品調剤体制加算は廃止、「地域支援・医薬品供給対応体制加算」への切り替えに注意)
  • ☐ 各種加算の届出が必要な場合、5月末までに地方厚生局へ届け出たか
  • ☐ バイオシミラーの使用体制・加算算定要件を確認したか

よくある質問(FAQ)

Q. 2026年(令和8年)の薬価改定はいつから施行されましたか?
A. 薬価改定(新薬価の適用)は2026年4月1日から施行されています。なお、処方箋料・調剤基本料などの診療報酬本体の改定は2026年6月1日施行と、施行日が二段階に分かれています。
Q. 2026年薬価改定の改定率は何%ですか?
A. 薬価全体の改定率は▲1.22%(実勢価格乖離解消分▲0.97%+長期収載品等特例引き下げ分▲0.25%)です。国費換算では▲0.43%となっています。
Q. 新薬価(2026年4月適用)はどこで確認できますか?
A. 厚生労働省が公表する「薬価基準収載品目リスト(令和8年4月1日適用版)」で品目別の新薬価を確認できます。また、電子カルテ・調剤システムのベンダーが提供する薬価マスタ更新でも自動反映されます。
Q. 一般名処方マスタは2026年4月に廃止になりましたか?
A. 一般名処方マスタ自体は廃止されていませんが、2026年度改定では一般名処方促進策の見直しが行われています。一般名処方加算は引き続き算定可能ですが、要件の詳細は保医発通知をご確認ください。
Q. 「後発品調剤体制加算」は2026年6月以降も算定できますか?
A. 廃止されます。2026年6月1日施行の改定により、後発品調剤体制加算は廃止され、代わりに「地域支援・医薬品供給対応体制加算」が新設されました。現在算定している薬局は、新加算の要件確認と届出手続き(5月末までに地方厚生局へ)が必要です。
Q. 2026年の薬価改定で「値上げ」になる薬はありますか?
A. あります。薬価改定は原則として引き下げ(薬価全体▲1.22%)ですが、不採算品再算定(採算割れ品目の薬価引き上げ。令和8年度改革で対象を拡大)、最低薬価の引き上げ、特許期間中の革新的新薬を維持する革新的新薬薬価維持制度(旧・新薬創出加算)などにより、一部の医薬品は薬価が引き上げ・維持されます。後発品の供給不安や原材料費高騰で採算割れした品目を安定供給の観点から下支えするための措置です。
Q. 薬価改定で患者の窓口負担は増えますか?
A. 薬価そのものは原則引き下げのため、同じ薬を使い続ける患者の薬剤一部負担は下がる方向です。ただし、後発品があるのに先発品(長期収載品)を希望する場合は差額の1/4を自己負担する「選定療養」が継続・拡大されており負担増となります。また、薬価とは別に診療報酬本体側(2026年6月施行)で入院時の食費(+40円/食)・光熱水費(+60円/日)の基準額が引き上げられ、入院患者の負担が増えます(低所得者・指定難病患者等は軽減・据え置き)。

参考文献

  • 厚生労働省告示第72号「使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部を改正する件」(令和8年3月5日)
  • 保医発0305第10号「使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等に伴う留意事項について」(令和8年3月5日)
  • 保医発0305第11号「長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養について」(令和8年3月5日)
  • 保医発0305第12号「バイオ後続品(バイオシミラー)の使用推進に係る留意事項について」(令和8年3月5日)
  • 保医発0305第13号「医薬品の安定供給問題に伴う対応について」(令和8年3月5日)
  • 厚生労働省「令和8年度薬価基準改定について」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html