患者・利用者が病院と介護施設を行き来する際、情報の引き継ぎを担うのが「入退院サマリー」です。このサマリーを活用した連携に対して、医療保険・介護保険それぞれに複数の加算が設定されています。本記事では、令和6年度改定(2024年度)に対応した各加算の概要・算定要件・点数・単位数を整理して解説します。

入退院サマリーとは

入退院サマリー(退院時要約・入院時情報提供書)とは、病院から介護施設へ、あるいは介護施設から病院へと患者・利用者が移行する際に、医療・介護の担当者間で情報を引き継ぐための文書です。診断名・治療経過・服薬情報・ADL(日常生活動作)・栄養状態・今後の支援方針などが記載され、スムーズな情報連携によって途切れのないケアの提供を目的としています。

診療報酬・介護報酬の算定要件において、サマリーの提供や共有が明示的に求められる場面が多くあります。各加算の要件を正確に把握し、書式の整備・連携フローの構築を行うことが算定の前提となります。

ポイント:入退院サマリーは診療録の一部として位置づけられています。記載内容の精度と保存管理が算定要件上も重要です。

医療保険:入退院支援加算(A246)

入退院支援加算は、退院困難な患者に対して病棟看護師・社会福祉士(MSW)・退院支援部門が連携して退院支援を行った場合に、病院が算定できる加算です。令和6年度改定でも基本的な体制要件・算定要件は維持されています。

区分 点数 主な対象 要件概要
入退院支援加算1(一般病棟) 700点 一般病棟入院基本料等を算定する病棟 退院支援部門の設置、専従の看護師または社会福祉士の配置。入院後3日以内に退院困難患者を抽出、7日以内に患者・家族と面談
入退院支援加算1(療養病棟) 1,300点 療養病棟入院基本料等を算定する病棟 同上(療養病棟向け)
入退院支援加算2(一般病棟) 190点 加算1の届出なし病棟 専任の看護師または社会福祉士を配置。入院後7日以内に退院困難患者を抽出し、患者・家族と面談
入退院支援加算2(療養病棟) 635点 療養病棟入院基本料等を算定する病棟 同上(療養病棟向け)
入退院支援加算3 1,200点 認知症・BPSD等を有する患者(R6新設) 専従の認知症ケア専門家(看護師・社会福祉士等)の配置。対象患者に退院支援計画を作成し連携機関と調整

補足:入退院支援加算は退院時に1回算定します。加算1には地域連携診療計画加算(300点)を別途算定できます。また、75歳以上の患者等に対する総合機能評価を行った場合は総合機能評価加算(50点)も加算できます。

医療保険:入院時支援加算(A246-2)

入院時支援加算は、予定入院前に外来で患者の情報収集・説明・支援計画を作成した場合に算定できる加算です。入院当日ではなく、入院前の外来段階での介入を評価します。

区分 点数 要件概要
入院時支援加算1 240点 ①〜⑧の支援をすべて実施(褥瘡リスク・栄養・服薬・退院困難要因等のスクリーニング、療養計画の説明、入院生活の案内等)
入院時支援加算2 200点 ①〜⑧のうち一部を実施

ポイント:入院時支援加算は「入院初日」に算定します。入退院支援加算と同一患者に対して両方算定することが可能です。入院前から退院を見据えた支援をスタートさせることで、在院日数の短縮や退院調整のスムーズ化が期待できます。

医療保険:退院時共同指導料

退院時共同指導料は、入院中の患者が退院後に在宅医療・介護サービスを利用するにあたり、入院医療機関と在宅側の医師・看護師・ケアマネジャー等が共同して指導を行った場合に算定します。「入院医療機関側」と「在宅側」のそれぞれに算定区分があります。

区分 点数 算定側 要件概要
退院時共同指導料1 1,500点
(特別管理加算患者は2,000点)
在宅側(在宅療養担当医・訪問看護ステーション等) 入院医療機関の多職種と共同で退院後の療養指導を実施。患者または家族等に対し文書で指導内容を提供
退院時共同指導料2 400点
(多機関共同指導加算+2,000点)
入院医療機関側 在宅側の医師・看護師・ケアマネジャー等と共同で指導を実施。入院中1回(特定患者は2回)算定可能

ポイント:退院時共同指導料2の「多機関共同指導加算(+2,000点)」は、退院後の在宅療養に関わる機関が3者以上参加した場合に算定できます。ケアマネジャー・訪問看護・薬剤師等が参加する退院前カンファレンスの開催が算定の鍵になります。令和6年度改定では、ICTを活用した遠隔共同指導の要件も明確化されました。

介護保険:入院時情報連携加算(居宅介護支援)

入院時情報連携加算は、利用者が医療機関に入院した際に、担当ケアマネジャーが入院先に対して利用者の生活環境・サービス利用状況等の情報を提供した場合に算定できます。

区分 単位数 要件
入院時情報連携加算Ⅰ 200単位/月 入院後3日以内に情報提供
入院時情報連携加算Ⅱ 100単位/月 入院後4〜7日以内に情報提供

介護保険:退院・退所加算(居宅介護支援)

退院・退所加算は、入院・入所中の要介護者が退院・退所して居宅に戻る際に、担当ケアマネジャーが病院・施設スタッフと連携して情報収集・居宅サービス計画の作成等を行った場合に算定できます。

区分 単位数 算定条件
退院・退所加算Ⅰイ 450単位 病院・施設スタッフと1回面談(カンファレンスなし)
退院・退所加算Ⅰロ 600単位 1回面談 かつ カンファレンス実施
退院・退所加算Ⅱイ 600単位 2回以上面談(カンファレンスなし)
退院・退所加算Ⅱロ 750単位 2回以上面談 かつ カンファレンス実施
退院・退所加算Ⅲ 900単位 3回以上面談 かつ カンファレンス実施

補足:退院・退所加算は退院・退所後最初に居宅サービス計画を作成した月に算定します。1入院・入所につき最大3回まで算定可能です。病院からの文書(入退院サマリー等)による情報提供を受けた場合も、面談要件を満たすケースがあります。

介護保険:入退院支援加算(老健・介護医療院)

介護老人保健施設(老健)および介護医療院では、入所中の利用者が病院へ入院し再び戻ってくる際の情報連携・支援体制に対して「入退院支援加算」が設定されています。

区分 単位数 要件概要
入退院支援加算Ⅰ 600単位(※要確認) 施設に入退院支援担当者を配置し、入院前から退院後までの一貫した支援を実施。病院との情報共有(サマリー提供含む)を行う
入退院支援加算Ⅱ 250単位(※要確認) 入退院支援担当者の配置等の要件を一部満たす場合の算定区分

注意:老健・介護医療院の入退院支援加算の単位数(Ⅰ:600単位、Ⅱ:250単位)は、告示原文による確認が完了していません。算定前に必ず最新の厚生労働省告示・通知を確認してください。

介護保険:入所前後訪問指導加算(老健)

介護老人保健施設では、入所前または退所後に施設スタッフが居宅を訪問し、生活環境の把握・指導・連絡調整を行った場合に算定できます。退院・退所後の居宅環境調整において、サマリー情報との組み合わせた支援が重要です。

区分 単位数 要件
入所前後訪問指導加算Ⅰ 450単位 入所前または退所後に居宅訪問を1回実施
入所前後訪問指導加算Ⅱ 480単位 入所前または退所後に居宅訪問を2回以上実施(2回目以降は退所後)

各加算の連携フローと役割分担

入退院サマリーを活用した連携では、複数の職種・機関が関わります。退院時を例に、加算の関係性と担当の目安を示します。

フェーズ 主な担当 関連する加算
入院前(予定入院) 病棟看護師・MSW(病院) 入院時支援加算(医療保険)
入院中(退院支援開始) 病棟看護師・MSW(病院) 入退院支援加算(医療保険)
入院時の情報提供 ケアマネジャー(居宅介護支援) 入院時情報連携加算(介護保険)
退院前カンファレンス 病院多職種・ケアマネジャー・訪問看護等 退院時共同指導料(医療保険)、退院・退所加算(介護保険)
退院時のサマリー送付 病院担当者(看護師・MSW等) 各加算の情報提供要件を満たす書類として機能
退院後の居宅サービス計画作成 ケアマネジャー(居宅介護支援) 退院・退所加算(介護保険)
老健・介護医療院への再入所支援 施設入退院支援担当者 入退院支援加算(介護保険・老健等)

ポイント:退院前カンファレンスの開催記録、サマリーの送付記録(日付・送付先・方法)、担当者会議の参加記録などは、いずれかの加算の算定根拠となります。記録の整備を施設・事業所全体で統一しておくと、算定漏れの防止と監査対応の両方に役立ちます。

関連する書式・テンプレート

MediFormでは、入退院サマリー関連の記録に活用できる以下の書式を無料で提供しています。

補足:施設ごとの様式やフローに合わせたカスタマイズが必要な場合は、有料カスタマイズサービスをご利用ください。入退院サマリーの書式設計・連携フローの構築支援も承っています。

参考文献

  • 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について」(令和6年3月)
  • 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(保医発0305第4号、令和6年3月5日)
  • 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」(令和6年1月)
  • 厚生労働省「指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年厚生省告示第20号、令和6年改正)
  • 厚生労働省「指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年厚生省告示第21号、令和6年改正)(老健・介護医療院の入退院支援加算単位数は要確認)
  • 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」(令和6年3月15日)