経口維持加算は、摂食・嚥下機能に問題のある入所者に対して、医師・歯科医師・管理栄養士・言語聴覚士等が多職種協働で経口維持計画を作成し、継続的な栄養管理を行った場合に算定できる加算です。令和6年度介護報酬改定では算定要件の一部が見直されました。本記事では、改定のポイントと算定要件、計画書作成の注意点を整理します。

経口維持加算とは

経口維持加算は、摂食機能障害や誤嚥が認められる入所者に対し、医師・歯科医師の指示のもとで多職種が連携して経口による食事摂取を維持するための支援を行った場合に算定できる加算です。

食事を口から食べ続けることは、入所者のQOL(生活の質)に直結します。この加算は、嚥下困難による食事形態変更が必要な入所者に対して、専門職が継続的に関与することを評価しています。

加算にはⅠとⅡの2種類があります。加算Ⅱは、言語聴覚士や嚥下訓練を行う歯科衛生士が計画作成に参加した場合に、加算Ⅰへ上乗せして算定できます。

令和6年度改定のポイント

令和6年度介護報酬改定(令和6年4月施行)では、経口維持加算に以下の見直しが行われました。

項目 改定前(令和3年度) 改定後(令和6年度)
経口維持加算Ⅰ 400単位/月 400単位/月(変更なし)
経口維持加算Ⅱ 100単位/月 100単位/月(変更なし)
算定期間 最長6ヶ月(180日)で終了 6ヶ月超でも多職種が継続の必要性を判断した場合は継続算定可と明確化
経口維持計画書の様式 旧様式 様式が見直し(令和6年4月以降は新様式を使用)

ポイント:令和6年度改定では単位数の変更はありませんでした。主な変更は「6ヶ月超の継続算定要件の明確化」と「計画書様式の見直し」です。令和4・5年度と同じ体制で算定している施設は、計画書の様式が新様式に対応しているか確認してください。

算定できるサービス種別

経口維持加算は、以下の入所系サービスで算定できます。通所介護など通所系サービスでは算定できません。

サービス種別 算定可否
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) 算定可
地域密着型介護老人福祉施設 算定可
介護老人保健施設(老健) 算定可
介護医療院 算定可
短期入所生活介護 算定可
短期入所療養介護(老健・介護医療院) 算定可
通所介護・通所リハビリテーション等 算定不可

対象入所者の要件

経口維持加算の対象となるのは、以下の要件をすべて満たす入所者です。

  • 現に経口により食事を摂取している者(経管栄養中の者は対象外)
  • 摂食機能障害を有する者
  • 誤嚥が認められる

誤嚥の確認には、医師または歯科医師による嚥下機能の評価が必要です。歯科医師の指示を受けた歯科衛生士による口腔嚥下機能評価でも対応できます。

注意:「食事に時間がかかる」「むせがある」という観察だけでは算定根拠として不十分です。医師・歯科医師の指示または嚥下評価に基づく客観的な記録を残してください。運営指導では根拠記録の確認が行われます。

算定要件

経口維持加算Ⅰ(400単位/月)

要件 内容
医師・歯科医師の指示 摂食・嚥下機能の評価を含む医師または歯科医師の指示が必要
多職種会議の開催 医師・歯科医師・管理栄養士・看護師等による食事観察および会議を月1回以上開催し、記録を保存
経口維持計画の作成 多職種が共同して入所者ごとに経口維持計画書を作成
計画に基づく支援の実施 作成した計画に基づき継続的な食事摂取の支援を実施
説明・同意 入所者または家族への説明と同意取得(署名等で記録)

経口維持加算Ⅱ(100単位/月 加算Ⅰへの上乗せ)

要件 内容
加算Ⅰの算定 経口維持加算Ⅰの算定が前提(Ⅱのみの単独算定は不可)
ST等の関与 言語聴覚士(ST)または飲食物の摂取を含む嚥下訓練を行う歯科衛生士が経口維持計画の作成等に参加していること

補足:ST(言語聴覚士)は加算Ⅱの算定に必須ではなく、嚥下訓練を行う歯科衛生士が参加する場合も算定できます。ST不在の施設でも、協力歯科医療機関と連携することで加算Ⅱの算定が可能なケースがあります。

経口維持計画書の作成ポイント

経口維持計画書は、多職種会議の結果をふまえて管理栄養士が中心となって作成します。計画書には以下の内容を盛り込んでください。

  • 入所者の摂食・嚥下機能の現状評価(スクリーニング結果など)
  • 食事形態・食事姿勢・食具等の具体的な支援内容
  • とろみの種類・濃度、食事量・食事温度等の提供方法
  • 口腔ケアの方法と頻度
  • 多職種の役割分担(誰が何を行うか)
  • モニタリング方法と頻度
  • 計画の見直し時期

ポイント:計画書は「作って終わり」ではなく、月1回以上の多職種会議でのモニタリングと見直しが必要です。入所者の体重変動・摂食量の変化・誤嚥性肺炎の発症などに応じて計画を更新し、その都度記録に残してください。

注意:計画書は入所者または家族への説明を行い、同意を得たうえで交付します。説明日・同意取得日・交付日を記録し、署名または押印を受けてください。口頭のみの同意は運営指導で指摘対象となります。

算定期間

経口維持加算の算定期間は、原則として計画作成日から起算して180日以内(約6ヶ月)です。

令和6年度改定では、6ヶ月を超えても継続算定が可能な要件が明確化されました。多職種による計画の見直しで、継続的に経口摂取が可能と判断された場合は、引き続き算定できます。その際は、継続の必要性を判断した旨の記録(多職種会議録への明記など)を残してください。

注意:6ヶ月経過後に継続算定する場合、継続の必要性の判断根拠を記録に残していないと、運営指導で返還指導を受ける可能性があります。計画書の見直し記録と多職種会議録は必ず整備してください。

経口移行加算との違い

経口維持加算と混同されやすいのが「経口移行加算」です。両者は対象者と目的が異なります。

比較項目 経口移行加算 経口維持加算
対象者 経管栄養(胃ろう・経鼻等)を実施中で、経口摂取への移行を目指す入所者 経口摂取中で摂食機能障害または誤嚥があり、継続した経口摂取の維持が必要な入所者
目的 経管栄養から経口摂取への「移行」を支援 経口摂取の「維持・継続」を支援
算定単位数 28単位/日 Ⅰ:400単位/月、Ⅱ:+100単位/月
算定期間 計画作成から最長180日 計画作成から最長180日(継続判断で延長可)
算定単位の考え方 日単位 月単位
同時算定 同一入所者への両加算の同時算定は不可

補足:経管栄養から経口摂取に部分的に移行した入所者(経管栄養と経口摂取を併用している状態)は、経口移行加算の対象です。完全に経口摂取に移行した後に摂食嚥下機能の問題が残る場合は、経口維持加算への切替を検討してください。

まとめ

経口維持加算は、摂食・嚥下機能に課題のある入所者の経口摂取を継続的に支援する取り組みを評価する加算です。算定にあたっては以下のポイントを押さえてください。

  • 医師・歯科医師の指示と多職種会議(月1回以上)の開催が必須
  • 対象は「経口摂取中」の入所者(経管栄養中の入所者は経口移行加算の対象)
  • 経口維持計画書は多職種の役割分担・モニタリング方法まで記載する
  • 計画書は入所者・家族への説明・同意取得・署名が必要
  • 6ヶ月を超えて継続する場合は多職種による継続判断の記録を残す
  • 加算Ⅱを算定するにはSTまたは嚥下訓練を行う歯科衛生士の参加が要件
  • 経口移行加算との同時算定は不可

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参考文献

  • 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(令和6年1月)
  • 厚生労働省「指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(令和6年3月15日 老老発0315第1号)
  • 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」(令和6年3月15日)