厚生労働省が長年提供してきた「一般名処方マスタ」は令和7年4月1日にすでに廃止されました。代わりに「医薬品コード対応表」への一本化が義務付けられています。令和8年度診療報酬改定(令和8年4月1日施行)では一般名処方加算の点数も改定されました。本記事では、一般名処方マスタ廃止の背景・スケジュール・一般名処方加算への影響を整理し、医療機関・薬局それぞれの実務対応ポイントを解説します。

ポイント:3行で分かる変更点

✓ 令和7年4月1日:一般名処方マスタが廃止。医薬品コード対応表(YJコード等)への一本化が完了

✓ 令和8年4月1日:一般名処方加算の点数が変更(加算1:10点→8点、加算2:8点→6点)。院内掲示に加えウェブサイト掲載も義務化

✓ 令和8年6月1日:バイオ後続品のあるバイオ医薬品が一般名処方加算の算定対象に追加(今後対応が必要)

一般名処方マスタとは|役割と一般名処方加算の仕組み

「一般名処方マスタ」は、厚生労働省が医療機関・電子カルテベンダー向けに提供してきたデータベースです。一般名処方加算の対象となる成分・規格・標準記載名称・コードが規定されており、処方システムの基盤として活用されてきました。

そもそも「一般名処方」とは何かを確認しておきましょう。処方箋の書き方には「銘柄名処方」と「一般名処方」の2種類があります。

区分 銘柄名処方 一般名処方
記載例 アムロジン錠5mg 【般】アムロジピンベシル酸塩錠5mg
後発品への変更 変更不可欄記載なし+患者同意がある場合のみ可 可(薬剤師の裁量で銘柄選択)
加算 なし 一般名処方加算1または2
患者メリット 供給状況に応じた後発品選択肢が増える

一般名処方加算は「処方箋料」の加算です。院外処方に限り算定でき、院内処方・入院患者は算定対象外です。算定するのは処方医(医療機関)であり、調剤薬局が算定するものではありません。

旧マスタの問題点

旧来の一般名処方マスタには運用上の課題が積み重なっていました。

  • 後発医薬品の新規収載のたびに更新が必要で、ベンダー・現場担当者が手作業で取り込む運用だった
  • レセプト用・電子カルテ用・マスタ独自など複数のコード体系が乱立し、システム間連携の障壁になっていた
  • 一般名処方加算の対象外となった成分がマスタから削除された際に「削除=入力不可」と誤認されるエラーが多発していた

一般名処方マスタ廃止の背景・スケジュール

一般名処方マスタ廃止の直接的な背景は「医療DX」の推進です。医療DX推進本部が「全国医療情報プラットフォーム」の構築を進める中で、医療情報の標準化が求められました。また規制改革推進会議が複数マスタの維持管理コストを問題視し、「One Source of Truth(唯一の参照源)」の確立を要求しました。

電子処方箋管理サービスでのデータ一貫性を確保するために、全医薬品を共通コードで管理する仕組みに移行することが決定され、一般名処方マスタの廃止につながりました。

廃止に至るまでのスケジュールは以下の通りです。

時期 内容 状況
令和6年度以前 旧来の一般名処方マスタの新規収載・更新が原則停止 完了
令和7年3月31日 旧来の一般名処方マスタ使用が認められる最終期限(経過措置終了) 完了
令和7年4月1日 一般名処方マスタ完全廃止。医薬品コード対応表への一本化が義務付け 完了
令和7年8月 電子処方箋管理サービスにおけるダミーコード排除等の改修完了 完了
令和8年4月1日 令和8年度診療報酬改定施行(一般名処方加算の点数・要件変更) 施行済み
令和8年6月1日 バイオ後続品のあるバイオ医薬品が一般名処方加算の算定対象に追加 今後対応
令和10年度当初を目途 GS1コードとYJコードの完全紐付けデータベース公開・トレーサビリティ実現 予定

一般名処方マスタ廃止後の処方ルール|処方箋の書き方の変更点

医薬品コード対応表への一本化

一般名処方マスタ廃止後の処方基盤は「医薬品コード対応表」に完全移行しました。主なコードは以下の3種類です。

  • YJコード(個別医薬品コード):医薬品を銘柄ごとに識別する12桁のコード
  • レセプト電算処理システム用コード:診療報酬請求に用いられる9桁のコード
  • 一般名コード:従来の体系を引き継ぎつつ標準化された12桁のコード

医師が電子カルテで「一般名」を選択すると、システム内部で医薬品コード対応表を参照し、該当成分の全YJコード・レセプトコードが参照される仕組みに移行しています。

ポイント:「処方できなくなる薬がある」は誤解です

一般名処方マスタ廃止は、情報の参照先が変わることを意味します。処方できなくなる医薬品が生じるわけではありません。令和8年度薬価改定で一般名処方加算の対象外となった品目についても、引き続き電子処方箋システムにて一般名処方できる運用となっています。一般名コードは厚生労働省ホームページおよび電子処方箋情報管理サービスで情報提供されています。

電子処方箋における記載ルール

処方箋への記載形式は変わりません。「【般】+一般的名称+剤形+含量」の書き方を引き続き使用します。システム内部では「成分名」「剤形」「含量」が構造化データとして送信される仕組みになっています。

一般名処方加算 2026への影響|点数・要件の変更

区分 令和6年度(改定前) 令和8年度(改定後・4月1日施行)
加算1 点数 10点 8点(※)
加算2 点数 8点 6点(※)
加算1 算定要件 後発品のある全医薬品(2品目以上)をすべて一般名処方 同左(変更なし)
加算2 算定要件 後発品のある先発医薬品を1品目以上一般名処方 同左(バイオ後続品を令和8年6月1日から追加)
バイオ後続品 対象外 令和8年6月1日から対象(加算2に追加)
院内掲示 必要 必要(+ウェブサイト掲載も義務化)
注意:加算点数について

(※)加算1:8点、加算2:6点は「診療報酬の算定方法の一部を改正する件」(令和8年厚生労働省告示第69号)に基づきます。NotebookLMの原文ソースには具体的数値の明記がないため、電子カルテシステムの加算判定設定および最新の告示・通知で必ず最終確認をしてください。

院内掲示要件(新規追加)

令和8年度改定から「原則としてウェブサイトへの掲載」が義務化されました。掲示内容は以下のとおりです。

  • 一般名処方の趣旨を患者に十分説明することを、医療機関の見やすい場所に掲示
  • 医薬品の供給状況や長期収載品の選定療養を踏まえて処方を行うことを説明
  • 上記に加え、原則としてウェブサイトへの掲載(令和8年度改定より追加)

バイオ後続品(バイオシミラー)への対応

令和8年6月1日から、バイオ後続品のあるバイオ医薬品について一般名処方を行った場合に加算の対象となります。薬局側には保険医療養担当規則により患者への説明義務が課され、バイオ後続品の調剤に努める義務も生じます。糖尿病科・腎臓内科など生物学的製剤を多用する診療科での準備が必要です。

算定対象外となるケース

以下の場合は一般名処方加算を算定できません。担当職員への周知が必要です。

  • 後発医薬品が存在しない漢方薬や後発医薬品のみ存在する薬剤を一般名処方した場合
  • 院内処方患者・入院患者への処方
補足:疑義解釈による明確化事項

銘柄名の備考欄併記:医療安全の観点から、一般的名称に先発品または後発品の銘柄名を備考欄等に併記する場合でも、加算の算定は可能です。

加算1の適用範囲:先発医薬品のない後発医薬品であっても、加算1の算定にあたっては一般的名称で記載する必要があります。

医療機関側の対応【実務】|電子カルテ・院内採用薬リスト見直し

令和7年4月の一般名処方マスタ廃止と令和8年4月の診療報酬改定の2段階変更への対応が必要です。電子カルテベンダーへの確認を早期に行い、以下の項目を順次確認・対応してください。

電子カルテ・処方オーダリングシステムの確認

  • マスタ参照先が医薬品コード対応表(YJコード等)に変更されているか確認
  • 処方箋印字フォーマットが「【般】+一般的名称+剤形+含量」になっているか確認
  • 加算判定エンジンの点数設定(加算1:8点、加算2:6点)が更新されているか確認
  • 令和8年6月1日以降のバイオ後続品の自動判定機能がベンダーで実装予定かを確認

院内採用薬リストの見直し

  • 採用薬マスタと医薬品コード対応表の整合性を薬剤部で確認
  • 医師の処方入力画面に最新の一般名が正しく表示されているか確認
  • 生物学的製剤を採用している診療科でバイオシミラーへの切り替えに関するコンセンサス形成

医療機関の対応チェックリスト

  • ☐ 電子カルテベンダーに医薬品コード対応表への移行が完了しているか確認した
  • ☐ 処方オーダリングの一般名処方表示・動作を確認した
  • ☐ 加算1・加算2の点数設定が令和8年度改定値(8点・6点)になっているか確認した
  • ☐ 院内採用薬リストを最新の医薬品コード対応表で見直した
  • ☐ 医師・薬剤師・医事課への院内通知を実施した
  • ☐ 薬剤師による処方監査ルールを更新した
  • ☐ ウェブサイトへの院内掲示情報を掲載した(令和8年度改定の新要件)
  • ☐ 連携薬局へ変更事項を事前周知した
  • ☐ バイオ後続品対応の院内体制整備(令和8年6月1日までに対応)
  • ☐ 患者向け説明資料を準備した
補足:書式ダウンロード

「一般名処方マスタ廃止 対応チェックリスト(医療機関版・薬局版の2シート構成)」(Excel・Word形式)は近日公開予定です。公開後は本ページからダウンロードできます。

薬局側の対応【実務】|レセコン・バイオ後続品対応

薬局ではレセコンの対応確認とバイオ後続品への新たな対応準備が中心となります。

レセコン・処方箋受付フローの確認

医薬品コード対応表への標準化により、従来マスタ不整合によるコードエラーが起きていた場合は疑義照会が減少する見込みです。一方、処方箋受付フローで一般名コード対応の確認が必要です。レセコンベンダーに令和8年度改定への対応スケジュールを確認してください。

バイオ後続品対応

令和8年6月1日以降、バイオ後続品のあるバイオ医薬品を一般名処方した処方箋を受け付けた場合、保険薬剤師には以下の義務が生じます。

  • 患者に対してバイオ後続品に関する説明を適切に行うこと
  • バイオ後続品を調剤するよう努めること

バイオ医薬品(インスリン製剤・抗体医薬品等)を取り扱う薬局では、スタッフへの事前教育と患者向け説明資料の整備を進めてください。

在庫管理への影響

標準コードベースで「同一成分・同一剤形」として一元管理できるようになります。後発品の品目見直しや在庫整理の機会として活用できます。

薬局の対応チェックリスト

  • ☐ レセコンベンダーに医薬品コード対応表への移行が完了しているか確認した
  • ☐ 処方箋受付フローの変更点(一般名コード対応)を整理した
  • ☐ 加算点数設定の更新(加算1:8点、加算2:6点)をレセコンで確認した
  • ☐ 在庫管理(後発品の品目見直し)を実施した
  • ☐ バイオ後続品に関するスタッフ教育・研修を実施した(令和8年6月1日までに対応)
  • ☐ バイオ後続品の患者説明マニュアルを整備した
  • ☐ 連携医療機関と認識合わせをした
  • ☐ 患者向け説明資料を準備した

患者説明の例|処方箋の書き方変更をどう伝えるか

補足:患者説明の例文

「令和7年4月から処方せんの書き方(システム上の管理方法)が変わりましたが、お飲みいただくお薬の中身は変わりません。ジェネリック医薬品(後発品)への変更もこれまで通り可能です。バイオ医薬品(注射薬など)については令和8年6月から後発品(バイオ後続品)への変更についてご説明する機会が増えます。分からないことがあれば、薬局でいつでもお尋ねください。」

関連通知・参照先

電子カルテ・レセコンの設定確認の際は、以下の公式情報を必ずご参照ください。

  • 厚生労働省ホームページ「一般名処方加算対象外となった品目の一般名処方について」(令和8年4月8日 事務連絡)
  • 電子処方箋情報管理サービス(社会保険診療報酬支払基金)における一般名コードの公開情報
補足:関連記事

電子処方箋・医療DX関連の加算については、関連記事もあわせてご参照ください。
電子的調剤情報連携体制整備加算(記事02)
電子的診療情報連携体制整備加算(記事03)
令和8年度診療報酬改定 薬価改定のポイント

まとめ|一般名処方マスタ廃止後に必要な対応

一般名処方マスタの廃止は令和7年4月1日にすでに完了しています。処方できなくなる薬があるわけではなく、情報の参照先が医薬品コード対応表に一本化されたことが本質的な変更点です。

医療機関・薬局それぞれが今後対応すべき主なポイントは以下の2点です。

  • 電子カルテ・レセコンの加算点数設定が令和8年度改定値に更新されているかの最終確認
  • 令和8年6月1日から始まるバイオ後続品への一般名処方加算対象追加への準備

特にバイオ後続品については、薬局側に患者説明義務と調剤努力義務が生じます。関連診療科および薬局スタッフへの周知を今のうちに進めておくことをお勧めします。

院内マニュアル整備・対応チェックリストのご相談

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参考文献

  • 「診療報酬の算定方法の一部を改正する件」(令和8年厚生労働省告示第69号)
  • 「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日 保医発0305第6号)
  • 「一般名処方加算対象外となった品目の一般名処方について」(令和8年4月8日 事務連絡)