「一般名処方マスタが廃止された」という情報が一部にありますが、これは誤りです。一般名処方マスタは厚生労働省が薬価改定ごとに更新・公開しており、令和8年4月1日適用版・令和8年6月12日適用版が公開されています。令和8年度改定で起きた実際の変更は、一部の品目が一般名処方加算の対象外となり、マスタの該当品目が削除リストとして示されたことです(対象外でも一般名処方自体は可能)。本記事では、令和8年度の実際の変更点・一般名処方加算の改定・バイオ後続品(令和8年6月1日)対応を、医療機関・薬局向けに整理します。

重要:一般名処方マスタは「廃止」されていません

厚生労働省は薬価改定ごとに一般名処方マスタを更新・公開しています(令和8年4月1日適用版・6月12日適用版)。「廃止」とされた情報は、一部品目が一般名処方加算の対象外となりマスタから削除されたことを、マスタ全体の廃止と取り違えたものです。

ポイント:3行で分かる令和8年度の変更点

✓ 一般名処方マスタは廃止されていない。厚労省が薬価改定ごとに更新・公開(令和8年4月1日適用版・6月12日適用版)

✓ 令和8年度改定で一部品目が一般名処方加算の対象外となり、マスタの該当品目が削除リストで示された(対象外でも一般名処方は可能)

✓ 令和8年6月1日:バイオ後続品のあるバイオ医薬品が一般名処方加算の対象に追加(今後対応が必要)

一般名処方マスタとは|役割と一般名処方加算の仕組み

「一般名処方マスタ」は、厚生労働省が公開している「処方箋に記載する一般名処方の標準的な記載」です。一般名処方加算の対象となる成分・規格・標準記載名称・一般名コードが規定されており、電子カルテや処方オーダリングシステムの基盤として活用されています。薬価改定の都度、厚生労働省のホームページで更新版が公開されます。

そもそも「一般名処方」とは何かを確認しておきましょう。処方箋の書き方には「銘柄名処方」と「一般名処方」の2種類があります。

区分 銘柄名処方 一般名処方
記載例 アムロジン錠5mg 【般】アムロジピンベシル酸塩錠5mg
後発品への変更 変更不可欄記載なし+患者同意がある場合のみ可 可(薬剤師の裁量で銘柄選択)
加算 なし 一般名処方加算1または2
患者メリット — 供給状況に応じた後発品選択肢が増える

一般名処方加算は「処方箋料」の加算です。院外処方に限り算定でき、院内処方・入院患者は算定対象外です。算定するのは処方医(医療機関)であり、調剤薬局が算定するものではありません。

「一般名処方マスタは廃止された」は誤り|令和8年度の実際の変更

令和8年度改定の前後で、「一般名処方マスタが廃止された」という情報が一部に流れました。しかし、これは正確ではありません。実際に起きたことを整理します。

① 一般名処方マスタは継続して公開・更新されている

厚生労働省は、一般名処方マスタを薬価改定ごとに更新し、ホームページで公開し続けています。令和8年度についても令和8年4月1日適用版、さらにバイオ医薬品分を含む令和8年6月12日適用版が公開されています。マスタそのものが廃止された事実はありません。

② 令和8年度改定で「一部品目が一般名処方加算の対象外」になった

令和8年度薬価改定では、先発品と後発品の価格差が小さくなった品目などで、一般名処方加算の対象外となる品目が生じました。これらの品目は一般名処方マスタ上で見直され(削除リストとして提示)、加算の対象から外れています。これが「削除」「廃止」と表現が混同された原因とみられます。

③ 加算対象外でも「一般名処方」自体は引き続き可能

一般名処方加算の対象外となった品目であっても、一般名処方を行うこと自体は引き続き可能です。この点は令和8年4月8日の事務連絡「一般名処方加算対象外となった品目の一般名処方について」でも示されています。処方できなくなる医薬品が生じるわけではありません。

ポイント:「処方できなくなる薬がある」は誤解です

令和8年度の変更は「加算の対象品目の見直し」であって、「処方できなくなる医薬品が生じる」ものではありません。一般名処方マスタは引き続き厚生労働省ホームページで公開されており、加算対象外品目も一般名処方が可能です。

処方箋の記載ルールは変わらない

処方箋への記載形式は従来どおりです。「【般】+一般的名称+剤形+含量」の書き方を引き続き使用します。システム内部でも「成分名」「剤形」「含量」が構造化データとして扱われる仕組みに変更はありません。

「取れない薬(対象外品目)」の探し方|一般名処方加算が算定できない品目の調べ方

「この薬は一般名処方加算が取れないのでは?」「処方箋に【般】マークが付かない」——令和8年度改定で加算対象外の品目が増えたため、こうした確認が必要な場面が増えました。対象外品目(加算が算定できない品目)は、次の公式資料で確認します。

確認する資料内容入手先
一般名処方マスタ(本体) 加算対象成分・規格・標準記載名称・一般名コード 厚生労働省ホームページ(薬価改定ごとに更新)
削除リスト(加算対象外品目) 令和8年度改定で加算対象から外れた品目の一覧 同上(マスタと併せて公表)
医薬品コード対応表 対象外品目を含む一般名コードの対応表 電子処方箋情報管理サービス・厚生労働省ホームページ

【重要】マスタだけ更新すると一般名処方エラーが出ます:一般名処方マスタのみを参照・更新し、医薬品コード対応表を読み込んでいないと、加算対象外品目のコードが未反映となり、システム上で一般名処方エラーが発生する事例が報告されています。一般名処方マスタと医薬品コード対応表はセットで参照・更新してください。

【般】マークが付かない=加算対象外品目の目安:処方箋に「【般】」が付かない品目は、一般名処方加算の対象外です。ただし加算対象外でも一般名処方そのものは引き続き可能です(令和8年4月8日 事務連絡「一般名処方加算対象外となった品目の一般名処方について」)。加算が算定できないだけで、処方できなくなる医薬品が生じるわけではありません。

一般名処方加算 2026への影響|点数・要件の変更

区分 令和6年度(改定前) 令和8年度(改定後・4月1日施行)
加算1 点数 10点 見直し(※最新の告示で確認)
加算2 点数 8点 見直し(※最新の告示で確認)
加算1 算定要件 後発品のある全医薬品(2品目以上)をすべて一般名処方 同左(変更なし)
加算2 算定要件 後発品のある先発医薬品を1品目以上一般名処方 同左(バイオ後続品を令和8年6月1日から追加)
バイオ後続品 対象外 令和8年6月1日から対象(加算2に追加)
院内掲示 必要 必要(+原則ウェブサイト掲載も)
注意:加算点数は最新の告示で確認してください

一般名処方加算の点数・算定要件は「診療報酬の算定方法の一部を改正する件」(令和8年厚生労働省告示第69号)および関連通知で定められます。電子カルテ・レセコンの加算判定設定は、必ず最新の告示・通知に基づいて確認してください。

院内掲示・ウェブサイト掲載

令和8年度改定では、従来の院内掲示に加え「原則としてウェブサイトへの掲載」が求められています。掲示・掲載の趣旨は以下のとおりです。

  • 一般名処方の趣旨を患者に十分説明することを、医療機関の見やすい場所に掲示
  • 医薬品の供給状況や長期収載品の選定療養を踏まえて処方を行うことを説明
  • 上記に加え、原則としてウェブサイトへの掲載

バイオ後続品(バイオシミラー)への対応

令和8年6月1日から、バイオ後続品のあるバイオ医薬品について一般名処方を行った場合に加算の対象となります。薬局側には保険医療養担当規則によりバイオ後続品に関する患者説明義務と、調剤に努める義務が生じます。糖尿病科・腎臓内科など生物学的製剤を多用する診療科・薬局での準備が必要です。

算定対象外となるケース

以下の場合は一般名処方加算を算定できません。担当職員への周知が必要です。

  • 後発医薬品が存在しない薬剤(漢方薬等)や、後発医薬品のみ存在する薬剤を一般名処方した場合
  • 院内処方患者・入院患者への処方
  • 令和8年度改定で一般名処方加算の対象外となった品目(※一般名処方自体は可能)
補足:疑義解釈等による明確化事項

・銘柄名の備考欄併記:医療安全の観点から、一般的名称に先発品または後発品の銘柄名を備考欄等に併記する場合でも、加算の算定は可能です。

・加算1の適用範囲:先発医薬品のない後発医薬品であっても、加算1の算定にあたっては一般的名称で記載する必要があります。

医療機関側の対応【実務】|マスタ更新・点数設定・掲示

令和8年度改定にあたり、電子カルテベンダーへの確認を早期に行い、以下の項目を順次確認・対応してください。

電子カルテ・処方オーダリングシステムの確認

  • 最新の一般名処方マスタ(令和8年4月1日適用)にシステムが更新されているか確認
  • 一般名処方加算の対象外となった品目(削除リスト)が反映され、かつ「処方不可」と誤判定しない設定になっているか確認
  • 処方箋印字フォーマットが「【般】+一般的名称+剤形+含量」になっているか確認
  • 加算判定エンジンの点数・要件設定が令和8年度改定(告示第69号)に更新されているか確認
  • 令和8年6月1日以降のバイオ後続品の自動判定機能がベンダーで実装予定かを確認

院内採用薬リストの見直し

  • 採用薬マスタと最新の一般名処方マスタの整合性を薬剤部で確認
  • 医師の処方入力画面に最新の一般名が正しく表示されているか確認
  • 生物学的製剤を採用している診療科でバイオシミラーへの切り替えに関するコンセンサス形成

医療機関の対応チェックリスト

  • ☐ 電子カルテが最新の一般名処方マスタ(令和8年4月1日適用)に更新されているか確認した
  • ☐ 一般名処方加算の対象外品目(削除リスト)が反映され、処方不可と誤判定しないことを確認した
  • ☐ 加算1・加算2の点数・要件設定が令和8年度改定(告示第69号)に更新されているか確認した
  • ☐ 処方オーダリングの一般名処方表示・動作を確認した
  • ☐ 医師・薬剤師・医事課への院内通知を実施した
  • ☐ 院内掲示およびウェブサイトへの掲載を行った
  • ☐ 連携薬局へ変更事項を事前周知した
  • ☐ バイオ後続品対応の院内体制整備(令和8年6月1日までに対応)
  • ☐ 患者向け説明資料を準備した
補足:書式ダウンロード

「一般名処方加算 令和8年度対応チェックリスト(医療機関版・薬局版の2シート構成)」(Excel・Word形式)は近日公開予定です。公開後は本ページからダウンロードできます。

薬局側の対応【実務】|レセコン・バイオ後続品対応

薬局ではレセコンの対応確認とバイオ後続品への新たな対応準備が中心となります。

レセコン・処方箋受付フローの確認

レセコンが最新の一般名処方マスタ・薬価に更新されているかをベンダーに確認してください。一般名処方加算の対象外となった品目についても、一般名処方の処方箋を受け付けた場合の調剤・請求の取り扱いを整理しておきます。

バイオ後続品対応

令和8年6月1日以降、バイオ後続品のあるバイオ医薬品を一般名処方した処方箋を受け付けた場合、保険薬剤師には以下の対応が求められます。

  • 患者に対してバイオ後続品に関する説明を適切に行うこと
  • バイオ後続品を調剤するよう努めること

バイオ医薬品(インスリン製剤・抗体医薬品等)を取り扱う薬局では、スタッフへの事前教育と患者向け説明資料の整備を進めてください。

薬局の対応チェックリスト

  • ☐ レセコンが最新の一般名処方マスタ・薬価に更新されているか確認した
  • ☐ 一般名処方加算の対象外品目の取り扱い(調剤・請求)を整理した
  • ☐ 加算点数・要件設定の更新をレセコンで確認した
  • ☐ 在庫管理(後発品の品目見直し)を実施した
  • ☐ バイオ後続品に関するスタッフ教育・研修を実施した(令和8年6月1日までに対応)
  • ☐ バイオ後続品の患者説明マニュアルを整備した
  • ☐ 連携医療機関と認識合わせをした
  • ☐ 患者向け説明資料を準備した

患者説明の例|変更点をどう伝えるか

補足:患者説明の例文

「お薬の処方の仕組み(一般名での処方)はこれまでと変わりません。お飲みいただくお薬の中身も変わりません。ジェネリック医薬品(後発品)への変更もこれまで通り可能です。バイオ医薬品(注射薬など)については令和8年6月から後発品(バイオ後続品)への変更についてご説明する機会が増えます。分からないことがあれば、いつでもお尋ねください。」

関連通知・参照先

システム設定・運用の確認の際は、以下の公式情報を必ずご参照ください。

  • 厚生労働省「処方箋に記載する一般名処方の標準的な記載(一般名処方マスタ)について」(令和8年4月1日適用・令和8年6月12日適用)
  • 事務連絡「一般名処方加算対象外となった品目の一般名処方について」(令和8年4月8日)
  • 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)および関連通知
補足:関連記事

薬価改定・医療DX関連の記事もあわせてご参照ください。
・令和8年度診療報酬改定 薬価改定のポイント
・電子的調剤情報連携体制整備加算
・薬価改定2026 完全ガイド

まとめ|令和8年度に必要な対応

一般名処方マスタは廃止されていません。厚生労働省が薬価改定ごとに更新・公開しており、令和8年度についても最新版が公開されています。令和8年度改定で起きた実際の変更は「一部品目が一般名処方加算の対象外となり、マスタの該当品目が削除リストで示された」ことであり、対象外でも一般名処方自体は可能です。

医療機関・薬局が対応すべき主なポイントは次のとおりです。

  • 電子カルテ・レセコンが最新の一般名処方マスタ・薬価・加算設定(令和8年度改定)に更新されているかの確認
  • 加算対象外となった品目を「処方不可」と誤判定しないよう設定を確認
  • 院内掲示・ウェブサイト掲載への対応
  • 令和8年6月1日から始まるバイオ後続品の一般名処方加算対象追加への準備
院内マニュアル整備・対応チェックリストのご相談

「医療機関版・薬局版の対応チェックリスト(Excel・Word)」は近日無料公開予定です。施設ごとの院内通知文・患者向け説明資料・院内掲示文/ウェブサイト掲載文のカスタマイズについては、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

参考文献

  • 厚生労働省「処方箋に記載する一般名処方の標準的な記載(一般名処方マスタ)について」(令和8年4月1日適用・令和8年6月12日適用)
  • 事務連絡「一般名処方加算対象外となった品目の一般名処方について」(令和8年4月8日)
  • 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)および関連通知

※ 本記事は令和8年度改定時点の整理です。一般名処方加算の点数・要件、対象品目、バイオ後続品の取り扱いは改定・通知で変動します。算定前に最新の告示・通知・厚生労働省ホームページの一般名処方マスタでご確認ください。