令和8年6月から算定開始となる「電子的診療情報連携体制整備加算」は、旧来の医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算を廃止・統合した新加算です。マイナ保険証利用率30%以上の実績要件が新たに加わり、届出期限は令和8年5月7日です。本記事では算定要件・点数・届出手続き・既存加算との違いを病院・診療所の事務担当者向けに詳しく解説します。
✓ 令和8年6月1日算定開始。旧「医療DX推進体制整備加算」「医療情報取得加算」を廃止し本加算に統合
✓ 電子カルテ情報共有サービス(CLINS)への接続 + マイナ保険証利用率30%以上が必須要件
✓ 届出期限は令和8年5月7日。旧加算からの自動移行はなく、必ず新規届出が必要
1. はじめに|医療DX加算群の中での位置づけ
国は「全国医療情報プラットフォーム」構築を中核に、医療DX推進を段階的に進めています。令和6年度改定でマイナ保険証(オンライン資格確認)の活用体制を評価する医療DX加算が整備されました。令和8年度改定はその次のステップです。電子カルテ情報共有サービス(CLINS)が本格稼働し、「インフラの整備」から「整備したインフラの積極的な利活用」へと評価軸が転換されました。
本記事で解説する電子的診療情報連携体制整備加算は、その転換を象徴する新設加算です。従来バラバラに評価されていた電子カルテ情報共有・診療情報連携に関する体制整備要件を統合・再編し、実績(マイナ保険証利用率)を問う仕組みへ改組されました。
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│ 全国医療情報プラットフォーム │
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│ マイナ保険証 │ │電子カルテ情報 │
│(オンライン │ │共有サービス │
│ 資格確認) │ │(CLINS/FHIR)│
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│ 関連加算群 │
│ - 医療DX推進体制整備加算(廃止 → 統合) │
│ - 医療情報取得加算(廃止 → 統合) │
│ ★ 電子的診療情報連携体制整備加算【本記事】 │
│ - 在宅医療DX情報活用加算(別枠・継続) │
│ - 電子的調剤情報連携体制整備加算(薬局) │
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2. 電子的診療情報連携体制整備加算の概要
正式名称・新設の経緯
正式名称は「電子的診療情報連携体制整備加算」です。令和8年度診療報酬改定で新設され、令和6年度まで存在した「医療DX推進体制整備加算」および「医療情報取得加算」を廃止・統合した加算です。対象は病院および診療所(医科・歯科)です。
算定点数
| 区分 | 点数 | 算定頻度 |
|---|---|---|
| 初診時 加算1 | 15点 | 初診ごと |
| 初診時 加算2 | 9点 | 初診ごと |
| 初診時 加算3 | 4点 | 初診ごと |
| 再診時・外来診療料 | 2点 | 月1回 |
| 入院時(入院初日) 加算1 | 160点 | 入院初日 |
| 入院時(入院初日) 加算2 | 80点 | 入院初日 |
| 歯科 初診時 加算1 | 9点 | 初診ごと |
| 歯科 初診時 加算2 | 4点 | 初診ごと |
| 歯科 再診時 | 2点 | 月1回 |
初診料で当該加算を算定した月と同じ月に、再診料・外来診療料の当該加算は算定できません。逆も同様です(疑義解釈資料その4で明確化)。
算定開始時期
算定開始は令和8年(2026年)6月1日です。5月7日までに地方厚生局へ届出を完了すれば、6月1日から算定可能となります。
旧加算(医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算)からの自動移行はありません。5月7日までに新規届出を行わなければ、6月1日から算定することができません。早急に体制確認・書類準備を進めてください。
3. 電子的診療情報連携体制整備加算の算定要件【最重要】
| 区分 | 要件 |
|---|---|
| 対象施設 | 病院・診療所(医科・歯科)、保険医療機関 |
| 体制要件1 | 電子情報処理組織によるレセプト請求を行っている |
| 体制要件2 | 診療報酬明細書を患者に無料交付している |
| 体制要件3 | オンライン資格確認の導入・運用 |
| 体制要件4 | 医師・歯科医師が診察室等で電子資格確認情報を閲覧・活用できる体制 |
| 体制要件5 | 電子カルテ情報共有サービス(CLINS)への接続インターフェースを有し、取得した診療情報を活用する体制 |
| 体制要件6 | HL7 FHIR形式で3文書6情報を送受信できる体制 |
| 実績要件 | マイナ保険証利用率30%以上(算定対象期間3か月前のレセプトベース) |
| 患者同意 | 情報登録への同意は不要。他院閲覧時は患者同意が必要 |
| 届出様式 | 様式1の6(外来)、様式18の4(入院)/地方厚生(支)局長へ提出 |
3-1. 体制整備要件(6項目すべてを満たすこと)
(1)電子レセプト請求
電子情報処理組織によるレセプト請求を行っていることが前提です。紙レセプトを使用している施設は、まず電子化が必要です。
(2)明細書の無料交付
診療報酬明細書を患者に無料交付している体制が必要です。
(3)オンライン資格確認の導入・運用
健康保険法第3条第13項に規定する電子資格確認を行う体制を有していることが必要です。マイナ保険証リーダーの設置・運用が前提となります。
(4)診察室での情報活用
医師または歯科医師が、オンライン資格確認を通じて取得した診療情報を診察室・手術室・処置室等で閲覧・活用できる体制が必要です。受付だけで完結せず、診察室での活用が求められます。
(5)電子カルテ情報共有サービス(CLINS)への接続
電子カルテ情報共有サービスとの接続インターフェースを有し、取得した診療情報を活用する体制が必要です。「接続インターフェースを有している」とは、厚生労働省Webサイトで対応施設として公表されている状態(運用開始日が登録済みの状態)を指します(疑義解釈資料その4で明確化)。
(6)HL7 FHIR形式での情報連携
3文書6情報(傷病名・感染症・アレルギー・その他アレルギー・検査結果・文書類)をFHIRに基づいた形式に変換し、電子的に送受信できることが必要です。電子カルテシステムのベンダーに対応状況を確認してください。
3-2. 実績要件(マイナ保険証利用率30%以上)
令和8年度改定の最大の新要件です。「体制を整えているだけ」では不十分で、実際にマイナ保険証が利用されている実績が問われます。評価には算定対象期間の3か月前のレセプトベース利用率が用いられます。
マイナ保険証利用率が30%に満たない場合、体制整備要件を満たしていても本加算は算定できません。受付窓口でのマイナ保険証利用促進が急務です。院内掲示・声かけ対応を見直してください。
3-3. 患者要件・同意
患者の情報登録に関する同意の取り扱いは以下のとおりです。
- 医療機関から電子カルテ情報共有サービス(支払基金等)への3文書6情報の登録:患者同意は不要(個人情報保護法の例外として法律上位置づけ)
- 他の医療機関が当該情報を閲覧する際:患者の同意が必要
登録時と閲覧時で同意要否が異なる点に注意が必要です。患者への説明を丁寧に行い、閲覧同意の取得フローを院内で整備してください。
3-4. 入院加算固有の要件(セキュリティ)
入院加算には外来よりも厳格なセキュリティ要件があります。
| 区分 | 入院加算1(160点) | 入院加算2(80点) |
|---|---|---|
| セキュリティ責任者 | 医療情報システム安全管理責任者の配置 | 専任の責任者配置 |
| 研修 | 年1回以上の情報セキュリティ研修(記録必須) | ガイドライン準拠の研修体制 |
| バックアップ | オフラインバックアップを含む複数方式での確保 | — |
| BCP | サイバーインシデント対策BCP策定 + 年1回以上の訓練実施 | — |
これらの要件は、従来「診療録管理体制加算1(140点)」に含まれていたセキュリティ評価を本加算に統合・再編したものです。既に診療録管理体制加算を算定している病院は、対応状況を確認してください。
4. 必要な届出・施設基準
届出様式と提出先
- 外来(初診料・再診料等):様式1の6
- 入院(入院基本料等):様式18の4
- 提出先:保険医療機関の所在地を管轄する地方厚生(支)局長
- 申請方法:「保険医療機関等電子申請・届出等システム」によるオンライン申請も可能
添付書類
- 施設基準に係る届出書添付書類(別添7)
- 電子カルテ情報共有サービスへの接続実績を示す証明(運用開始日登録済み証明等)
- マイナ保険証利用率実績データ
- 入院加算申請の場合:医療情報システム・サービス事業者との契約書等(オフラインバックアップ実施が確認できる箇所)
届出前の最終確認チェックリスト
- オンライン資格確認が稼働中であり、マイナ保険証が受付で使用できる状態にある
- マイナ保険証利用率が直近3か月のレセプトベースで30%以上
- 電子カルテ情報共有サービス(CLINS)への接続が完了し、厚労省Webサイトで公表されている
- HL7 FHIR形式での3文書6情報の送受信テストが完了している
- 医師が診察室でオンライン資格確認情報を閲覧・活用できる体制が整っている
- 他院閲覧時の患者同意取得フローが文書化・周知されている
- 施設内掲示およびウェブサイト掲載(体制整備の旨)が完了している
- (入院加算のみ)医療情報システム安全管理責任者を配置済み
- (入院加算のみ)年1回以上の情報セキュリティ研修の実施記録がある
- (入院加算1のみ)オフラインバックアップを含む複数方式のバックアップ体制が確認できる契約書等がある
- (入院加算1のみ)サイバーインシデント対策BCPを策定し、年1回以上の訓練実施記録がある
- 届出様式(様式1の6・様式18の4)を所轄の地方厚生局サイトから最新版でダウンロード済み
- 届出期限(令和8年5月7日)までに提出できるスケジュールを確認している
5. 既存の医療DX加算との比較・違い
新旧対照表(令和6年度 → 令和8年度)
| 項目 | 令和6年度(旧) | 令和8年度(新) |
|---|---|---|
| 加算の名称 | 医療DX推進体制整備加算 医療情報取得加算 |
電子的診療情報連携体制整備加算(統合) |
| 初診料加算 | 最大12点〜8点(6区分) | 15点 / 9点 / 4点(3区分) |
| 再診料加算 | 医療情報取得加算(3月に1回 1点) | 電子的診療情報連携体制整備加算(月1回 2点) |
| 評価の軸 | 体制の「整備」を評価 | 利用の「実績(マイナ保険証利用率30%以上)」を評価 |
| 電子カルテ情報共有サービス | 努力義務・経過措置あり | 接続が必須要件 |
| サイバーセキュリティ評価 | 診療録管理体制加算の一部として評価 | 入院加算の要件として統合・再編 |
関連加算との重複算定マトリクス
| 加算 | 対象 | 本加算との関係 |
|---|---|---|
| 電子的診療情報連携体制整備加算(本加算) | 病院・診療所(医科・歯科) | — |
| 在宅医療DX情報活用加算 | 訪問診療・訪問看護 | 双方算定可(対象場面が異なる) |
| 電子的調剤情報連携体制整備加算 | 薬局(調剤基本料への加算:8点) | 別体系。医療機関と薬局で各々算定 |
| 明細書発行体制等加算(再診料) | 病院・診療所 | 重複算定不可(告示上明記) |
再診料の「明細書発行体制等加算」は、本加算と同じ月に別に算定することができません。レセプトシステムの設定を確認し、誤算定が生じないよう注意してください。
在宅医療DX情報活用加算の電子カルテ情報共有サービス導入要件に関する経過措置は、令和7年9月末で終了予定でしたが、令和8年5月31日まで延長されています。在宅医療も提供している施設は対応状況を確認してください。
薬局向けの「電子的調剤情報連携体制整備加算」は、本加算と一体で運用するケースが多いため、医療機関側の届出担当者もあわせて把握しておくと連携がスムーズです。詳細は 電子的調剤情報連携体制整備加算の解説記事 をご参照ください。
6. 実務フロー
※マイナカードリーダーで読取 → 保険資格情報を即時確認
※既往歴・処方歴・検査結果・アレルギー情報等を閲覧
※他院の情報を閲覧する場合は患者の同意を確認・記録
※傷病名・処方・検査結果等を自院分として登録
※初診時または再診時(月1回)に算定。初診と再診の同月重複不可
施設基準の届出を行った医療機関は、院内への掲示と公式ウェブサイトへの掲載が義務付けられています。未整備の場合、審査で指摘を受けるリスクがあります。届出と同時に整備を進めてください。
7. よくある算定漏れ・査定パターン
実際の運用で発生しやすい算定漏れ・査定リスクを以下に整理します。
| パターン | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 届出漏れ | 旧加算から自動移行されると思い込み、新規届出を怠る | 5月7日までに様式1の6・様式18の4を新規提出 |
| マイナ利用率未達 | 利用率30%に満たず算定要件を満たせない | 受付での声かけ・ポスター掲示等で利用促進を図る |
| 重複算定(明細書加算) | 再診料で本加算と明細書発行体制等加算を同時算定 | レセプトシステムの設定を確認。双方の算定除外設定を入れる |
| 初診・再診の同月重複 | 初診料で算定した月に再診料でも算定してしまう | レセコン設定で同月二重算定を防止する |
| 掲示・Web未整備 | 施設基準の届出後、院内掲示・Web掲載を忘れる | 届出と同時に掲示文・Web更新を準備しておく |
| 入院加算の研修記録なし | 情報セキュリティ研修を実施したが記録が残っていない | 研修実施後は参加記録・実施日を文書で保管する |
| CLINS接続未確認 | 接続対応を電子カルテベンダーに依頼したが完了していない | 厚労省Webサイトで自院が公表対応施設となっているか確認する |
8. 病院規模別・診療所別の取り組みポイント
| 施設規模 | 主な課題 | 取り組みポイント |
|---|---|---|
| 大病院 (電子カルテ既導入) |
既存電子カルテとFHIR接続の大規模改修。セキュリティ体制の整備(BCP・オフラインバックアップ) | 電子カルテベンダーと早期協議し、接続改修費用を確保する。病院向け補助金(20床以上:FHIR対応改修費用補助)を活用する。医療情報システム安全管理責任者を任命し、BCP訓練の記録を整備する |
| 中小病院 (部分導入) |
限られたリソースでの段階的対応。優先順位の判断 | まずオンライン資格確認とFHIR接続を優先して着手する。国・自治体の補助制度を積極活用する。3文書6情報のうち送受信可能な情報から運用を開始し、段階的に拡充する |
| 診療所 (クラウド型電子カルテ) |
FHIR接続対応のベンダー選定。クラウド型への移行判断 | 使用している電子カルテベンダーのCLINS接続対応状況を確認する。未対応の場合はIT導入補助金を活用してクラウド型電子カルテへの移行を検討する。標準型電子カルテ(導入版:厚労省が2026年度中リリース予定)も選択肢 |
電子カルテ情報共有サービス接続に必要なFHIR対応改修費用は、病院向け補助金(申請期間:令和6年3月〜令和13年9月)の対象となっています。また、診療所向けにはIT導入補助金が活用できる場合があります。各補助金の最新情報は厚生労働省・地方厚生局のウェブサイトでご確認ください。
9. 当サイトの関連書式・チェックリスト
本加算の届出に向けた確認事項を網羅したチェックリスト(Excel・Word形式)を近日公開予定です。公開次第、本記事にダウンロードリンクを追加します。
- 21_電子的診療情報連携_届出チェックリスト.xlsx(近日公開)
- 21_電子的診療情報連携_届出チェックリスト.docx(近日公開)
書式のカスタマイズや届出書類の整備についてご相談がある場合は、お気軽にお問い合わせください。
また、薬局向けの関連加算については以下の記事もご参照ください。
電子的調剤情報連携体制整備加算とは|薬局向け算定要件・届出方法【令和8年度】
薬局における関連加算(調剤基本料への加算:8点)について解説しています。医療機関と薬局が連携して取り組む際にあわせてご参照ください。
10. まとめ|電子的診療情報連携体制整備加算の重要ポイント
電子的診療情報連携体制整備加算は、令和8年6月1日から算定が始まる新加算です。以下の5点が特に重要なポイントです。
- 旧加算は廃止:医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算は廃止。自動移行はなく、必ず新規届出が必要
- 届出期限は5月7日:期限を過ぎると6月1日からの算定ができない
- マイナ保険証利用率30%以上:体制整備だけでなく実績が問われる新要件
- CLINS接続が必須:電子カルテ情報共有サービスへの接続が体制要件として明確化
- 明細書発行体制等加算との重複不可:再診料での同時算定は算定誤りとなる
体制整備には電子カルテベンダーとの調整・補助金申請・院内研修など複数の準備が必要です。早めに担当部門・ベンダーと連携を取り、届出期限までに体制を整えてください。
本加算に関する届出書類の作成支援・院内マニュアルの整備・チェックリストのカスタマイズなど、個別のご相談に対応しています。お気軽にお問い合わせください。
参考文献
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要」(令和8年3月)
- 医科診療報酬点数表(令和8年度改定)第1部初診料注15、第2部再診料注19
- 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月 保医発)
- 疑義解釈資料の送付について(その4)(令和8年 厚生労働省保険局医療課)
- 中医協 総会資料・答申書(令和8年2月)
- 厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス(CLINS)」運用要領
- 社会保険診療報酬支払基金「電子資格確認(オンライン資格確認)」関連資料
