令和8年6月1日から、保険薬局を対象とした「電子的調剤情報連携体制整備加算」(8点・月1回)が施行されます。旧「医療DX推進体制整備加算」を刷新した本加算の算定要件・届出手続き・実務フローを、薬局管理者・薬剤師向けにわかりやすく解説します。

この記事のポイント

  • 令和8年度改定で旧「医療DX推進体制整備加算」(3段階)を廃止・一本化した新加算(8点・月1回)
  • 電子処方箋管理サービスへの接続・マイナ保険証によるオンライン資格確認・電子薬歴の運用が主な体制要件
  • マイナ保険証利用率30%以上(算定月の3か月前実績)の達成が必要な実績要件あり

1. はじめに|この加算は何のためのものか

政府は医療DX推進本部のもと、電子処方箋・マイナ保険証・電子カルテ情報共有サービスの普及を一体的に進めています。薬局には複数の医療機関から交付された処方箋を受け付ける機会が多く、重複投薬や相互作用リスクを早期に把握できる立場にあります。

電子処方箋管理サービス(社会保険診療報酬支払基金が運営)を活用すると、患者が別の薬局や医療機関で受けた直近の処方・調剤情報をリアルタイムで確認できます。これにより重複投薬チェックの精度が上がり、患者安全と業務効率化の両立が図れます。

令和8年度改定では、こうした調剤情報の電子連携体制整備を評価する薬局向け医療DX加算を「電子的調剤情報連携体制整備加算」として再編・一本化しました。患者にとっては服薬情報の一元管理・重複投薬防止というメリットがあり、薬局にとっては体制整備が診療報酬上で評価されるというメリットがあります。

なお、医療機関側にも同様の体制整備を評価する「電子的診療情報連携体制整備加算」が設けられています。詳細は電子的診療情報連携体制整備加算の解説記事をご参照ください。

2. 加算の概要

項目 内容
正式名称 電子的調剤情報連携体制整備加算
旧加算名 医療DX推進体制整備加算(令和7年度まで)
対象施設 保険薬局(特別調剤基本料Bを算定する薬局は除く)
点数 8点(処方箋受付1回につき、月1回限り)
算定開始日 令和8年6月1日
改定の性格 旧加算(3段階評価)の廃止・一本化

補足:旧「医療DX推進体制整備加算」は加算1(10点)・加算2(8点)・加算3(6点)の3段階でしたが、令和8年度改定で体制要件を満たした薬局に対して一律8点へ集約されました。段階評価から「要件を満たすかどうか」の実績重視に転換した点が大きな変更です。

3. 算定要件【最重要】

区分 要件
対象 保険薬局(特別調剤基本料Bを算定する薬局を除く)
点数・算定回数 8点・月1回限り
体制要件1 電子処方箋管理サービスへの接続・調剤結果の速やかな登録
体制要件2 マイナ保険証によるオンライン資格確認の運用
体制要件3 電磁的記録(電子薬歴)による薬剤服用歴等の管理
体制要件4 オンライン資格確認等システムを通じた診療情報・薬剤情報等の活用体制
体制要件5 サイバーセキュリティ対策チェックリストの活用・適切な対応体制
実績要件 算定月の3か月前のマイナ保険証利用率が30%以上
患者要件 患者のマイナ保険証持参の有無にかかわらず算定可
届出 様式87の3の6 地方厚生(支)局長へ届出

3-1. 体制整備要件

電子処方箋管理サービスへの接続については、電子処方箋を受け付けて調剤できる体制を持つことが前提です。さらに、紙の処方箋を受け付けた場合を含め、原則として全ての調剤結果を「速やかに」電子処方箋管理サービスへ登録することが求められます。

疑義解釈(「速やかに」の定義):「やむを得ない事態を除き、調剤済みになった日に登録すること」と明確化されています。翌日以降の登録は原則として認められないため、業務フローへの組み込みが必要です。

調剤に際しては、電子処方箋管理サービスの重複投薬等チェック機能を活用し、患者が服用中の薬剤との有効成分の重複や、薬物療法上の不適切な組み合わせがないかを確認できる体制を整備することも必須です。

オンライン資格確認については、健康保険法第3条第13項に規定する電子資格確認を行う体制の保有が要件です。顔認証付きカードリーダー等のシステムが稼働中であることを確認してください。

電子薬歴の運用については、電磁的記録による薬剤服用歴等の管理体制が必要です。紙媒体で受け付けた処方箋・情報提供文書等を紙のまま保管することは差し支えありませんが、薬歴管理そのものは電磁的記録で行う必要があります。

そのほか、電子カルテ情報共有サービスにより取得される診療情報等を活用する体制については、努力義務・経過措置が設けられています。また、マイナポータルの医療情報に基づき、患者からの健康管理に係る相談(調剤後フォローアップを含む服薬相談)に応じる体制も求められます。

3-2. 実績要件(マイナ保険証利用率)

算定月の3か月前における件数ベースのマイナ保険証利用率が30%以上であることが必要です。利用率は「同月のマイナ保険証利用者数 ÷ 同月の患者数」で計算します。

利用率の実績は社会保険診療報酬支払基金から通知され、翌月1日からの算定に適用されます。利用率要件を満たせなくなった場合、施設基準の辞退届の提出は不要ですが、要件を満たさない月は算定できません。

在宅患者の補正について:令和7年4月までの実績に限り、分母から在宅患者分を除いた補正値の使用が認められました。令和7年5月以降は自動集計に移行しています。

3-3. 患者要件

施設基準を届け出た保険薬局に来局した患者が算定対象となります。患者がマイナ保険証を持参しなくても算定可能です。施設としての体制整備が評価される加算であるため、個々の患者がマイナ保険証を使用したかどうかは問われません。

4. 必要な届出・施設基準

項目 内容
届出様式 様式87の3の6
提出先 保険薬局の所在地を管轄する地方厚生(支)局長
届出期間(紙・窓口) 令和8年5月7日〜6月1日(必着)
電子申請受付開始 令和8年5月25日〜
既存算定薬局の扱い 令和7年5月31日時点で旧「医療DX推進体制整備加算」を算定していた薬局は新たな届出不要

届出様式は各地方厚生局のホームページからダウンロードできます。提出にあたっては、体制要件を満たすことを示す書類(電子処方箋管理サービスへの接続確認書類等)の添付が必要です。電子申請と書面提出の両方が選択可能ですが、電子申請の受付開始は5月25日以降となります。

届出前の最終確認チェックリスト

  • 電子処方箋管理サービスへの接続・稼働が完了している
  • 紙処方箋を含む全調剤結果を当日中に登録する運用が確立している
  • 重複投薬等チェック機能を調剤時に利用できる体制がある
  • マイナ保険証によるオンライン資格確認(顔認証付きカードリーダー等)が稼働中
  • 電子薬歴システムが導入・運用されている
  • 算定月の3か月前のマイナ保険証利用率が30%以上であることを確認した
  • サイバーセキュリティ対策チェックリストの確認・対応を実施済み
  • 様式87の3の6を地方厚生局HPから取得済み
  • 体制要件を証明する書類が揃っている
  • 提出方法(電子申請 or 書面)・提出期限を確認した
  • レセコンの加算マスタが令和8年6月以降の点数(8点)に更新されている
  • 特別調剤基本料Bを算定していないことを確認した

5. 実務フロー(処方箋受付〜会計まで)

① 患者来局
 ↓
② オンライン資格確認(マイナ保険証 or 健康保険証)
 ↓
③ 電子処方箋管理サービスから処方データ・服薬情報を取得
  重複投薬等チェック機能で他院処方との相互作用を確認
 ↓
④ 紙処方箋受付の場合も同サービスへ調剤結果を当日登録する準備
 ↓
⑤ 調剤・服薬指導
  マイナポータル等の情報を活用した服薬相談にも対応
 ↓
⑥ 調剤結果を電子処方箋管理サービスへ登録(原則当日中)
 ↓
⑦ 電子薬歴に記録(調剤内容・重複チェック実施の有無等)
 ↓
⑧ 会計・レセプトに「電子的調剤情報連携体制整備加算 8点」を記載

レセプト記載について:月1回の加算のため、同月に同じ患者で2回目以降の処方箋を受け付けた場合は算定できません。レセコン設定で月1回制限が正しく機能しているか確認してください。

6. よくある算定漏れ・査定パターン

注意:よくある算定誤り・査定パターン

  • 調剤結果の登録遅延 ― 紙処方箋分を翌日以降にまとめて登録していると「速やかな登録」要件を満たせず、算定根拠が失われる可能性があります。当日登録を徹底してください。
  • マイナ保険証利用率の未確認 ― 支払基金からの通知を見落とし、利用率30%を下回った月も算定し続けると返戻・過誤調整の対象になります。毎月の利用率通知を必ず確認してください。
  • 特別調剤基本料Bとの誤算定 ― 特別調剤基本料Bを算定する薬局は本加算の対象外です。算定対象の施設基準を再確認してください。
  • 月1回制限の超過 ― 同一患者に同月2回目以降の処方箋を受け付けた際に誤って加算している場合は返戻の対象となります。レセコンの設定を確認してください。
  • 旧加算との混同 ― 令和8年6月1日以降、旧「医療DX推進体制整備加算」は廃止されています。旧点数(10点・8点・6点)でレセプト請求しないよう注意が必要です。

7. 既存DX加算との比較(重複算定可否)

加算名 対象 点数 主な要件 重複算定
電子的調剤情報連携体制整備加算(令和8年度〜) 薬局 8点・月1回 電子処方箋接続・マイナ保険証利用率30%以上・電子薬歴 —(本加算)
医療DX推進体制整備加算(調剤)(令和7年度まで) 薬局 10点・8点・6点(3段階) 電子処方箋・マイナ保険証・電子薬歴(体制進捗段階評価) 廃止・本加算へ一本化のため重複なし
医療情報取得加算 薬局 オンライン資格確認 令和8年度改定で廃止・統合済み
電子的保健医療情報活用加算 薬局 オンライン資格確認 令和4年度改定で廃止済み
調剤情報連携加算(調剤後フォローアップに関連) 薬局 別途確認 医療機関への服薬情報提供 重複算定不可とする直接規定なし(算定内容・患者が異なる場合は可否を個別確認)

補足:調剤情報連携加算(調剤後フォローアップの一部)との重複算定については、明示的な禁止規定がない一方、算定内容の性格が重なるケースがあります。算定の際は通知・疑義解釈の最新情報を確認し、不明な場合は地方厚生局に事前確認することをお勧めします。

8. よくある質問(FAQ)

Q1. 電子的調剤情報連携体制整備加算の算定要件は?

主な要件は以下の3つです。①電子処方箋管理サービスへの接続と全調剤結果の当日登録、②マイナ保険証によるオンライン資格確認の運用、③電磁的記録(電子薬歴)による薬剤服用歴の管理。加えて、算定月の3か月前のマイナ保険証利用率が30%以上であることが実績要件として求められます。

Q2. 旧「医療DX推進体制整備加算」との違いは?

旧加算は加算1(10点)・加算2(8点)・加算3(6点)の3段階評価でしたが、令和8年度改定で一律8点(月1回)に一本化されました。段階評価が廃止され、要件を満たすかどうかの実績重視へ転換しています。

Q3. 届出様式は?提出先はどこ?

届出様式は様式87の3の6です。保険薬局の所在地を管轄する地方厚生(支)局長へ届出します。届出期間は令和8年5月7日〜6月1日(電子申請は5月25日〜)です。なお、令和7年5月31日時点で旧「医療DX推進体制整備加算」を算定していた薬局は新たな届出は不要です。

Q4. マイナ保険証を持参しない患者でも算定できますか?

はい、算定可能です。本加算は施設としての体制整備を評価する加算であるため、個々の患者がマイナ保険証を使用したかどうかは問われません。施設基準を届け出た薬局に来局した患者であれば、月1回算定できます。

Q5. マイナ保険証利用率が30%を下回った場合はどうなりますか?

要件を満たさない月は算定できません。利用率は社会保険診療報酬支払基金から毎月通知され、翌月1日からの算定に適用されます。施設基準の辞退届の提出は不要ですが、利用率を毎月確認し、30%未満の月はレセコン設定で算定を停止する運用が必要です。

Q6. 紙の処方箋でも調剤結果の登録は必要ですか?

はい、必要です。紙処方箋を受け付けた場合も、原則として調剤済みになった日に電子処方箋管理サービスへ調剤結果を登録する必要があります。翌日以降の登録は「速やかな登録」要件を満たさないと判断される可能性があります。

9. 当サイトの関連書式・チェックリスト

届出手続きや院内体制整備に役立つ書式を以下に掲載しています。

書式名 用途 ダウンロード
診療報酬改定届出書 施設基準の届出書類整理に活用 Excel
多職種連携記録書 服薬情報共有・カンファレンス記録 Excel
電子的調剤情報連携_届出チェックリスト 届出前の最終確認チェック表 現在作成中(準備でき次第公開予定)

施設基準の届出書類整備や、院内の運用ルール・マニュアル作成についてご相談がある場合は、お気軽にお問い合わせください。施設の状況に合わせたカスタマイズ対応も承っています。

10. まとめ

電子的調剤情報連携体制整備加算(8点・月1回)は、令和8年6月1日に施行される新加算です。旧「医療DX推進体制整備加算」の3段階評価を廃止・一本化した加算で、電子処方箋管理サービスへの接続・マイナ保険証によるオンライン資格確認・電子薬歴の運用という3つの体制整備と、マイナ保険証利用率30%以上という実績要件を満たすことが必要です。

旧加算を算定済みの薬局(令和7年5月31日時点)は新たな届出が不要です。未算定の薬局は令和8年5月7日から6月1日の届出期間(電子申請は5月25日〜)に、様式87の3の6を地方厚生(支)局へ提出してください。

算定開始後は、調剤結果の当日登録・マイナ保険証利用率の毎月確認・月1回制限の管理の3点を特に意識した運用体制を整えることが重要です。

医療機関側の体制整備加算については、電子的診療情報連携体制整備加算の解説記事も合わせてご参照ください。

参考文献

  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定に伴う調剤報酬点数表」告示(令和8年3月)
  • 中医協 総会答申書(令和8年2月)
  • 厚生労働省 保険局医療課「令和8年度診療報酬改定関係 疑義解釈資料の送付について」(関連通知)
  • 厚生労働省 医療DX推進本部「医療DXの推進に関する工程表」
  • 社会保険診療報酬支払基金「電子処方箋管理サービス」関連資料
  • 各地方厚生(支)局「施設基準に係る届出様式」(様式87の3の6)